「声優は声で演技をする俳優!」後編

Vol.11
株式会社フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
映像業界40年 おやじプロデューサーのひとり言
関田 有應

こんにちは。
フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー
シニアプロデューサー 関田有應(せきたゆうおう)です。

前編では、声優を目指す皆様に向けてのキャリアプランとアニメ業界における声優の現実のお話をさせて頂きました。
後編は、これからの声優業界、声優の皆さんが活躍できるステージなど、元アニメプロデューサーからのお話をさせて頂きたく思います。

新シリーズアニメ番組の立ち上げは企画から始まります。
作品のテーマ・方向性、対象視聴者層などを考えアニメ作品の骨格をつくり上げていきます。
原作が漫画・ゲーム・トイ(おもちゃ)・書籍(ラノベ・小説など)・完全オリジナルと多種多様です。

文芸ディレクター(シリーズ構成と呼ばれる事が多い)は、原作の意図を汲んで、シリーズ構成を行い脚本家(ライター)にシナリオ執筆を発注します。
この時点ではまだ文章だけの絵のない世界です。

続いて脚本(文字)を進めながら視覚化(絵)にする作業を行います。
マンガやゲーム原作の場合は、視覚的な要素がすでにありますので、それを原作としてアニメ化する事から始めます。

脚本に描かれている文章から、キャラクター設定をキャラクターデザイナーが絵として描き起こします。
物語の舞台となる世界の街並みや、建物を設定美術担当が絵として描き起こします。
ロボットなどの場合は、メカニック専門のデザイナーが絵として描き起こします。

脚本の決定稿、各種設定資料が揃った時点で、初めて絵コンテ(アニメの設計図)を監督・演出が描き始めます。
大体このあたりから、登場するキャラクターの人物像が見えてきますので、キャラクターに声を当てる声優を選ぶ段階に入っていきます。
制作会社により作業工程の進め方に違いがありますので一般的な進め方だと思って下さい。

脚本と絵を描く作業を進めながら、キャラクターのイメージに合う声優を決めるために、 音響制作会社に連絡をし、オーディションに参加する声優の選出をお願いします。 音響制作会社は、声優・俳優事務所に連絡を入れ、事務所所属でオーディション参加声優を募ってもらいます。
多い時は1キャラクターに数十名の声優がオーディションを受けます。 指定されたセリフが吹き込まれたテープを聞き、テープオーディションを行います。 通常のボイスサンプルだけの場合もあります。 続いて、テープオーディションで選ばれた声優を、アフレコスタジオに呼び、実際にキャラクターに声を当ててもらうオーディションを行います。

進め方としては、最初に主役の声優を決めて、役の特徴、声質などを考え、ヒロインや脇役のキャラクターの声優を決めていきます。

高い演技力をお持ちでキャリアのある声優が、オーディションで必ず受かる訳ではありません。
それは、声のバランスを考えてキャスティングを行うからです。
求めるキャラクターのイメージに合わない声の方は、オーディションでは受かりません。
しかし、それは今回のキャラクターイメージに合わなかっただけで、オーディションを受けた声優の皆さんのスキルが低いからではありません。

「声優は声で演技をする俳優!」

声優の世界は、相当厳しい競争社会です。

理由は、「アニメ作品の数より声優の人数の方が圧倒的に多い!」からです。

前編でもお話いたしましたが、事務所に所属しても「就職」ではなく「事務所所属」という事だけですので、お給料が支払われる訳ではありません。 事務所に所属していても、声優はフリーランス・個人事業主です。 仕事が無ければ収入はありません。

事務所に所属し、マネージャーとコミュニケーションを取り、日々の鍛錬を怠らず、自分を磨き続けていれば、オーディションのチャンスは巡ってきます。

しかし、声優としてレギュラーの役を取るのは並大抵ではありません。

「声優は声で演技をする俳優!」

キャラクターに声で命を吹き込む仕事です。
しかし、その道は険しい。
どんなにチャンスがあっても、声優としてメジャーデビュー出来る保証はありません。
どんなに努力しても報われない!

演技が上手くても、オーディションにも呼んでもらえない、
作品に恵まれない声優の方々もたくさんいらっしゃいます。
しかし、それを承知で、多く声優の方々が挑み続けています。

これから声優を目指されている方々へ、元アニメプロデューサーの私のアドバイスとして。

「ただ声優だけを目指すのではなく!表現者としての自身の可能性をありとあらゆる表現技法を学び、己を磨く!」

皆さんは、ダイヤモンドの原石です。
まだ荒々しく、輝きたくても磨かれていません。
少しでも輝きたい!という強力な一筋の光を放っていれば、
「この原石を磨けばもっと輝くのではないか!」と思う人たちに必ず届きます。
内側(自分自身)から輝く!
外側(監督やスタッフ)から磨かれて輝きを増す!
人は一人では成長しません。
多くの人たちの力を借りて学びながら成長していきます。

「マルチな表現者として、一番の得意分野が声での芝居・演技する事!」

それを目指してほしく思います。

声優も多彩な才能・マルチなタレント性を求められています。

2.5次元ミュージカル、歌手デビュー、テレビタレント、役者として、エンターテインメント業界でステージを大きく広げ、自分の持つ豊かな才能を、声以外でも表現出来るようになれば、声優としての活躍出来るチャンスが必ず巡ってくると信じて磨き続けて下さい。

クリエイターとして歩み始めたアシスタントプロデューサー君。
これが声優の世界です。
アニメ以外にもYouTube、バーチャルアイドル、ネットラジオと声優の仕事のフィールドは広がっています。
視野を広げて声優を目指している俳優が活躍出来るステージを広げて下さい。
志を高く持ち、自分の選んだ道を迷うことなく真っ直ぐに進んで下さい。
そして素敵なプロデューサーになって下さい。
「がんぱれ」
先輩シニアプロデューサーとして心より願う事です。

□ おやじ一押し!

アニメの制作工程を知る。
アニメ作品は多くの工程、違う役割をもつスタッフで作り上げられています。
アフレコ収録も作品制作の一工程です。
アニメ制作の全体を知る事で、声優の仕事とは何か。
違う景色が見えて来ます。

 

『使える小ワザ』

昭和、平成のアニメ作品を見て下さい。
デジタル技術が進んでいないフィルム撮影というアナログでの制作現場は、音声収録も修正作業も膨大な時間が掛かっていました。
アニメの礎(いしづえ)を作り上げた先人たちの「熱い」思いを汲み、今に生かす!

これです!

ここまで読んで頂き有難うございました。
それではまた次回。

 

*株式会社フェローズは日本動画協会の会員です。

プロフィール
株式会社フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
関田 有應
(せきた ゆうおう)大学を卒業後、テレビ局直系制作会社に入社。 企画、番組制作、イベント映像、PV、VP制作を行い、その後CM制作を中心に実写業界でのキャリアを積み、大手出版社グループでデジタルコンテンツ系の映像・音楽制作。 子供向けアニメ作品を中心とした、テレビシリーズ・OVA・劇場版・音楽制作・マーチャンダイジングと、キャラクタービジネスの世界で製作プロデューサーを行う。代表作は、平成の名物キャラと言われる主人公がハムスターのアニメ作品 株式会社フェローズにて アニメセクションの立ち上げを行い、現在はマーケティングセクションにて全国の映像系学校でのセミナー講師やキャリアアドバイザーを行っている。 息子も大手広告代理店直系の制作プロダククションのAP「親子鷹」である。※無類の音楽好きで、40年ぶりに大学時代のバンドを復活。活動中。

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