映像2019.11.27

「僕たちはどうやらコトバで出来ている」

第51話
とりとめないわ
Akira Kadota
門田 陽

もう暮れですか。今年は5月に元号が変わってお正月が二度あった感じがするので特に一年が短かったです。「令和」にもずいぶん慣れてきました。

この原稿を書いている時点というかアップされた時点でもまだ流行語大賞は決まっていませんが慣れたということはもう流行ではないのでおそらく大賞は「ワンチーム」あたりでしょう。「令和」の場合、表彰式の絵が浮かばないですもんね。あの令和おじさんは絵になりにくい。それに比べると「ワンチーム」の場合は代表選手たちが登場して盛り上がる様が容易に想像できます。そういえば今年の前半あたりはやたらと何にでも「平成最後の」という形容詞を付けていましたっけ。4月29日のテレビ番組でアナウンサーが「今日は平成最後の昭和天皇の誕生日ですね」と言うコメントにはさすがに閉口しましたがそれもスル―されるくらいあの頃は平成最後な毎日でした。

そんな令和初の師走を前に家の近所の平成通り(※写真)を今年の5月から11月までで個人的に気になったコトバを思い出しながら散歩しました。歩いては立ち止まりメモを見たり取ったりしながら約2時間で汗びっしょり。僕は企画やコピーに煮詰まったときや何か考え事をするときは歩くことが多いです。ブツブツ言いながら歩いていると、ときどきパッと閃く場合があるのです。ま、ほとんど妄想です。周囲の人から見れば多少気味悪い(いやかなり気持ち悪いかな)でしょうが人とすれ違うときはなるべく意識して声を出さないようにしています。僕の好きな落語家のひとり三遊亭白鳥師匠も落語の練習をよく歩きながらやっていると公言されていますが、運動も兼ねて一石二鳥ですのでこの方法はわりとオススメです。そうやって思い出したコトバがベスト10というわけではないけれど、たまたま10個。

①「常識的なやり方では常識的な結果しか出せない。」
これは今年の4月に亡くなられたマラソンの小出義雄監督を追悼した番組の中で、監督のムチャな練習を周囲が注意したときに答えたコトバ。今の時代だと何やかんや言われそうですが、僕は好きです。小出監督には他にも「牛乳を飲む人より牛乳を配る人のほうがよっぽど丈夫だ。」という名言(?)もあります。

②「へりくつも理屈の親戚。」
GWに相棒の再放送を見ていたときに右京さん(水谷豊)が言った台詞。これ自体がなかなかのへりくつで面白いです。

③「町田のいいところは、飲み屋がいっぱいあるところ。町田のダメなところは、飲み屋がいっぱいあるところ。」
これもテレビですね。6月24日、日テレの「月曜から夜ふかし」で町田の酔っ払いが言ったコトバです。酔っ払いとのび太はときどきほんとのことを言います。

④「一番困るのは親切で道を知らない人。」
これは6月27日、深川江戸資料館で講談師の神田愛山先生が「汐留のしじみ売り」に入る前の枕で語ったコトバです。そうなんですよね、悪気はないけどダメな人って手に負えません。

⑤「かつて経験したことのない暑さ。」
今年はこの「かつて経験したことのない」気象によって「命を守る行動を」取らなければいけないことが何度もありました。

⑥「バカボンのパパは若いのだ。」
そんなかつて経験したことのない暑い8月のある日、何十年ぶりかに水風呂に入りながら「41才の春だから~♪」と元祖天才バカボンの唄を口ずさんだときにふと、「オレはもうバカボンのパパより15歳も上だ!」と気付いて愕然としてすぐにノートに書いたコトバです。

⑦「しこうさく子」
そんなかつて経験したことのない暑い日に特に意味なく思い付いたペンネーム。そのときは傑作と感じたのですが、今思い返すと暑さで完全にやられています。

⑧「風鈴は外国人には騒音でしかない。」
これは確かこの夏、NHKの「チコちゃんに叱られる!」で言われたコトバだと思います。 僕の義理の弟はスイス人なのですが彼と一緒に温泉に入ったときに「こんな熱いお湯に浸かる意味がわからない」と言われたことを思い出しました。世界は広いな大きいなです。

⑨「現役にして伝説。」
この秋はラグビーの秋でした。僕も含めいわゆる「にわかファン」がジャパンの面々に酔いしれました。そして強い対戦国には必ず「現役にして伝説」と言われる選手がいました。いずれも名前はもう忘れましたが、にわかなのでお許しを。ただこの「現役にして伝説」というのは僕の職業のコピーライターには珍しくありません。師匠の仲畑(貴志)さんをはじめ70オーバーの強者達が健在です。50、60喜んでどころか当たり前。40代はまだ若者。20代で大活躍してスパッと辞めて医者を目指すコピーライターなんて聞いたことありません。

⑩「科学には犠牲がつきものだ。」
11月9日、のほほんとテレビでドラえもんを見ていたときにのび太が言ったコトバ。のび太と酔っ払いはときどきほんとのことを言います。

さて、これ以上思い出すと頭がパンパンになるので10個で打ち止め。この一年も色んなコトバに出会ったり作ったりしました。改めて人間って、コトバで出来ていると思います。ところで、来年2020年は昭和だと95年という話はまたの機会に。

プロフィール
とりとめないわ
門田 陽
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。 TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP