Twitter

番長プロデューサーの世直しコラムVol.39
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木光
Twitter(ツイッター)というSNSが話題になっている。 書店に行くと「Twitter革命」、「Twitterマーケティング」、「Twitterの衝撃」、「Twitter140文字が世界を変える」といった題名の本がずらりとならんでいる。 Mixiやアメブロ、フェイスブック、セカンドライフ等々、ネットを使ったコミュニケーションツールはいろいろあるけれど、Twitterは、なんでこんなに話題になっているのか? 撮影スタジオでCM撮影のライティングの待ち時間に、演出家がパソコンを開いて、文字が羅列されたページをじ~っと見つめていた。「それ、何ですか?」「Twitterです」「楽しいですか?」「みんなが何してるかわかるんですよ。演出家同士はげましあったりね」 気になって仕方なくなった。 というか、知らなきゃやばい臭いがしている。 だから始めてみることにした。 TwitterのHPを見る。「Twitterとは?」という説明のコーナーには――

Twitterとは、what are you doing?(今、何してる?)をひたすら更新していくという、とてもシンプルなwebサービスです。ユーザー登録をすると自分専用のページが作成され、そこから何をしているかを更新(発信)していきます。(最大140文字)とても手軽に更新できる、小さなブログのようなサービスということから「ミニブログ」などと呼ばれることもあります。 Twitterには「フォロー」という他のユーザーを友達のように登録する機能があります。他のユーザーをフォローすると自分以外のユーザーの発言を自分のページに表示させることができます。

――というようなことが書いてある。 「むむ? Mixiみたいなものか? でも何が違うんだろう? SNSなんだろうか? やっぱり登録してみないとわからん」ということで、早速参加してみることにした。 まず、登録をする。 ハンドルネームのごとき名前を決めて、写真を載せ、いろんな情報を軽く書き込んで登録する。これで、自分のTwitterページができる。 他の人を検索してフォローしてみる。1人知り合いを見つけ、その人がフォローしている人とフォローされている人の一覧を見ると、他の知り合いがザクザク出てきました。おお、この人もか! という感じ。誰かをフォローすると自分のページの「フォローしている」のアカウントが増え、登録されたことが確認できるし、その人が自分のページに書いた「つぶやき」が見られるようになる。 フォローする人を探しまくると、驚くべきことにいろんな人や団体、企業が登録しているのがわかる。仕事の知り合い、田舎の同級生、会社の部下、よく読む雑誌の編集部、証券会社に映画会社、不動産会社。ダライラマ、坂本龍一、バラク・オバマ、鳩山由紀夫、マイケル・ジョーダン。 興味のある人をどんどんフォローしていくと、あっという間にいろんな人の「つぶやき」で自分のページがいっぱいになっていく。人が書き込んだ短い文章が時系列的に表示されていく。 それを項目分けできるようにもなっていて、自分でリストをつくれる。「企業」とか「政治家」とか「有名人」とか。さながらアドレス帳のようでもある。特定のリストを選ぶと、そのリストの中にいる人だけの「つぶやき」を見られる。 短いつぶやきの後にURLを貼って、リンクに飛べるようにもできるので、多くを語らずいろんなことを伝えることができる。 そんなこんなで、なんとなく使い方もわかってきた。 第一印象はチャットとブログの中間。社会的なネットワークなんだし、コミュニケーション機能があるのだから、SNS(ソーシャルネットワーキングサイト)の一種なんだろうけれど、なんとなくゆるい。140字という文字制限のせいか、言葉が簡単で、内容も軽い。 それと、決定的なのは、Twitterはパソコンよりiphoneに向いていることだ。小さい画面で短い文章をスクロールしながら見る。時間のあるときはどこでも見られて、書き込める。技術の進歩とともにあるサービスなのだと実感する。 以前、Mixiにどっぷりはまり、日記なんだから毎日書かなきゃと、毎日毎日長文を書いて、疲れちゃって辞めちゃったことがある。(そのときの文章がきっかけで、このコラムのオファーをいただいたという、ありがたい経緯もありますが)。ついでに言うと、他の人が思いを込めて書いた長い文章をひたすら読んでいるのは「面倒くさい」という気分にもなり、そこからさらに、自分事をひたすら熱く書いても他人には迷惑だということにも気づいた。 チャットはしたことはないけれど、やってる人を見る限り、「俺にはこれをやってる暇はない」が結論。 と言うわけでTwitterを「つぶやき」と訳しちゃったのはどうかとも思うけど、最大140文字しか書けないという前提の、短い自分の表現はいろんな意味でちょうど良いのでしょう。書く側にも、読む側にも。 ただ黙って自分のページを見ているだけで、ものすごい量の情報が行き交っている。誰かが撮影中で、誰かが徹夜でへろへろ。誰かがランチを食べてて、誰かが確定申告をしに税務署に来た。面白い映像がどこかにアップされ、それについて議論される。原口総務相が地元の佐賀にいて、オバマが情勢を分析し、ダライラマが説教をする。新しい映画、新しい音楽、新しい本なんかを誰かが紹介している。 掲示板と違うのは、登録したユーザーの書き込みしか表示できないため、誰だかわからない人の書き込みはなく、「荒らし」というのが存在しないこと。チャットのような、会話の応酬もない。とにかくなんかちょうど良いのだ。SNSの洗練された形と言えるだろう。 このおもしろさを言葉にして伝えようとしても無理がある。やってみないとわからないからだ。「今、何してる」ということを何でいちいち人に教えなきゃいけないのか? という疑問は残るのだが、教えたくないことは書かなきゃいいし、書きたいことだけ書けばいい。そんなにみんなとつながりたいという欲望はないのだが、有益な情報はウエルカムだ。いくらあってもいい。自分勝手な人には、ぴったりである(笑)。 しかし、こんなにいろんなことをつぶやいていたら、自分の口で言葉を発するという行為ができなくなってしまうのではなかろうか? と心配になってしまうが、「つぶやき」の多い人はやはりおしゃべりなんだろうな。会ってもどうせいっぱいしゃべるんだろう。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)
~株式会社リフト 第一制作部 チーフプロデューサー~

  • 1968年 佐賀県生まれ、44歳。
  • 1991年 ニッテンアルティ入社(旧 日本天然色映画株式会社)
  • 2000年にプロデューサーに昇格。
  • 2009年 社名がリフトに変更。

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが(日本にはCMプロデューサーと名乗る人が2000人もいるそうです)、自分のケツを自分で拭こうとしているプロデューサーは何人いるでしょうか?矢面に立つのは当たり前だとつっぱって仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。根性論を書いているかと思ったら、意外に現実論者でもあります。

<主なプロデュース作品>

  • AGF ブレンディボトルコーヒー(原田知世さんと子供)
  • 日清食品 焼きそばU.F.O
  • マルコメ 料亭の味
  • リーブ21 企業CM
  • コーセーサロンスタイル 『髪からはじまる物語」行定勲監督Webムービー
  • クレイジーケンバンドPV
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