興味のあるドアを開けろ。

番長プロデューサーの世直しコラムVol.43
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木光
昨日、テレビで、新卒学生の就職難がつづいていていると知りました。学生さんたちもずいぶん苦労をしているみたいですね。 最近は、大学に「就活サークル」なるものがあって、就職活動に関する情報の収集や面接の練習などをしていて、驚くべきことに1年生からそこに入って活動している者もいるとのこと。大変なんだなあ。 最近よく耳にする似たような言葉に、「婚活」というのもあります。婚活合コンや婚活料理教室などがあり、少子化対策で区役所が主催する婚活のイベント、ハイキングやゴルフや、なんやかんやもあるらしい。よく考えてみると、すごい内容の活動だなあ。そう思いませんか? 僕が気持ち悪さを感じるのは、自分の幸せをつかまなければならない状況で、他人が組織する集団に入ってそれを探そうという発想です。さらに言えば、そういう風景を、変だと思わない感覚です。就職も結婚も、人生における一大事。これ当たり前。そういうことをなんで他人と一緒に活動しなくてはいけないのか?それがいいとか悪いとか、他人に意見を求めたいと、少なくとも僕は思いません。 どうやっていいか見当がつかないから、とりあえず、みんなで考えてみようということでしょうか。 実は、僕は会社生活においても、そういう学校の延長みたいな風潮を感じています。正直な感想を言えば、どんな会社でも、何かを開発したり、金を稼いできたり、みんなを引っ張って行ったりする人間は全体の2割程度しかいない。働き蟻の法則とか言って揶揄されがちな話ですが、実感としてそれは事実と思っている。 「就活」や「婚活」などは、その状況をよく表している現象と思うのです。 何をもって自分の幸せとするかは無限の可能性の中から自分で決めて進まなければいけないのだけれど、それを決められないし、自分の幸せをイメージする想像力が欠如しているから、同じようなだめな人たちが集まってなんとかしようとつくった仲良し集団に所属して、とりあえず安心する。 就職や結婚がうまくいかないのは、世の中や景気のせいではない。はっきり言ってお前の人間的な魅力が足りないからだ。 「自分が幸せになる」を具体的にイメージできない奴に、人間的な魅力があるわけがない。 しかも、就職や結婚はゴールじゃない。大事なのはその後につづくいろんな問題を解決して、幸せに向かって進む覚悟であり、バイタリティなんですよ。 テレビ番組に、矢沢永吉が出ていて、いろんなインタビューをされていました。そこに、ある中学生からメールが届きました。「僕は、なんの夢も目標もありません。どうやって生きて行けばいいでしょうか?」という質問でした。 矢沢さんは、「う~ん」とうなってから話し始めました。 「そりゃあつらい状況だねえ。でもね、夢とか目標とかなかったとしても、なんか興味のあることはあるでしょ?生きててなんの興味もないってことはないんだからさ。俺、これ好きかもってことは、いっぱいある。だったら、そのなかで一番興味のあることのドアをバクッと開けて入って行けばいいんですよ。入って行けば、そこにまた、なんかいっぱいいろんなドアがあるから、その中でまた一番興味のありそうなドアをバクッと開けてその奥へ入って行く。違うなあと思ったらそのドアをバクッと閉めて、次のドアをバクッと開ける。そうやって、興味のあることに深く入って行って、いろいろ詳しいことを知って行くと、どんどん楽しくなる。それで飯食えないかなあって考え始める。それでいいんじゃないんですか?最初のドアを開けてみるべきだよ」 さすが、永ちゃん。いいことおっしゃる。 女を口説くにしても、やりたいことを実現するにしても、友だちに付き添われてやるのは嫌だなあと思うべきです。友だちの都合で開けたいドアを開けられないと、一生後悔することもある。そういう人が、結構いるんじゃないかと思うのです。 おいしいことは、自分でこれだと決めて、誰にも邪魔されないように、一人でこっそりやるべきだ。そうしないと興奮できないでしょ?と思うのですがどうでしょうか? みんなで面接の練習なんかするのはかっこ悪いと気づいてほしい。就職に関する技術をいくら磨いたところで、人間的な魅力のない人はすぐにばれますって。異性に関してもそう。魅力のない人は、いくら飯つくるのがうまくても結婚しようとは思いませんよ。お互い様です。 人間的な魅力は、自分で決めて飛び込んだ競技の技を磨いて、試合にエントリーして、戦って、勝ったり負けたりして、そこで考え、悩んで出てきた新しい考えを試して、いろんな人から吸収したり影響を受けたりして醸し出されるものと思うのです。つまり、外の風にさらされた状況に、いかに自分を持って行けるかが大事なんだ。身内だけで練習していても、なにも起こらないのだから。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)
~株式会社リフト 第一制作部 チーフプロデューサー~

  • 1968年 佐賀県生まれ、44歳。
  • 1991年 ニッテンアルティ入社(旧 日本天然色映画株式会社)
  • 2000年にプロデューサーに昇格。
  • 2009年 社名がリフトに変更。

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが(日本にはCMプロデューサーと名乗る人が2000人もいるそうです)、自分のケツを自分で拭こうとしているプロデューサーは何人いるでしょうか?矢面に立つのは当たり前だとつっぱって仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。根性論を書いているかと思ったら、意外に現実論者でもあります。

<主なプロデュース作品>

  • AGF ブレンディボトルコーヒー(原田知世さんと子供)
  • 日清食品 焼きそばU.F.O
  • マルコメ 料亭の味
  • リーブ21 企業CM
  • コーセーサロンスタイル 『髪からはじまる物語」行定勲監督Webムービー
  • クレイジーケンバンドPV
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