「ノープランからの脱出(後篇)」

第117話
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
Akira Kadota
門田 陽

あれよあれよでまた今年も暑くなってきました。日本の二季化が加速しているようです。さて、お待ちかねの人がどれほどいるか知りませんが前回のつづきです。

(51)「考えるヒント(小林秀雄著)」を再読する。
(52)「考えないヒント(小山薫堂著)」を再読する。
硬派な前者と軟派な後者。交互に読み比べができるのは今生きている僕たちの特権だと思います。

(53)スーパーマーケットへ行く
いつだったか、2000年頃。当時タグボートの岡康道さんのセミナーで「企画に行き詰まったらスーパーマーケットへ行け」と言われたことを急に思い出しました。時代と生活が凝縮された場所だからという理由だった気がしますが、今だったら「コンビニへ行け」ですかね。

(54)自転車を漕ぐ
自転車に乗ると、気分が子どもになりませんか。僕の大好きなRCサクセションの曲「ぼくの自転車のうしろに乗りなよ」は令和の地上波では放送できないそうです。

(55)転校初日の挨拶を考える
転校生がやって来る日のドキドキ感って、もう味わえないのかな。僕の中学時代の友だちの鈴木浩くんのアダ名は今でも「ニュー」です。

(56)動物園へ行く
(57)水族館に行く
その昔、マスコミの世界では記事やニュースに困ったときは動物園か水族館に行けという格言がありました。これは今でも賛同できます。猿山や大水槽の中は社会の縮図です。ただつい最近行った葛西臨海水族園は魚より人が多くてしんどかったです。

(58)歯ブラシを新しくする
リーズナブルにリフレッシュできます。

(59)行きつけの帽子屋さんへ行く
僕は帽子が好きです(※とりとめないわ第18話)。大好きなものといるといいアイデアが生まれる気がするのです。しかし、コロナの影響でこの数年の間に行きつけだった下北と九州の二つの帽子屋さんが閉店しました。いま新規の行きつけを探し中。新宿でちょっとだけ見つけた気がしています。

(60)棚の帽子を並べ替える
好きなものを触る至福の時間のために、人は働くのかもしれません。

(61)Car Jamを30分だけ
まさか今さらスマホゲームに嵌るとは思いませんでした。簡単なパズルゲームはジジイの心もつかみますね。気が付くと半日やってたりします。世界ランキングに名前が入ったりするとうれしくてたまりません。得難い快感、薬師丸ひろ子を思い出します(古ッ)。でも、もうやめます。消去しようか悩み中。

(62)草野球を見に行く
少年野球もいいですがオッサン同士の試合を見るのが面白い。絵に描いたようなエラーが出て喜怒哀楽が詰まっています。僕の事務所の近くに正岡子規記念球場というのがあって ときどき見に行きますが、草野球はスケジュールがわからないのが欠点。先週も出向くと ただの原っぱでした。

(63)考える人に会いに行く
上野の国立西洋美術館の前の広場に無造作に佇む「考える人」。野ざらしですが、ロダンの本物です。でも、人ってこのポーズで考えますかね?う~~む、僕は悩むときはどっちかというと古畑ポーズになります。

(64)ラッパーの歌詞を書き留める
いや~、彼らの韻の踏み方はスゲーです。「今夜はブギー・バック」で精一杯世代には刺激ステキ過ぎます。

(65)スナックのママに会いに行く
ひと月一度は顔を見せに行くお店の傘寿のママの話は酔っていてもためになります。

(66)カップヌードルのカレー味を食べる
個人的過ぎる話なので参考にならずゴメン。このにおいを嗅ぐとなぜか童貞という言葉が浮かびます。なんかそういう記憶の食べ物って大事な気がして。

(67)横綱の土俵入りを真似る
僕の事務所のベランダは四股を踏むのにジャストサイズ。この原稿が読まれる頃には横綱大の里が不知火型なのか雲竜型なのかは決まっていますね。楽しみです。

(68)「実はね」で始まる独り言を言う
これ、録音しておいて後で聞き返すとけっこうヤバいです。

(69)パックをしてみる
気の迷いでやってみたことがあります。気の迷いでした。

(70)大の字になる
フローリングは硬くて伸びきれないので畳の上がオススメです!いい気持ち。

(71)指をポキポキ鳴らす
西洋医学的にはよくないそうですが、その一瞬は気持ちいいですもんね。整体に行くと全身ボキボキ鳴らしますよね。東洋医学の謎。

(72)フェイタスの匂いを嗅ぐ
これは恥部をさらすようですが、クセになる匂い。特に温感の袋を開けてすぐの匂いを嗅ぐのがたまりません。

(73)わさびを舐める
ほどほどがいいです。

(74)本日の〇〇を埋める
20代の頃に書いていたノートにこんな紙が挟まっていました。ことば遊びばかりしていました。

(75)本日のコピーを入力する
これは現在、毎朝7時に僕の事務所(門田コピー工場)のHPにアップしているルーティン。ネタも尽きてきたのでそろそろ新しいものに変えようと考え中です。

(76)AIと会話する
AIの進化のスピードには驚きます。2年前、 僕のことなどまるで知らなかったChat GPT君。今では長年連れ添った女房のように なってしまいました。

(77)ナツノカモ直伝、支離滅裂を書く
去年の秋から今年の春まで落語作家のナツノカモ先生のセミナーに半年通いました。その中で習ったことのひとつ、この点が何に見えるか。

無事卒業して「ナツノアキラ」という名前も頂きました。また習いたいです。

(78)ウソを一つ入れる
これもナツノカモ先生に習いましたが、同じようなことをやる人を知っていました。たとえば自己紹介の中に一つだけウソを入れたり、面接官に一つだけウソをついたり。ま、罪のない範囲で。

(79)英字新聞を買って公園で読む
これは新人の頃、営業の角さんに教わりました。近所の公園でやるとインバウンドの人が話しかけてきます。もちろん僕は英語は全くできません。ドキドキします。

(80)5年後自分はいないと仮定する
そうすると、今やらないといけないことが見えてきませんか。これは前述の岡さんのセミナーで「5年後、電通CRはなくなると仮定する」という話があったのですが、そのときに感じたことです。岡さんが亡くなられてもうすぐ5年が経ちます。

(81)営業の人と飲みに行く
(82)他業種の人と飲みに行く
気の置けない仲間や古くからの友人たちと飲みに行くのはラクチンで楽しいです。が、刺激を求めるのであれば、油断できなかったり、自分のことを知らなかったり、敵かもしれない人と飲んでみる。すると新しい発見がたまにあります。多くの場合は不快になったりどんよりさせられますが。

(83)没の山は取っておく
そんなゴミ、捨てたほうがいいと言う意見が大半なのは知っています。But、10年寝かすと使えるアイデアがあったりするとかしないとか。

(84)ギリギリまでやらない
「時間はいらない。必要なのは〆切」というのはデューク・エリントン(作曲家)の名言。 確か手塚治虫も同様のことを言われています。 夏休みの宿題最終日理論と名付けましょう。 でも、やれるなら早めにやることをオススメしますよ。

(85)約束をする。でも一つだけ
これは、プレゼンのときなどにスタッフやクライアントに何か一つだけ約束をしておくとそこに向かって行きやすい気がします。

(86)好きなジャンルを無理やりでも作る
僕は子どもの頃からの相撲ファン、大人になってから最近は落語とお笑いに嵌っています。 好きこそ物の上手なれとはよく言ったもので、 好きを続けるとその上を行く人に出会えることも多く楽しさが増します。

(87)メモる
これはもう古典的な手法なのであえて説明する必要もないですが、令和でも案外とアナログなメモ帳がいい場合もあります。映画館や劇場等で急に思いついてもスマホ操作は迷惑になることが多いので。僕はもっぱらRHODIAです。

(88)ブラッシュアップする
(89)ブラッシュアップより再案を出す
上司やクライアントさんは、このブラッシュアップという言葉が好きですよね苦笑。それでうまくいく場合もたま~にありますが、いっそ初めから再案をさせてもらうほうがスッキリです。で、結局、元の方がいいねなんてこともよくある話です。

(90)爆音でキヨシローを聞く
理屈抜きでキモチイーー

(91)ライフワークとライスワーク
このコトバは僕の九州の相棒のAD伊藤敬生さんがよく言っていました。彼はいま九州産業大学の教授と日本デザイナー学院九州校の校長先生というすばらしいライフワークを見つけて活躍されています。羨ましい!

(92)企画に音を付けてみる
たとえばコピーを考えたとき、コンテを考えたとき。そのコピーやコンテにどんな音楽が合うかを考えるのは楽しいです。音を付けるとコピーが化けるときがあります。

(93)コピーライターもロケに行け
これとても大事なのですが、予算のせいかリモート慣れのせいなのか行かない人が多いようです。現地でなきゃわからんことって結構あるのにもったいない。コピーライターをぜひロケに連れていってあげてください(誰に向かって言ってるのだろう)。

(94)「コージ苑(相原コージ著)」を読み返す
(95)「啓蒙かまぼこ新聞(中島らも著)」を読み返す
(96)「谷川俊太郎 詩めくり」を読み返す
(97)「最近わかったこと(和田ラヂヲ著)」を読み返す
(98)「笑いの術九八〇円(関三喜夫著)」を読み返す
(99)「自虐の詩(業田良家著)」を読み返す
ラストは立て続けに僕のアイデアの愛読書をズラリ。自分の蔵書をさらすのは裸を見られるよりも恥ずかしいですが、エイヤッです!!

(100)寝る
と、ここまでゼロイチのヒントになればと、あーだこーだ書きましたがそれでも何も浮かばないことがほとんどです。そんなときは寝るに限ります。寝て起きれば悩みの半分以上は解決していることが多いというのがここまで生きてきての結論というか途中経過。以上長々失礼しました。

ところで、二季化が進むと「季節はずれ」という言葉は死語になっていくのかな、という話はまたの機会に。

プロフィール
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
門田 陽
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州、(株)電通を経て2023年4月より独立。 TCC新人賞、TCC審査委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

門田コピー工場株式会社 https://copy.co.jp/

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