社外クリエイティブ人材の活用〜“会社に属さない”働き方における企業とクリエイターの新しい関係性を考える〜

Vol.53
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. 代表
Junya Oishi
大石 隼矢

Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。

いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。

前回のコラム【2025年、シンガポールのギグエコノミーが広げるクリエイティブ人材の新境地】では、今注目されている「ギグエコノミー」のメリットや状況を解説しました。

ギグエコノミーが一般化しつつある今、次に訪れるのは「社外クリエイティブ化」という流れ。企業が必要なときに必要なスキルを持つ外部人材を迎え入れ、まるで社内メンバーのようにプロジェクトを共に進めていく…。そこにあるのは“フリーランス”でも“社員”でもない、第三の働き方です。

 私自身、この流れを「予測」であると同時に、「希望」でもあると感じています。関わるすべてのクリエイターや、ビジネスをクリエイティブに推進する人々の生涯価値をどう高めていけるか。そのヒントとなれば幸いです。

 

目次

社外クリエイティブ人材の活用が前提となる時代へ

なぜ企業は“外部の視点”を求めるのか?

社外クリエイティブ化がもたらす「個人の生涯価値」の変化

まとめ:越境し、共創する仕事人生をデザインするために

 

社外クリエイティブ人材の活用が前提となる時代へ

かつて、外注先といえば広告代理店や制作会社が一般的でした。しかし今、多くの企業が「社外クリエイティブ人材」をプロジェクト単位で起用する動きにシフトしています。特にスタートアップや新規事業開発チームでは、最小限の正社員でコアを固め、それ以外は外部のプロフェッショナルで構成されるケースが増加中です。

たとえば、2024年にシンガポールの大手日用品メーカーが新規ブランドを立ち上げた際、専属のブランドマネージャー1名と、社外のコピーライター、カメラマン、UIデザイナーを都度アサインして、わずか6ヶ月でECブランドをローンチした事例があり、“会社に所属する”のではなく、ある期間だけ“チームに加わる”という関わり方は、クリエイターにとっても企業にとっても大きなメリットがあります。

 企業は柔軟なスキル調達ができ、クリエイターは自らの専門性を保ちながら複数の案件を掛け持つことができます。これは単なる業務委託ではなく、“信頼関係をベースにした共創”のようなあり方です。

 

なぜ企業は“外部の視点”を求めるのか?

その背景には、企業側の課題の複雑化があります。

 ・SNSを活用したブランド構築

 ・Z世代をターゲットにしたPR施策

 ・多言語でのコンテンツ展開

 こうした“今求められる感性や技術”は、社内人材だけでは賄いきれないケースが多くなってきています。

PwCの調査によると、シンガポールにおける企業の約68%が「今後3年以内に、外部人材の活用を強化する」と回答。特にクリエイティブ職においては「社外チームの活用」をすでに実践している企業が4割を超えています。数字で見ると

・ASEAN全体のフリーランス人材数は2023年時点で1.5億人以上。うち、デジタル系・クリエイティブ系職種が約3割を占める
・シンガポール国内でも、2024年には人材採用の24%が非正規・外部委託という統計
※引用資料はページ最下部を参照

となっており、この数字は、もはや「外注」ではなく「戦略的パートナー」としての関係が当たり前になっていることを示唆しています。

社外クリエイティブ化がもたらす「個人の生涯価値」の変化

私たちは今、会社に依存せずとも価値を生み出せる時代にいます。大切なのは「自分の得意なことでどれだけ選ばれ続けるか」。社外クリエイティブという生き方は、スキルの持続可能性だけでなく、人間関係や価値観のアップデートも促します。“自分の名前で仕事が舞い込む”という体験は、会社員時代とは違う自己肯定感と成長をもたらします。

こうした時代の流れを背景に、私たちはFellows Creators Collective(FCC)という仕組みを立ち上げました。単なる案件マッチングではなく、クリエイターと企業の中長期的な関係性をつなぐ“共創の場”として機能することを目指しています。

 「案件があるから集める」ではなく、「この人と仕事したいから一緒に考える」

 そんな関係を、ここシンガポールから育てていきたいと考えています。

まとめ:越境し、共創する仕事人生をデザインするために

社外クリエイティブ化は、決して一過性のトレンドではありません。それは、私たち一人ひとりが「どう働くか」「誰と働くか」「どう生きるか」を主体的に選び直すムーブメントです。この先、もっと自由に、もっと信頼に満ちた関係性の中で、クリエイティブの価値を高めていく未来へ。

その入口に、私たちは今立っているのだと思います。

ギグワークが進化していく中で、求められるのは「信頼できる人材との出会い」と「プロジェクト全体を支える仕組み」です。そうした背景から、私たちもシンガポールにてFellows Creators Collective(FCC)というクリエイターとのキュレート型クリエイタープラットフォームプロジェクトを始動しました。単なるオンライン上のマッチングでは作り難い、長期的な関係性を前提とした“エージェントが伴走するギグエコノミー”の形を模索しています。

今後もこのコラムでは、アジアのクリエイティブ業界における新たな動きを追いかけながら、現場で見えてきた兆しをリアルにお届けしていきたいと思います。

 

弊社の活動について

私たちフェローズシンガポールは、ここシンガポールや東南アジアを拠点としているクリエイティブ人材やプロフェッショナル人材と多くのネットワークを持っています。

この記事を読んでくださる企業の皆様には、フェローズシンガポールを課題解決や新たな取り組みに活用していただければと思います!ぜひプロフィールよりお気軽にご相談ください。

 

※Fellows Creators Collective (FCC)運営による観測と実体験

本コラムで紹介した社外クリエイター起用の事例など、筆者がFellows Creative Staff SingaporeおよびFCCを通じて現地で関わった複数プロジェクトから得た知見および主観から執筆しています。

■参考・出典一覧(References)

・PWCグローバル従業員の希望と不安に関する調査2023

https://www.pwc.com/sg/en/publications/hopes-and-fears/2023.html

・国境を越えて働くオンラインギグワークの将来性と危険性

https://documents1.worldbank.org/curated/en/099011724092026769/pdf/P1773021669c080021bb971499c18a61008.pdf

 

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. 代表
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。2012年 京都外国語大学 卒。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。シンガポール国内のクリエイティブ人材や専門職人材に特化した人材マネジメントサービスを提供している。
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