「ノープランからの脱出(前篇)」
前回の当コラム(※とりとめないわ115)で、ノープランのときのアイデア発見法みたいな話を書いたところ複数(といっても2件ですが)のお便り(といってもメールですが)があっていずれも他の方法もあれば知りたいという内容でした。
思えば僕は17歳のときにコピーライターを志望して養成講座に通い始め今日まで35年間、そんな安直なやり方ばかりを求めていたので師匠や先輩(故人になられた方も多いなぁ)から聞いたり学んだりしたものだけは無数にあります。しかし根がぐうたらなのでほとんど実践には至らず今だに成果はあがっていないのでそれを書くのは憚られる気もしますが、人によってはドンピシャ(古いな、死語かな)なものもあるかもしれません。オッサンの戯言として読み飛ばしてください。
まずは、前回書いた20個をタイトルだけ。
(1)石鹼で手を洗う
(2)いいシャンプーで髪を洗う
(3)ひたすら歩く
(4)いつものパンダ達に癒される
(5)王将で無性に食べる
(6)一人指相撲を取る
(7)手品の種を考える
(8)ペンネームを考える
(9)ト音記号を書きまくる
(10)寿限無を口ずさむ
(11)ピカソの本名を暗唱する
(12)平家物語の冒頭を声に出す
(13)新聞のインクのにおいをかぐ
(14)行列に並ぶ
(15)列車の窓から山を眺める
(16)草間彌生の作品を見る
(17)街角ピアノを弾いてみる
(18)繫昌亭に行く
(19)マツモトクラブのライブを見に行く
(20)人に手を振る
では、ここからどんどん羅列します。形式的に番号を付けますが順不同です。
(21)切り口マトリクスを書く
これは昭和のコピーライターの多くがやっていた典型的なアイデア出しの方法。一つのワードから連想できる別のワードを次々と書いていくだけです。僕も新人の頃に当時の師匠の大曲康之さんに習いました。大曲さんからはよく「全部出し切ったか」を問われました。令和になる少し前からこのアナログな手法は下火ですが、僕は今でも行き詰まるとこれを実行しています。
(22)銀座の鳩居堂とG.C.PRESSを梯子して文房具を購入する
この2店舗でステーショナリーを買って帰ると気分が上がり筆が進む気はします。
(23)仮想キャッチボールをする
小学生の息子がいると仮想して、彼とキャッチボールをするときの会話を考えながらシャドウピッチングをします。人前では絶対にやりません。
(24)始発電車に一駅だけ乗る
これ、けっこういいですよ。色々な人生模様が見られます。始発は混んでないのもいいです。隣の駅に着いたらそこからは歩いて戻るので運動にもなります。くれぐれも始発です!最終電車でやるのは全くオススメできません。
(25)屋号を考える
仕事でネーミングをすることはときどきありますが、自分の店の名前を考えるのは難しいです。新人の頃、当時勤務していた西鉄エージェンシーの近くにあった「でっぷりや」という定食屋さんはいい名前。今はもうないのですが、おかみさんの笑顔も覚えています。
(26)再現ドラマを考える
自分の過去の事柄をドラマ化します。登場人物を誰にするか(好きな俳優を選び放題!)を考えるのは楽しいです。
(27)ゆるキャラを考える
今日も一通も投函されないポストのゆるキャラ。その名は「あきらめ~る」。誰か絵を考えてくれないかな。
(28)同級生に会う
同級生はいくつになっても同じ歳なので、いきなり肩の力が抜けてあの頃の喋りを思い出せます。
(29)坂を見に行く
毎週火曜~金曜の深夜にテレビ朝日で放送中の「全力坂」が好きです。近所の坂が取り上げられたら聖地巡礼も兼ねて訪ねます。するとテレビでは気が付かなかった自販機やヤバそうな家などの発見があります。
(30)サウスポー(利き腕でない方)で書く
ちなみに今回のこの原稿はここまで左手だけで打ちました。とても不便でイライラしたのでここからは右手も使います。するとたちまち解放されて、今きもちいいです!
(31)ダジャレタイムをつくる
「シャレは苦しいほど面白い」は電通の大先輩の関三喜夫さんのコトバです。
(32)とりあえず書き始める
これは僕の九州時代の同僚だった本名草場滋さんが書かれた「考え方」の考え方(指南役著)という本の中にあった言葉。腕組みするよりとにかく書いてみるという言葉には励まされます。草場さん、元気かな。会いたいな。とりあえず、会うか。
(33)独りカラオケでブランキージェットシティの「ディズニーランドへ」を歌う
(34)独りカラオケで戸川純の「パンク蛹化の女」を歌う
(35)東京パノラママンボボーイズの「パチンコ」をラジカセでかけながら安いウィスキーを部屋で飲む
これをやると1990年頃の自分や世間のことを猛烈に思い出すのです。なぜか初心に帰ります。
(36)富士山を上から眺める
富士山の持つ魔力。日本には○○富士と呼ばれる山が340以上あるそうです。僕の通った福岡県立糸島高校近くの可也山(標高365m)も地元では「小富士」と呼ばれています。そんな日本一の山を俯瞰で見ると宇宙人な気分。
(37)ウルトラQのオープニングを見直す
ウルトラQの有名なマーブル模様のオープニングシーンはデジタル技術により今ではカラー化もされていますが、僕は当時のままのモノクロ映像の方が様々な色が想像できて好きです。そして何といってもあの怪しく妖しい音楽がゾワゾワと五感を刺激します。
(38)ウエストのシュークリームを食べる
20代後半の修行時代に知った罠の味。
(39)百一人一首を考える
ここ数年、現代短歌が流行っています。どことなくコピーライティングと似ています。うまい人が多くて困りものです。僕はそれよりも擬古典で書くとどうかなと考えています。
(40)VHSで撮っていたものを見返す
80年代フジテレビで放映されていた「夢で逢えたら」の録画はその擦り切れ具合も含めて今見てもワクワクします。
(41)トイレ掃除をする
(42)コロコロをやりまくる
(43)氷を食べる
頭がキーーンとして、一瞬遠い夏の日の記憶がよみがえることがあります。
(44)ねづっちのYouTubeで癒される
類まれな才能の人を見るのは面白いです。
(45)色物さんを目当てに寄席に行く
寄席の常連さんの中にはときどき色物さん(落語・講談以外の芸人さん)が出るとあからさまに席を外す人がいますが、僕は色物さんが大好きでして、色物さんだけの香盤を一度見てみたいです。
(46)スプーン曲げを試みる
一度も曲がったことがありません。
(47)コンペティションには不可解な一点を加える
これはアートディレクターの仲條正義さんのコトバ。面白い発想って、理屈じゃないことが多いですもんね。
(48)星新一を読み返す
昭和の頃に読んだときは荒唐無稽に思えた話が今だとリアルだったりして、驚きます。あと短編はすぐに読み終わるのもいいです。名作「ボッコちゃん」は2分で読み切れます。
(49)ずる休みをする
学生時代は遥か大昔ですが、会社員だった頃がもはや遠い過去な気がします。
(50)無性にプチプチを行う
「プチプチ」は登録商標されていて正式名称は気泡緩衝材。NHKは何と言ってるのかな? さてと、ざっと400個くらいの中から絞って100個にしたのですが、あまりに長くなってしまい、残りは次回に。珍しくまじめな原稿なので評判が芳しくないときは、あっさりやめるかも。
ところで、今回のタイトルですが当初は「考えずにヒント」としていたのですが、後篇で紹介予定の「考えないヒント(小山薫堂著)」と被るので慌てて変えたという話はまたの機会に。

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