「二度見したものパート2」

第101話
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
Akira Kadota
門田 陽

昔から光陰矢の如しと言いますが、その「昔から」とはいつ頃なのかを調べてみると色々な説があってわからないのですが、相当な昔、少なくとも平安時代には使われていたことは間違いなく、また僕個人としても「光陰矢の如し」にまったく異論はありません。というわけで、今年ももう残り11カ月しかない、などと新橋の居酒屋で日々誰かが口走るオヤジギャグを言いながら去年の暮れから今年の始めに街でライブで遭遇した風景を振り返ります。今回はとりあえず10点。僕にはなんでもすぐ撮る残念な悪いクセがあって、今スマホのアルバムの保存データを見たら61,920枚(※写真①)とあるので厳選の10点と言っておきます。

※写真①

そうです、以前にもありました。コロナ禍の2021年の当コラム(※とりとめないわ第75話)の第2弾。いわゆる「VOW」的な、ひとつの「超芸術トマソン」的なかつて新人類と呼ばれた新橋オヤジ族が好む類のものですのでZ世代やAYA世代の皆さんには「知らんけど」の一言で片づけられそうな気もしますが、根が好きなもんでしつこくてゴメンなさい。

昨年2023年は春にコロナが第5類に移行されて制限なく街に出られるようになり、それまでのうっぷんを晴らすかのように日本中に人が溢れました。何を隠そう、特に隠すもののない僕もその一人。ちなみにこの「何を隠そう」の語源はどうやら歌舞伎のようで17世紀には使われていたフレーズだそうです。そしてそのコロナや働き方改革ですっかり根付いたリモート会議等のおかげ(?)でどこでも仕事ができるので元々放浪癖がある僕はPCと共に日本各地の空の下でコピーを書いたり送ったりしています。80年代、出張に行くたびに会社からポケベルを持たされて街で突然大音量が鳴り気まずい思いをしたあの頃が夢のようです。あ、この「夢のよう」の語源は中国の北宋の時代に活躍した程顥という儒学者が残した言葉のようです。

さて、前置きが本題より長くなりそうなのでまずは暮れの山形で二度見したものを3点。昨年の11月山形に仕事でお邪魔したとき、せっかくなのでという都合のいい理由で連泊して県内を散策しました。山形駅前からバスで約2時間で着いた酒田駅。そのコンコースに市民の習字が貼られていました(※写真②)。

※写真②

いずれも上手です。しかしなぜこのお題なのでしょう。最近は小学校でもお金の授業があると聞いていますし、2024年から始まった新NISAを踏まえてのことでしょうか。この日は遊佐町を訪れおいしいお酒をいただきました。翌日山形駅に戻り今度はJRの鈍行でかみのやま温泉駅に降りて街をぶらりとオジさんぽ。どうしても緑がほしい家(※写真③)やその名の通り「我が家」な飲み屋さん(※写真④)をながめて駅に帰ると構内に干し柿が吊るされているではありませんか(※写真⑤)。

※写真③
※写真④
※写真⑤

これは駅員さんたちのおやつになるのでしょうか。

続いては、同じく去年の12月大阪にて。

このところよく大阪にお邪魔しています。仕事というよりは趣味の落語やお笑い鑑賞のほうがメインになっていますが、このときは後輩たちとの忘年会が目的でした。梅田のホテルから徒歩で居酒屋へ向かう途中の商店街で首を2回見上げ直しました(※写真⑥)。

※写真⑥

コピーに釣られて70m戻りたくなりましたがぐっと堪えて無事に居酒屋さんに到着。お客さんが多くて活気があります。壁には元気よくメニューが貼られています。うん?全部一緒です(※写真⑦)。

※写真⑦

そこまでのオススメなのでしょうか。それとも何か切羽詰まった事情があるのか、ふと酒田駅でみた「タンス預金」を思い出しました。

新年明けてからは地元の福岡でやはり後輩たちとの新年会に参加しました。そこでもまた約束の居酒屋に着くまでに足が止まりました。看板の横を過ぎたあと、引き返しての二度見です。これって何なのでしょうか(※写真⑧)。

※写真⑧

何にしても無関係な人を振り向かせる力のあるキャッチフレーズ。優秀なコピーライターの技なのか。案外、店のママがサラッと書いたものですかね。どこの街に行っても知らないことだらけ。日本中、刺激でいっぱいです。

昨年5月に独立して初めてのお正月。事務所兼部屋のあるビルの近所を日々歩いています。JR御徒町駅前の通称パンダ広場のパンダ達はよくいろんな悪さをしています(※写真⑨)。

※写真⑨

いや、いけない人間たちの仕業でしょうね(※写真⑩)。

※写真⑩

初詣は湯島天神。事務所から徒歩10分はかかりません。いや~、みんな願い過ぎだって。こんなに多くはいくら神様でもムリです(※写真⑪)。

※写真⑪

中には自分の学校に推しのアイドルが合格してきてその子と付き合えますように、という学問の神様完全お手上げな絵馬もあります。

最後にもうひとつおまけ。事務所から徒歩3分の最寄り駅から銀座線で12分で着く新橋には馴染みのお店が何軒かあるのでちょくちょく行きます。その新橋の金券ショップが立ち並ぶ一角で二度いや三度見して近付いて激しくひきつけられた求人広告がコレ(※写真⑫)!!

※写真⑫

今のところ2024年のマイベスト広告です。

ところで僕は今日このコラムを書くまで「光陰矢の如し」の英訳を「Time is money.」だとほんとに思っていて、ついさっきそれが違うと知りショックだった話はまたの機会に。

 

プロフィール
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
門田 陽
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州、(株)電通を経て2023年4月より独立。 TCC新人賞、TCC審査委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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