ブルックリンのTikTokインフルエンサーが日本に来て衝撃を受けたこととは?!

Vol. 48
FIND IT. LOVE IT.
Sayuri Fujii
藤井さゆり

以前のコラムで度々紹介したことがある、ニューヨークの映像クリエイター・インフルエンサーのケイシー・ネイスタット

 

13年前にYouTubeチャンネルを開設、現在のチャンネル登録者数は1260万人、インスタのフォロワー数は300万人。ニューヨークをスノーボードで駆け抜ける動画やナイキFuel Bandの動画がバズり、一躍人気ユーチューバーとなりました。

 

 

SNOWBOARDING WITH THE NYPD – CaseyNeistat

 

 

Make It Count – CaseyNeistat

 

YouTubeでは実験的な動画で爆発的な再生数を誇り、過去にはソーシャルメディアアプリを立ち上げたことも。

 

そして最近、同じNYのブルックリン在住で「TikTokのケイシー・ネイスタット」と呼ばれる人物がいます。

 

その人物がこのティム・チウサノです。

 

 
 
 
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ティム・チウサノは、ネイスタットのような映像クリエイターではなく、ニューヨークのマーケティング会社に務め、妻と10歳の娘と一緒にブルックリンに住んでいる44歳の男性です。彼のTikTokには、実験的な要素があるわけでもなく、ただ毎日、彼の日常を綴ったものとなっています。

 

@timmchiusano @Ben ♬ Sunday – HNNY

 

@timmchiusano

 

♬ Sunday – HNNY

 

平日は毎朝4時に起きてトレーニングをし、娘に冷凍ワッフルを使ったスマイルフェイスを作り、仕事に行き、昼食は毎日決まったサラダ専門店「Sweetgreen」からサラダを買い、仕事をして帰宅、自宅で夕食を取り、晩酌とおやつタイム、就寝、最初に戻る(ループ)という流れはほぼ一緒です。

 

その合間に違うエピソードが盛り込まれたり、週末は夫婦でデートを楽しんだり、友人たちと食事をしたりと少し変化があります。それを淡々とティム自身のナレーション付きで綴られていく動画となっています。

 

@timmchiusano

 

♬ Sunday – HNNY

 

現在、TikTokのフォロワー数は989,700人。ケイシー・ネイスタットのTikTokのフォロワー数は706,100人なので、すでにTikTokのフォロワー数だけだとネイスタットを超えています。

 

一番古いTikTokの投稿を見ると、ティムは2019年8月で、ケイシーは2019年10月とほぼ同時期。しかし投稿数を見ると、ケイシーは31、ティムは数えきれないほど。(ティムもYouTubeチャンネルを持っていますが、反対にYouTubeだと投稿数もフォロワー数も逆転します)

 

@timmchiusano

day in the life of a creative executive (or whatever it is that my business card says)

♬ Sunday – HNNY

 

なぜ映像クリエイターでもない一人の会社員がTikTokでこんなにもバズっているのか?こんなにフォロワー数を獲得しているのか?「TikTokのケイシー・ネイスタット」と言われる理由は?

 

ティムの初期の投稿を見てみましょう。

 

@timmchiusano life moves fast, stop and smell the awesomeness #thankful #brooklyn #hi #firsttiktok #summer #art #1 ♬ Picasso Baby – JAY-Z

 

@timmchiusano protein bar reviews, oh my #beachbody #protein #proteinbarreview #snack #food #fyp #review #healthy #foryoupag ♬ original sound – timm chiusano

 

いくつかのビデオクリップを繋げてBGMを付けるだけ、もしくは他のティックトッカーがやっていそうなことを真似しているような感じで、音声も聞き取りにくいですし、現在の確立されたスタイルがないので、見ていて正直あまり惹きつけられません。再生数も現在に比べると少ないです。

 

おそらく、毎日何回も投稿しているうちに現在の自分のスタイルを確立させたのでしょう。毎回投稿すれば技術も身に付きますし、フォロワー数も付いてきます。

 

現在、彼はマーケティング会社で働いていますが、経歴としてマーケティングやブランディング、広告業界でクリエイティブディレクターやプロデューサーをしており、仕事を通して、ソーシャルメディアマーケティングの知識や見せ方、撮影の方法など、学んできたということもあると思います。

 

彼のTikTokを見てみると、様々な画角で撮影をしていたり、短尺を活かした編集をしていますし、毎回同じフォーマットであるにも関わらずストーリーがあり、見ているものを飽きさせません。

 

@timmchiusano veggie glizzies for life y’all 🌭 #rickowens ♬ Sunday – HNNY

 

しかし一番は、彼の独自の視点で切り取った日常を綴った動画に、多くの人が共感をしているのではと思います。

 

これは私の感触ですが、特にニューヨークに住む家族を持つ40代男性は、仕事をすること、子供を育てること、体を鍛えること、自分の見た目を整えたり健康を意識することに重要性を見出している人が多いので、ティムと同じような意識や、仕事との向き合い方、ライフスタイルを持っている人が多いと思います。

 

@timmchiusano

 

♬ Sunday – HNNY

 

TikTokは若い世代だけではなく、彼と同じ世代のユーザーも増えてきているので、彼のTikTokはそういう人たちに刺さっているような気がします。

 

また、ニューヨークで生まれ育っていなくとも、誰もが惹きつけられるニューヨークの夕焼けや夜景、ブルックリンブリッジなどを、毎回動画の途中で差し込んでいる点も魅力です。

 

@timmchiusano

 

♬ Sunday – HNNY

 

さて、そんな彼は最近、家族と一緒に日本へ旅行をしていました。

 

@timmchiusano chapter 38 in my book of appreciation is dedicated to snacks in japan #thebookofappreciation ♬ Wes Anderson-esque Cute Acoustic – Kenji Ueda

 

@timmchiusano

come take a 🚄 past 🗻 with us

♬ Wes Anderson-esque Cute Acoustic – Kenji Ueda

 

@timmchiusano

sunday in tokyo

♬ Wes Anderson-esque Cute Acoustic – Kenji Ueda

 

新幹線で京都に行ったり、奥さんが東京マラソンで走ったり、お寿司を堪能したり、コンビニの「トライアングル寿司」という名のおにぎり(笑)を味わったり…日本を満喫している様子がわかりますね。

 

日本旅行のTikTok動画の一つに、彼の目線で、日本について語られた興味深いものがありましたので、ご紹介します。

 

@timmchiusano

in light of what happened yesterday in america yet again

♬ Daydreaming – Radiohead

 

電車に母親と6歳くらいの少女が乗っていました。しかし、電車が止まったとき、6歳の少女は一人で降り、母親だと思っていた女性は電車に残りました。

 

私と奥さんは、6歳の子供が一人で電車を降りたことに驚きました。その後、私たちは、どこにでも、かなり幼い子供たちが一人でいることに気付き始めました。 多くの場合、私の娘、エブリンより年下の子供たちです。

 

日本での最後の夜、新しい友達ができました。彼が言うには 「子供たちは幼い頃から学校に一人で通い、用事を済ませることができる」のだと。改めて「日本は安全だ」ということを認識しました。

 

そして日本では、幼い子供たちは通園・通学中に黄色い帽子をかぶっていて、これは「横断歩道での安全のためであり、大人にもう少し助けが必要かもしれないことを知らせるためでもある」こと。

 

日本の子供たちは、子供たちの安全を守ることが社会全体としての共同責任であると判断しているため、幼児でも非常に自立心を持っています。

 

以下は、このTikTok動画についたコメントです。

 

– このようにアメリカの他の大人を信頼できたらいいのにと思います。でも、大人はおろか、他の子供も信用できません。

 

– 日本:子供たちは私たちの連帯責任です。米国:子供たちの命は、銃の権利よりも重要ではありません。

 

– これは、歩きやすさ、移動のしやすさ、安全性のおかげで実現されている。早期の自立は、子供たちが実際に学び、適切に成長するのに役立っている。

 

アメリカでは、6歳の子供を一人にさせたら親がペナルティを課される可能性があります。州によってガイドラインは違いますが、大体12、3歳くらいから一人で外出しても保護されない、という印象です。

 

日本でももちろん子供を狙った事件は多数ありますが、日本の安全性はアメリカとは比べものになりません。学校での銃乱射事件が繰り返されていますし、つい一ヶ月前も、テネシー州ナッシュビルの小学校で8歳と9歳の子供2人が​​銃撃により死亡する、という事件が起こっています。

 

彼のTikTok動画で、改めて日本が安全であることを認識したとともに、反対に、繰り返されるアメリカの銃乱射事件に深い憤りを感じます。少しでも銃規制が進み、安全が保障される社会となることを心から願います。

 

また、このTikTok動画はいくつかのメディアに取り上げられたこともあり、1,000万回以上再生されるほど視聴されています。この動画は、私たち日本人、そしてアメリカ人、それ以外の国の人々にとっても学びがあると思います。

 

 
 
 
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いかがだったでしょうか。

 

そういえば、「ティム・チウサノがTikTokのケイシー・ネイスタット」と言われている理由を書き忘れていました。ティムもケイシーもブルックリンに住んでおり、家族がいる、ソーシャルメディアでバズっている、という共通点があるからだそう。ティムによると、一度だけケイシーとすれ違ったことがあるとか。ネットでは「ぜひコラボしてほしい!」という声が上がっていますが、「TikTokのケイシー・ネイスタット」と言われていることに対して、ティムは「彼に申し訳ない」と謙虚な様子。

 

ケイシーは会社員には向かなさそうなタイプですし、ティムとは違う畑の人だとは思いますが、コラボしたら案外面白いかもしれませんね。

 

(参考)

Casey Neistat – Instagram, TikTok

Tim Chusano – Instagram, TikTok

Timm Chiusano – Website

Meet the Overachieving Creator Teaching TikTok To Chill The F-ck Out – Rolling Stone

TIKTOK CAPTURES THE DIFFERENCE BETWEEN KIDS IN JAPAN VS. AMERICA – IN THE KNOW

Tim Chiusano’ s interview on “Ahead of the Curb with Coco Mocoe” – @cocomocoe on TikTok

プロフィール
FIND IT. LOVE IT.
藤井さゆり
東京生まれ、2008年ニューヨークに移住。 公益法人に勤務の傍ら、仲間内で企画したクラブイベントのフライヤーデザインをしたことから、デザインの面白さに目覚め転職。 転職後は、都内商業施設のウェブサイトの販促用ページ企画と取材、ライティングを経験。 ニューヨーク移住後は、ウェブマーケティングを企業にて経験、ウェブデザインをフリーランスで行う。 現在は、日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」のオーナー兼デザイナーを務める。
https://lnk.bio/foxylilly
Instagram: @foxylilly

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