気持ちのいい挨拶をしましょうよ。

番長プロデューサーの世直しコラムVol.4
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木光

夜中に会社で作業をしていると、いつもは気にならないことも気になったりするんもんです。ふと気づくと、会社の壁に貼ってある標語みたいな紙の内容が気になりました。そこには「おはようございます。一日の始まりは挨拶から」と書いてありました。あほか?

こんなこと当たり前じゃねえか!人に言われないとわからないのか?わざわざ誰か言わなきゃいけないのか?こんな紙を貼ってるほうが馬鹿っぽく見えないか?なんでこんなもんがわざわざ印刷物になっているんだろう?これが標語になりえるんだろうか?

僕は親の躾が厳しかったし体育会系の生活を長年過ごしていたため、挨拶をしないというメンタリティーが全く理解できなくなっているのですが、果たしてそれが正しかったのか?ただの運動部馬鹿かもしれない。その標語を夜中に見つめていたら不安になってきました。こんなことが書かれて貼られているくらいだから何か社会的な問題をはらんでいるのだろうか。少し混乱しました。挨拶っていったいなんだろう?

辞書には

  • 挨拶(あいさつ)。礼儀として行う言葉や動作。 式典などで儀礼的に述べる言葉。
  • 挨拶は、禅宗で問答を交わして相手の悟りの深浅を試みることを「一挨一拶(いちあいいつさつ)」と言った。 ここから一般に問答や返答の言葉、手紙の往復などを挨拶と言うようになった。

と書いてあります。なるほど。

自分なりに解釈すると、挨拶は「僕は元気でここにいますよ。あなたの存在をいま確認させていただきました。今日もお互いになんらかの関係性を良い方向に保ちたいと思います。僕の存在も確認してください。敵意はありません」というところでしょうか。

まあ、一般的に挨拶は人間関係を円滑に保つときの必要な手続きみたいなものです。だから、もしも「挨拶」をしないと、しなかった相手との間に摩擦が生じてもおかしくない、という危険性があります。結構なリスク。 ついでに言うと、笑顔というか、感じのいい表情で挨拶をしなかった場合も挨拶をしない場合と同じように、無礼だったり、怒っていると思われたり自分と関わることを望んでいないと思われたりするので要注意ですね。

逆から眺めてみても、挨拶はしないよりしたほうが圧倒的に自分にとって有利な行為なんですね。経済合理性から考えてもそうです。「おはよう」の挨拶にコストはかかりません。カロリーが少々。だけど感じのいい挨拶を続けた場合、特にビジネスの現場では利益として返ってくる可能性は、しない人より絶対大きいと思うんです。費用対効果の大きい投資とも言えます。時間はかかりますが。

僕のつくっているテレビコマーシャルは、まさに挨拶です。「こんにちは~。今度発売になったものです。私を買うとあなたの生活が結構楽しくなると思いま~す。是非買って使ってみてくださ~い」というのがCMですね。企業からの挨拶。その企業の挨拶をいかに感じのいいものにするか。そこを苦心している。

というわけで、世捨て人になる覚悟がなければ挨拶は気持ち良くするべきだ。という結論。しかし、挨拶をできない人がいるから標語が貼られたりしている事実があります。これだけ大事なことなのになぜできないのか?

実は、僕にも意識的に挨拶をしない人っていうのが存在します。その人が嫌いだからです。ただそれだけ。関わりたくない。(僕の人間が小さい。ということに尽きますが。)ただ、その場合、その人に世話になることを一切否定しなきゃいけない。いくら困ってもその人の力を借りることはできません。その覚悟があってはじめて挨拶しない。という行動にでられる。その覚悟は相当なリスクを負っていると考えるべきでしょう。いつ、どこで何があるかわからないので怖いものです。

そういうこと以外で、挨拶が下手だなあと思う人、挨拶が基本的に苦手という人で僕の身の回りにいた数名に「なんで挨拶が苦手なの?」って聞いてみたら「自分に自信がないから」という答えが結構な比重で返ってきました。

挨拶して迷惑がられたらどうしよう。シカトされたらどうしよう。などの様々な妄想が頭の中でふくらんでしまうそうです。「私なんかに声をかけられたら、きっと迷惑だわ」なんて極端なマイナスの自意識が過剰になることがあるらしい。何か失敗したり悩んだりしているとき、存在を消してしまいたいくらい自信のもてないときがあるそうです。

馬鹿野郎。と思います。挨拶もできないんだったら他人と関わろうとするな。挨拶もできないくらい調子が悪いんなら家で寝てろ。どつぼ伝染させるんじゃねえ。なんでもいいから笑顔で挨拶しろ。と思います。たまにはそういう気分じゃない日もあるだろうからいいけど基本的には挨拶は大事にする。という姿勢でいろよ。もし、俺が嫌いで挨拶しないんだったら、当然それなりの覚悟もしろよ。とも思います。

自信がないならなおさら、笑顔で気持ち良く挨拶して自分のテンションを上げてください。どんな状況でも無理にでも笑顔をつくって「おはようございます」って言われたほうが、挨拶されないより百倍いいんだということをわかってほしいです。あなたが迎えた気持ちの悪い朝は他人には全く関係がないのです。

挨拶をとおして会話をするきっかけをつくる。それが人間関係を広げる要因になり、いろんなチャンスが生まれるでしょう。その連鎖から生まれる自信もあるでしょう。人から「認められる」という自信は大きいです。自分のために他人に気持ち良く挨拶してほしいです。自分から挨拶したからといって、相手の下に立つわけでもない。

相手が自分のことを嫌っているかもしれないから挨拶できない。じゃあますます嫌われてしまう。挨拶は人間関係がうまくいっているからするものではなく、うまくいっていないならなおさらするべきであるとも思う。関係を再構築するのに一番簡単な手段とも言えるでしょう。

僕は、会社の中で気持ちいい挨拶のできる部下は必ずえこひいきします。そいつが多少仕事ができなくても、気持ちのいい挨拶は幸せな気分にしてもらえるという力があります。こっちの気分が悪くても、部下の明るい挨拶で気分が晴れることもある。その人間のやる気や生命力を感じることができるからです。人間の「かわいげ」というのは案外、挨拶の仕方から生じるかもしれないですね。挨拶なしで他人とコミュニケーションが始まることは気持ちが悪く、不自然なことだからです。

気持ちのいい挨拶をしましょうね。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。


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