ニューノーマルと50代

Vol.177
CMプロデューサー
Hikaru Sakuragi
櫻木 光

コロナ禍の最初の頃にしきりに言われていたけど

ニューノーマルと言う言葉が最近は聞かなくなってきました。

色々言ったけど何だか理解できなかったんだろうか?

それとも当たり前すぎるほど定着したんだろうか?

 

そもそもニューノーマルと言う言葉はコロナ禍をきっかけにできた言葉じゃ

ないそうです。

 

最初に出てきたのは2007年から2008年、リーマンショックで起きた

金融危機と、露見した構造的問題を解決して立て直した後の世界経済の事を

ニューノーマル。と言ったのが最初だそうです。

 

つまり、今までやってた事が複雑化して飽和して、

何かのきっかけでその常識が立ち行かなくなり

構造的変化、改革をしないと生き残れなくなり、

新しいシステムとルールを作って運用し始めた状態をニューノーマルと言ったんですね。

 

今は、リーマンショックで使い始めた言葉を、コロナ禍とその後にできるだろう

新しい社会の話に当てはめた。と言うことになります。

 

特徴はあくまでも経済用語であると言うこと。

 

2020年からの話は、新型コロナウィルスが引き起こした世界的なパンデミックのせいで、

世界経済が停滞して、全世界で人間が生活様式すら変えなければいけなくなった。

これが意外と想像もつかないようなシビアな状況に陥ってしまったので、

今までのニューノーマルとはまた違ったニューノーマルを生むことになりましたね。

 

ネットで「ニューノーマルとは?」って検索すると、発生がビジネス用語なだけに

「働き方の変化」みたいな事がいっぱい出てきます。

 

新入社員の面接で、リモートの画面に向かって、

全員に「ニューノーマルって何だと思いますか?」って質問しても

あんまりちゃんとした答えは返ってきませんでした。働き方改革の話が多かったですね。

ただ1人だけ「今の大人がちゃんと仕事するようになる、ってことじゃないですか?」

と言った人がいました。ドキッとしました。

 

働き方改革、コンプライアンス、ハラスメント対策はコロナ禍よりちょっと前から

法律や制度が変わったし議論されていました。

それがコロナ禍で大きく加速することになったのはとってもいい事だと思います。

家にいてもリモートで済む話が多いことに気づいちゃった。

 

ただ、本当はこれをきっかけに働き方改革の促進をするのもいいけど、もっと先の

自分の生き方を見つめ直して、新しくする方が本当のニューノーマルなんじゃないかと

思うのです。そのきっかけとしては十分すぎるくらいの出来事です。

世界中、それこそ平等に死んでしまうかもしれないという苦境に立たされました。

本当に亡くなった人がたくさんいらっしゃいます。こんなに辛いことは初めてです。

 

しかも、現在、置かれた状況は、人間にとってはコロナだけが敵でもない。

 

大きい台風が来て、台風じゃなくても大雨が降って、地震が起きる。

あっという間に不確実で不安定で複雑で曖昧な環境になりました。

大袈裟ではなく生きるか死ぬかの間で生活しているのが今ですね。

 

日本に限っていうと、社会的にも少子化高齢化が進んでじいちゃんばあちゃんの

国になる。それが一概に悪いとは言えないかもしれないのですが。

ただ低金利の中では年金や退職金の制度も破綻しつつあって、

今生きているけどこの後、ジジババの集団は生きられるの?みたいな世の中になってきています。

こんなはずじゃなかったよね。

 

 

そんな中でのニューノーマル。

誰がいつ何をするべきか?という議論はこの30年くらい曖昧にされてきましたが

ついにそうもいかなくなってきたんじゃないかと思うのです。

 

国の政治に関しても、経済活動に関しても、人の生き方に関しても

ちゃんと考えて議論して、実行しないともうすぐこの世は終わります。

その危機感が、この国は外国に比べてずいぶん薄いような気がします。

嫌なことやめんどくさいことは聞きたくないし、考えたくもないし、やるのは億劫です。

 

ただそうやって若者たちの未来を先細ったドブ川のようにしてきた責任はあります。

特に僕の世代、ドーハ組と言われた今の50代にやらなければいけない事が多いと思うのです。

若い頃は新人類とよばれ、社会人になったらバブル社員。

理不尽な働き方をうさぎ跳びのようにやった世代。平成の敗戦処理投手。

自戒も含めてこの世代が一番ダメ。平和に育って豊かになっていく時に何も出来なかった世代。

あれダメこれダメと言われて大スターが出なかった世代。

 

この世代の今のキーワードは「保身」です。

思い切ったことをやって失敗するより黙ってた方が儲かると思って過ごしてきた。

そんな世代が今矢面に立ってトンチンカンなことばかりしているような気がする。

脳みその反射神経が鈍くなっている。

今は、あと10年、失敗せずにやり過ごしたら逃げ切れる。と思っている上司がチャンスで

チャレンジしなかったら若者たちはうんざりしてしまうでしょう。

 

今までの常識が通用しないような危機的な世の中になって、変化を受け入れざるを得なく

なっているのに、その時に実権を握っている50代が頑張って自分たちで変化に対応する

動きを見せないと本当にやばい。

 

だから、極論だとは思いますが、面白いから書くけど

ニューノーマルを実現したかったら、

「今の50代が」「今すぐに」

「危機的状況に対処する方法を、保身や忖度なしに実行する道筋をつける」

べきだと思うのです。

 

道筋をつけて決裁さえしてくれたら、もう既に自分たちの未来を憂いている若者たちが動くでしょう。

上がダメなんだからと若者たちは上の世代を無視してどんどん動き始めています。

 

政官民で既得権をガチガチに固めている現実を、今リーダーの50代が破壊して次の世代に渡す。

それができたらニューノーマルが完成すると思うんです。

摩擦や軋轢は生むかもしれませんが、何もやらなかったんだから最後にやれよ。と。

自分に問いかける。

そういう観点を、政治家は政策に掲げて選挙の議論をしてほしいし、マスコミも世の中も

要求するべきだと思います。自分たちの未来です。

 

そして、自分を含めて50代。

 

もう結果も見えただろうし、満足もしただろう。ダメなもんはダメだっただろ?

だから、これから引退するまで、若者たちの未来のためにできることを

本気でやり始めないか?と思うわけです。最後にもう一花いかがですか?と。

そうじゃないと何もしないまま死んでしまいますよ。役に立たなかった世代で終わる。

 

と。僕は自分に思う。

プロフィール
CMプロデューサー
櫻木 光
プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。

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