4年ぶりに袖を通した、大切な人から受け継いだ1枚

広島
コピーライター、エディター
Kyoko Kittaka
橘髙京子

先日、広島の三大祭りのひとつ「とうかさん大祭」が開催された。「とうかさん」とは、広島市中区三川町に位置する圓隆寺(えんりゅうじ)のことで、御神体の稲荷大明神を「いなり」ではなく、音読みで「とうか」と呼んだのが語源だそうだ。

 

圓隆寺は、1619年(元和5年)に創建された日蓮宗の寺院。大祭は翌年の1620年に始まったと言い伝えられており、約400年に渡って開催されている歴史あるお祭りだ。日程は、毎年6月の第一金曜日から3日間。出店もズラリと並び、圓隆寺を中心とした中央通り一帯は多くの人で賑わう。

この、とうかさん大祭にあわせて、2003年(平成15年)から毎年開催されているイベントが「ゆかたできん祭(さい)」。昨年は縮小開催だったが、今年は中央通りの歩行者天国が4年ぶりに復活! わたしは土・日に出かけてみたが「広島市民の大半が中央通りに集結しとるんじゃないん!?」と思うくらい、人々で溢れかえっていた。コロナ禍を乗り越え、サミットも無事に閉幕し、待ちに待った祭りの開催。「我慢に我慢を重ねて、やっと普通の日常が戻ってきたぞ!」といわんばかりの熱気だった。

とうかさんといえば「浴衣の着始めのお祭り」としても有名だ。わたしも4年ぶりに浴衣に袖を通してみた。メインの写真は母が着ていたもので、形見として引き取り大切に着ている。この浴衣は既製品ではなく、仕立てられたものだ。詳しいことは聞いていないのだが、母が自分で仕立てた可能性が高い。母は服飾の専門学校で洋裁を学び、卒業後は裁断士としてテーラーで働いていたそうだ。テーラーを辞めてからも、母は自分の洋裁部屋を自宅に持っていて、友人や知人に依頼された洋服を縫っていた。わたしが幼少の頃はよく服を作ってくれた。形見の浴衣を見るたびに、母が「和裁は専門じゃないけど、浴衣くらいは自分で縫えるよ」と言っていたのを思い出す。

下の写真の左は10年ほど前にデパートで購入したアパレルブランドのもの(写真は4年前に撮影)。白地が涼しげなのと、桜と牡丹の日本らしい柄が気に入っている。右の写真は、なんと、今回数年ぶりに新調したもの。紫(写真では青っぽく見えるが…)と緑という大胆な配色と大輪の花に、ひとめぼれだった。手持ちの帯とも色味が合っていて良い感じ! でも、一番格調高く見えるのは母の浴衣だな…。6月は母の誕生月ということもあり、なんだか、しみじみと思い出に浸りがちだが「とうかさん」という広島ならではの祭りが、これからも長く続けば良いなぁ。来年も大勢の人の幸せそうな笑顔が見られますように!

 

圓隆寺公式サイト http://www.toukasan.jp/omatsuri.html

ゆかたできん祭公式サイト https://www.chushinren.jp/event/yukata.html

プロフィール
コピーライター、エディター
橘髙京子
大学卒業後、広告代理店のコピーライターや出版社の編集者・ライターとして勤務。現在は映像業界のプロデューサー、フリーライターとして活動中。

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