無宗教で旅立っていきました

choco旅 vol.12
ライター
DECO KATO
加藤 デコ

「無宗教」の葬儀ってなに?

3月半ばに父が死んだ。

 父は、常々、「葬儀は、無宗教でこじんまりやってほしい」と話していた。そこで、医師から「もうすぐお別れがくると思います」と言われた私は、どうすればその希望をかなえることができるのか?とせっせと検索した。検索ワードは「家族葬」「無宗教」「葬儀」「小さい」「家族のみお別れ」…etc。

 結論から言うと、どんなに検索しても「コレだ!」というものは出てこない。葬儀社側は会場をおさえる必要からか、内容よりもまずは必要な日数で区別しているようなのだ。

・2日のプラン=通夜、翌日に葬儀・告別式、その後火葬。

・1日のプラン=告別式のみを行い、その後火葬。

ここに仏式、神式、キリスト教式など宗教を重ねていく。あるいは、故人の趣味をのっけた音楽葬、花をたくさん飾った祭壇などもある。

 「無宗教」というのは、積極的に打ち出すような性質の事柄ではない。「とりあえず、宗教色は出さないでね」ぐらいの意味だろう。加えて、父はさほどの趣味をもたない。

 どうするよ?ということで、検索して出てきた葬儀の写真、宗教色の薄い祭壇や装花の写真を見せて家族で相談した。「こういう祭壇、こういう葬儀にしたい」というイメージのすり合わせだ。遺影の大きさ、祭壇の花の色や分量、父に着せてもらう洋服、「出棺の時に花を入れ過ぎて個人が埋もれていたことがあって、かわいそうだった」という話も出た。お声をかけるのは身内のみとした。実際に、葬儀社の方と打ち合わせをする際、最も役に立ったのはこの時の会話だった。

故人をしのぶとは?

葬儀を出すとなると、遺影が必要だ。母と私は父の写真を探した。父は「歳はとっても写真は撮らない」と言って写真に写るのを嫌がっていたため、この作業は難航。出てくるのは、撮られ好き・お出かけ好きな母のスナップ写真ばかりである。父が孫を抱いて笑っている写真を発見したときには、母と二人で「あった!「よかった!」とバンザイをした。まだ亡くなってないのに…。いざという時のために、遺影向きの写真はきちんと保存をしておこう。

 さらに、押し入れ、天袋の奥に父の学生時代のアルバムが入っていた。高校時代からの写真がきちんと整理されたアルバム2冊、学校の卒業アルバム。本人が隠していたらしい(なんで??)。

私はこのアルバムを見た記憶がない。とにかく1枚1枚が驚きの連続である。とくに遠泳やカッター(漕艇)訓練の写真は興味深いものが多い。こんなことをやっていたのか、この人は…。そこで、お通夜や葬儀に参加してくださったみなさんにこのアルバムを見てもらおうということになった。写真を見ながら、父のこれまでについて思い出したりおしゃべりしたりできればいいのではないか。

 アルバムを発見したことで、身内でゆっくりと故人をしのぶという葬儀のコンセプトがはっきり見えた気がした。読経や礼拝の時間をそっちに使おう。いや、この時点でもまだ亡くなっていないのだが。

真夜中にもかかわらず

相談したその日の夜更け、「至急、病院へ来てください」と連絡があり、私は父の死を見届けることになった。22時30分だった。

 病院からは「清拭に90分ほどいただきます。その後、すぐに葬儀社さんにご遺体をお渡ししたいので連絡を取ってください」と言われた。あたりをつけておいた葬儀社に電話、「わかりました。ご遺体をお預かりして、そのあと葬儀の打ち合わせをしましょう」。どんどん流れが決まっていく。父と一緒に病院を出たのは真夜中0時、打ち合わせをして帰宅は2時か3時ごろになった。かなりグロッキーな時間である。が、事前の相談と葬儀社の柔軟な提案のおかげで、通夜も告別式もうまく過ぎていった。

最後の課題、散骨

残った課題は「散骨」だ。これも本人が強く希望していて、場所も決めていってくれた。しばらくは家にいてもらうにしても、そのうちみんなで出かけることになるだろう。かの地には温泉があり、温暖で、お魚がおいしいと聞く。私はその地に行ったことがないので、楽しみにしている。

プロフィール
ライター
加藤 デコ
目指せ、ソロワーク、ソロ旅、ソロ温泉。 そのために、もの書きとしてがんばって働きます。

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