北海道の春の恵み・行者ニンニク

北海道
フリーライター
youichi tsunoda
角田陽一

北海道の長い冬もようやく終盤。
根雪が解け去って大地が現れる。
いまだ冬枯れの大地も、やがて緑に覆われるのだろう。
いまだ桜は咲かない。

北海道に春の到来を告げるのは山菜だ。

 

北海道の春の味
行者ニンニク

 北海道で山菜といえば、まずは行者ニンニクだろう。アイヌ語ではプクサ、あるいはキトピロ。北海道弁ではアイヌ葱とも呼ばれ、その名の通りアイヌ民族にとっての大切な山菜だった。冬枯れの野に、独特の芳しい香気をまとわせつつ萌えて伸びる。香りが強いので、フラルイキナ(香りの強い草)の別名もある。そう、大切なのは香りなのだ。食欲をそそる香気にして行者ニンニクの欠点、飲み食いした後は「出来上がった関係」に達していなければお会いできないという問題をはらみつつも、香りが大切なのだ。行者ニンニクはユリ科の植物。ユリ科の植物はネギを含めてイヌやネコには毒草なのが多い。そして、人間にも毒草なのが多い。特にスイセンやスズラン、イヌサフランは芽生えの見た目が行者ニンニクそっくりなので、取り違えでの中毒騒ぎが毎年発生する。

誤りを避ける最良の手段は、匂いを嗅いでみること。独特のニンニク香がしなければ、行者ニンニクではない。つまり毒草の可能性があるので注意したい。

 行者ニンニク
オススメ調理法は?

摘んだ行者ニンニクで最良の調理法は、出汁で煮込んで醤油で味をつけた上での卵とじ。
あるいは北海道式に、ジンギスカンに入れる。羊肉の臭みを抑え香気を増し、相乗効果を堪能したい。

 だがわたくしのイチオシは「味噌漬け」「醤油漬け」だ。
生の葉を刻んで、そのまま味噌か醤油に漬ける。生葉が塩気を吸い込んで、しんなりしたら出来上がり。炊き立ての飯には最良の相棒となる。酒にも合う。

 だが朝のご飯につけあわせれば、その日の打ち合わせが台無しになりかねないので注意!

 春の恵み、行者ニンニク。

かつてのアイヌ民族は乾燥させて一年間保存したが、現在では「ファスナー付き袋」に生のまま入れて、そのまま冷凍しよう。
使う際はサッと熱湯に通して冷凍臭さを抜けば、採れたて、とはいかないまでも香気を一年間は堪能できる。

 

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行者ニンニクの味噌漬け。飯の共に最高!

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プロフィール
フリーライター
角田陽一
1974年、北海道生まれ。2014年よりフリーライター。アウトドアや北海道の歴史文化をモチーフに執筆中。著書に『図解アイヌ』(新紀元社 2018年)、執筆協力に『1時間でわかるアイヌの文化と歴史』(宝島社 2019年)など。

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