グラフィック2020.05.20

デザインの力で、プロジェクトの価値と魅力を伝えたい

札幌
シオリグラフィック 代表
Shiori Adachi
足立 詩織
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MiNiMuMSpace(ミニマムスペース)

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YURA YURA KOBOSHI(ユラユラ コボシ)

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NIWAKARA ブランド

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結婚式のペーパーアイテム

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香茶工房 びーつ茶

デザインの中に自分らしさをエッセンス的に盛り込んだ “個性”とアイデアで、企業や商品、プロジェクトの魅力を引き出して悩みを解決。新たな息を吹き込む事業発展のサポートをする「Shiori Graphic(シオリグラフィック)」。その代表兼アートディレクターであり、働く母親としての顔も持つ足立詩織(あだち しおり)さんに、自身の信条や取り組みについてお話を伺いました。

在学中にグラフィックデザインの奥深さを知り、この道を目指す

デザイン業界に進んだきっかけを教えてください。

子供の頃から、紙芝居を作ったり工作をするなど創作が好きでしたので、高校は札幌市立高等専門学校(現:札幌市立大学)のインダストリアル・デザイン学科視覚デザインコースに進学しました。在学中にデザイン環境や建築について学びましたが、グラフィックデザイナーの秋田寛(あきた かん)さんによるポスター作りのワークショップに参加したのが、大きな転機になったと思います。

講座を通じてグラフィックデザインの表現の面白さ、魅力、奥深さを知り、自分もこの道に進みたいという気持ちが強くなりました。そのため、卒業後は札幌のグラフィックデザイン事務所「寺島デザイン制作室」に就職しました。

そこでは、どのようなことを学んだのですか?

入社後すぐに、住宅雑誌のデザインやレイアウトを任されました。その頃はまだ20歳でしたので、家を購入することについてよく分かっていない部分もあったと思いますが、ライターの取材の仕方や原稿の書き方、カメラマンの撮影技術などを間近で拝見し、“紙面で見せる”ということを勉強しました。

会社には4年間勤務しましたが、振り返ってみると、「現場で経験しながら考え、覚えさせる」という姿勢で後押しをしてくれていたのだと思います。さまざまな仕事を通じて、知識や技術面でも成長できたと思います。

自身の事務所設立までの経緯を教えてください。

2009年の結婚を機に退社し、夫の仕事の都合で東京に移ることになりましたが、数カ月もしないうちに再び転勤になり、札幌に戻ることになりました。翌年に妊娠・出産をしましたが、その間もフリーで少しずつデザインの仕事はしており、この仕事を今後も続けたいという思いから、2011年に事務所を設立しました。

不安はありませんでしたか?

独立に関しては、就職をしたときからいずれはと考えていました。社長が楽しそうに働く様子を近くで見ていたので、不安よりも自分もこうなりたいという気持ちが大きかったですね。転勤や出産、子育てなどのタイミングが重なり、退職後すぐに会社を始めるというわけにはいきませんでしたが、仕事は続けたいと思っていましたので、私にとっては自然な流れでした。

デザインの力で笑顔を引き出し、クライアントの魅力を掘り起こす


シオリグラフィックがこれまで手掛けてきたデザイン

現在の事業内容について教えてください。

ブランディングデザインや広告デザイン、パッケージデザイン、会社案内やブランドのリーフレットなど、さまざまなデザインを手掛けています。また、10年ほど前からウエディングの仕事も始め、招待状や挙式までのワークブックも制作しています。自分の結婚式の招待状をデザインしたのがとても楽しくて、友人の分も作るようになったのがきっかけです。

その後、ウエディングプランナーの方と知り合い、オリジナルのペーパーアイテムを作りたいという新郎新婦からのお話をいただくようになり、2012年から本格的に取り組み始めました。デザインは、プランナーが新郎新婦から聞き取った内容をもとに、アイデアを膨らませて提案しています。

立体的なデザインも手掛けていらっしゃいますよね。

北海道にはさまざまな技術を持つ会社がいくつもありますが、その素晴らしさを伝える手段として、商品開発のお手伝いをしています。

例えば、道北の豊富町にある「北海道・豊富3D木工製作所」と一緒に取り組んだのが、3Dターニングマシンを使った新しい知育玩具「YURA YURA KOBOSHI(ユラユラ コボシ)」の創作です。これは、おきあがりこぼしやボウリングとしても遊べるおもちゃで、そのデザインを担当しました。また、札幌の紙器製造販売「モリタ株式会社」とは、スタイリッシュな紙箱収納「MiNiMuMSpace(ミニマムスペース)」を共同開発しました。モリタが得意とする折り線の溝加工技術を駆使して作ったVカットボックスは、シンプルでコンパクトな見た目ながら収納力が高く、ペン立てや化粧道具、アクセサリー入れなどに利用できます。

他にも、北海道大学で毎年6〜10月にかけて、社会科学や農業、医療、芸術など、さまざまな分野の最先端の授業を英語で行う「Hokkaidoサマー・インスティチュート」のパンフレットやポスターなどの広報ツールも制作しています。国内外の学外希望者も受講できるので、海外からの受講者にも興味を持ってもらえるよう、デザインのテーマを“折り紙”と決め、構内の掲示スポットを見て回りながら、目に付きやすい色、手に取りたくなるようなデザインを毎年考えています。

仕事を獲得するために大切にされていることは何ですか。

やりたいと思う仕事を得るためには、自分たちがいいと思うデザインを発信していかなくてはなりません。そのため、一人でも多くの方に作品を見ていただけるよう、毎年、「公益社団法人 日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)」のポスター展に出展したり、2013年には木工作家の妹とともに展覧会を開催するなど、自分たちの活動を知ってもらう取り組みを積極的に行っています。

相手に喜んでもらうことが制作の力になる

アートのアイデアやイメージはどのように生まれるのでしょうか。

休日に展示会や動物園を訪れたり、日常でもスーパーマーケットで商品パッケージのチェックをしています。

空間や景色、物を目にしたときに、それらが溶けたりゆがんだり、めくれたり、ねじれた状態になったらどうなるか、意外なもの同士を組み合わせたらどうなるかといったことを考えるのが癖になっています。そこから新たな表現や世界観が生まれたり、面白い発想につながることも多いですね。

どのようなところに、この仕事のやりがいを感じますか?

私らしさを盛り込んだ “デザインという個性”の提案が、お客さまの抱える問題解決に役立つことが喜びです。職人さんたちの持つ技術と組み合わせることで、新しいものを生み出すことも楽しいですし、私のデザインに対して「いいね」といったお言葉をいただくと、素直にうれしくなります。

結婚式の招待状などは、新郎新婦やご家族にとっては思い出の一つになるものですから、「大事に取っておくね」「飾ってもかわいい!」と言っていただけるとやりがいにつながります。そうした、喜びや笑顔を生み出すような作品をこれからも提案し続けたいですね。

デザイナー、経営者、子育てママのバランスは、どのように取っているのでしょう

独立後の8年間は自宅が事務所でしたし、朝から晩までスタッフも一緒にいて、子育てをしながら皆で制作に取り組んでいたという感じでしたね。それこそオン・オフはありませんでしたし、正直、バランスの取りようがなかったと思います(笑)。

でも、それはそれで一体感があって楽しかったですよ。子供たちはものづくりの現場に触れて育ったせいか、絵を描いたり工作をするのが好きで、私たちが仕事をしている横で何かしら作っていました。子供ならではの表現や発想が、刺激になることもありました。

想像以上の提案でクライアントを驚かせたり、新しい分野にも挑戦したい

仕事場と家庭を切り離した理由を教えてください。

下の子が小学校に入学したのを機に、自宅とは別に事務所を構えることにしました。資料や作品も増え、自宅ではさすがに手狭になりましたし、打ち合わせの場所も欲しいと思っていたので、このタイミングかなと思ったんです。移転してからは静かな空間でより集中できるようになり、以前に比べ、効率がアップしたと思います。

一緒に働くスタッフにはどのようなことを求めますか。

現在、私を含めて3人ですが、新しい分野にも挑戦したいので、それぞれ自分たちが得意なことを伸ばしたり増やしたり、いい表現方法を模索してほしいと思います。

今後の展望や将来のビジョンについて教えてください。

デザインや表現、アイデアで、クライアントの問題解決のお手伝いをしたいというのが、一貫した思いです。相手の想像以上のものを提案して驚かせたいですし、自分自身も新しい表現を見てみたいと思います。いい仕事をすると次の仕事につながりますので、そのいい連鎖をどんどん広げていきたいですね。

取材日:2020年4月7日 ライター:八幡 智子

シオリグラフィック

  • 代表者名:足立 詩織
  • 設立年月:2011年1月
  • 事業内容:ブランド開発(CI・VIの企画、制作)、広告企画、制作、グラフィックデザイン関連の商品開発など
  • 所在地:〒064-0825 札幌市中央区北5条西28丁目3-3 INFINITY403号
  • URL:https://www.shiori-g.com/
  • お問い合わせ先:上記の「contact」まで

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