【第39回東京国際映画祭】映画『妖怪、化物をひろう』舞台挨拶&質疑応答レポート
2026年10月28日(水)ヒューリックホール東京にて、東京国際映画祭コンペティション部門作品『妖怪、化物をひろう』のワールド・プレミア舞台挨拶が開催されました。
本作は、12年前の大嵐で壊滅的なダメージを受けた小さな町を舞台に、団子を売りながら独り暮らしをしている老婦人のタエが、人間ではない異形の生き物の赤ん坊「ハル」を見つけたことをきっかけにはじまるヒューマンドラマ。1990年代のロシアで実際に起こった出来事から着想を得たという本作は、すべて台湾の金門島で撮影されています。
一見ホラー作品のようですが、厳しい土地で日々生活を粛々と営むさまざまな立場の人々が、異形の赤ん坊「ハル」を介して、心の奥底にある深い愛情を思い起こしながら立ち上がる、人間の再生の物語を描いています。
舞台挨拶には、余貴美子さん、オダギリジョーさん、白石隼也さん、チェン・シュウテインさん、ウエン・ユウミンさん、プロデューサーのチュウ・ヨウニンさん、同じくプロデューサーの小坂史子さん、池田暁監督が登壇しました。

人間でもなく、血のつながりもなく、種族も違う生き物を愛情をもって育てるという、人間の愛情に対する懐の深さに興味を持ったことからこの映画が始まったと話す池田監督。
架空の場所、架空の時代を舞台にした脚本を書き上げたとき、小坂プロデューサーが台湾の金門島をロケ地として推薦したそう。
セットは組まず、現地にある建物をそのまま撮影に使ったとのことで、「皆さんが金門島に行かれたら映画の世界そのままの景色が見られます」と話しました。

主演の老婦人・タエ役を演じた余貴美子さんは、赤ん坊の「ハル」ちゃんを腕に抱いて登場。現場でも「ハル」ちゃんは、余さんがやきもちを焼くほどスタッフが丁寧に扱っていたそう。
余さんによると、「ハル」ちゃんは頭部が6個、体も6体、さなぎや脱皮状態など形態が違う個体を含めると無数に用意されており、笑ったり泣いたりする表情も、スタッフ5人がかりで動かしていたとのこと。柳役の白石隼也さんも「ハル」ちゃんと一緒のシーンでは気持ちを入れて動かしてくれたとのことで、今では「ハル」ちゃんが本当にいてもおかしくないと思うほどかわいいと笑顔で語りました。

八百屋の柳役の白石隼也さんは、「この映画の状況はどの地域やコミュニティでも起こりうる。退屈な日常をいかに面白く生きるかを考え、人間らしく生きるためには”愛でる”存在を見つけることが重要だとこの映画を観て思った」と述べました。

本作のプロデューサーにも名を連ねる、警官の小宮役・オダギリジョーさんは、「2020年代の日本にまさかこういうタイプの作品を撮る監督がいたとは!」と驚き、小津安二郎作品とジブリ作品を併せたような映像美が池田監督作品の魅力であると語りました。

質疑応答では、「余貴美子さんとオダギリジョーさんが2人で向かい合って食べていたものは何か?」という質問には、余さんが間髪入れずに「牡蠣の入ったお蕎麦!」と答え、オダギリさんが「金門島はうどんも有名ですよね?」と答えると、池田監督が「ラーメンです。」と返して笑いを誘う場面も。
余さんは撮影現場の金門島で出るお弁当が楽しみだったと話し、鶏の頭や北京ダックが出てきたことを嬉しそうに思い出していました。
オダギリさんは、「ちょっとこの後、監督と飲みながら聞いてみたいんですけど。」と前置きしながら、「古い日本映画は抑えた表現を好む。池田監督も、観客に答えを渡すことが全てではなく、表情やセリフのトーンで感情を説明して欲しくなかったのではないか。説明をするような芝居は簡単ですが、そこをいかにゼロに近づけるか。それが池田監督作品の一番の魅力だと思います。」と自身の演技への向き合い方を織り交ぜつつ語ってくださいました。
映画『妖怪、化物をひろう』は2026年12月25日(金)より全国順次公開予定です。
取材日:2026年10月28日 ライターこくほうどう
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『妖怪、化物をひろう』
2026年12月25日(金)シネマート新宿、池袋シネマ・ロサほか全国公開
出演:余貴美子 ハル オダギリジョー
リウ・グァンティン トー・ツォンホワ
きたろう 片桐はいり 白石隼也 佐藤菫
監督・脚本:池田暁
製作総指揮:小坂史子 瞿友寧 オダギリジョー 饒紫娟
配給:ハーク 配給協力:フリック
公式サイト:https://www.hark3.com/youkai/
ストーリー
12年前の暴風雨で深い傷を負った小さな町。焼き団子を売りながら独り暮らしをする老婦人タエは、ある日、雑木林で人間とは思えない異形の赤ん坊を見つける。町の人々がその存在を気味悪がるなか、タエは赤ん坊を「ハル」と名付け、大切に育てようとする。しかし、ハルの存在を恐れる人々によって家を追われ、タエはハルを抱えて町をさまようことに。かつての知人たちとの再会を重ねるなかで、タエは失っていた感情を少しずつ取り戻していく。傷ついた土地で懸命に生きる人々と、種族を超えた愛情を描くヒューマンドラマ。






