金沢の9カ寺をアートで巡る「oterart金澤」 今年のテーマは「告白」
「oterart金澤(オテラート金澤)2026」が、今年も市内9カ寺で開催された。
oterart金澤は、寺を会場に一般公募のアート作品を展示する芸術祭で、2010年の初開催以降、今年で16年目となる。
oterart金澤の特筆すべき点は、寺という普段なかなか足を踏み入れない空間に作品が飾られることだけではない。
一般公募だからこそ、工芸や現代アート、デザインなどの作家が参加するほか、美大生や主婦、会社員など、ホワイトキューブではお目にかかれない才能に出会えること。
毎年テーマに沿って作品を募集するのだが、テーマに対する個々の捉え方・表現の仕方・アウトプットの幅が果てしなく広い。
同じテーマだからこそ、その違いが異様なまでに目立ち、一辺倒な作品群にならないこと。
そして、私のように仏教に対する知識のない人間からすると、会場は「全部お寺」となるのだが、実はそれぞれのお寺の「宗派」はバラバラで、曹洞宗・日蓮宗・浄土真宗のご住職が力を合わせて運営していること。
oterart金澤実行委員会によると、多宗派で協力し合い、ひとつの行事を行うことは珍しいらしく、なんだかとても「世界平和」な感じがして、そこもグッとくるポイントなのだ。
今年は「告白」をテーマに72組が作品を展示

今年のoterart金澤は前期(2026年9月19日~9月27日)5カ寺と、後期(2026年9月26日~10月4日)4カ寺で、「告白」をテーマに展示を行った。
どの作家さんの作品も、本当に素晴らしく、告白の意味も三者三様で面白かった。
個人的に気になった作品を、いくつか紹介したい。
「Scavenger Ruins」小嶋美佐紀/天徳院

前期日程・天徳院の山門前に置かれたその作品は、よく見ると大きな猫の形に見える。
しかし、猫の顔だったものや破片が辺りに散らばっている。
崩れた背中をのぞき込むと、中には器のようなものが見えた。

キャプションによると、「トラウマにおける自己開示としての『告白』を作品にした」とのこと。「隠しておきたい汚点や秘密を内側に閉じ込めるストレス、その内圧に耐え切れず外側が崩れ、その傷から内側がのぞける様を陶芸技法を用いて形にした」のだという。
そんな崩れかけた存在を見つめるのは、周りに置かれた陶芸でできた何匹もの猫たち。誰しもが抱える内面世界。脆くも強いメッセージを感じた。
「こくはく」ておえむく/棟岳寺

Pペーパーという特殊な紙に描かれた動物や虫、海の生き物。
子どもも大人も手に取って、ボードに自由に貼り付け遊べるという、イラストレーター・ておえむくさんのポップな作品だ。
ておえむくさんによると、描いた動物の中には、人間によって絶滅に追いやられたもの、そして人間によって絶滅を免れたものもいるという。
だけど、人間の言葉はしゃべれない。何を思っていたのか、何を言いたかったのか、考えてみてほしいという。
そして、同じ部屋の隅には空気感の違う黒い物体がいる。その名も、人間。

人間は言葉を話せる。告白ができる。告白を受け止めることができる。
しかし、この黒い人間の背中には、もう一つの顔がある。その裏の顔には、どんな感情が浮かんでいるんだろう。
「君をつぶした長靴」沖野萌/崇禅寺

小学生の頃にカタツムリを踏んでしまったことから、カタツムリが苦手になった作者。
踏まれたカタツムリの方がかわいそうなのに、一方的に嫌う理不尽なあの頃の自分を表現した作品だという。
カタツムリを踏んだ長靴と、カタツムリなのか人間なのか定かではない姿を白信楽で制作した。
カタツムリの背中は卵の殻でできているそう。水玉の長靴と優しい虹色のようなカタツムリの色合い。
そこに、命を潰してしまったという罪悪感や恐れが入り混じって、複雑な気持ちになった。
「The Nighthawk Star」かたつむり工房/聞善寺

漆塗りのぴかぴかの床に、苔玉や石が置かれた作品は、まるで宇宙のよう。
作者のかたつむり工房さんは長野の戸隠にある鏡池が好きで、よく通っているそう。鏡池の水面に夜の星空が映り込む様にも、インスピレーションを受けたと話してくれた。

The Nighthawk Starは直訳すると、よだかの星。宮沢賢治の小説「よだかの星」で、よだかが力を振り絞って飛び回ったのは、こんな夜空だったのかもしれない。
「等身大の告白」BeBe/聞善寺

一見すると、作家さんの実寸大の自画像。
しかし、よくよく見ると…んんん?

なんと、髪の毛も顔もパーツも、服の模様まで、文字でできている。

自分とはどういう人間なのか、しょうもないことや炎上しそうな言葉や思いが、自画像を形作っている。
つまり、その告白こそ、作家さんの精神や肉体を存在させている核なのかもしれない。人には言えない本音で、できている。それって、実はみんなそうなのかもね。と思わせる作品。
以上、本当は72組の作家さんの作品をすべて紹介したいくらいだが、「告白」という言葉への作家さん一人ひとりのアンサーがいかに多彩だったか、少しでも伝わればうれしい。
今年のoterart金澤は終了したが、来年春のゴールデンウィークあたりには、今回出展された作品から選ばれた「oterart大賞」を中心に構成する「選抜展」を実施する予定だという。
気になった方は、ぜひ来年の「oterart金澤」もチェックしてほしい。
※oterart金澤 過去の開催記事もぜひ。
オテラート金澤2025「三千大千世界」 9寺院で作家が魅せる無限の表現
金沢の8寺院を会場にアート展「オテラート金澤2024 夢か現か」
寺院×アートな芸術祭!「oterart(オテラート)金澤」で地獄めぐり
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oterart金澤2026-告白-
会期
前期2026年9月19日(土)~27日(日)
後期2026年9月26日(土)~10月4日(日)
ー前期日程ー
[小立野地区]
天徳院 -曹洞宗- 金沢市小立野4-4-4
冨樫行慶|僧侶
草場萠|金沢美術工芸大学 油画専攻
作田晴雪|作家
小嶋美佐紀|金沢美術工芸大学 陶磁専攻
黒田ゆらら|金沢美術工芸大学 工芸科
山城卓也|写真
森本梓円|金沢美術工芸大学
宮下珊瑚|マルチアーティスト
さきやま|芸宿
棟岳寺 -曹洞宗- 金沢市石引2-4-6
土用下龍巳|陶器置物&ZINE作家
堀誠一郎|折紙&ライトアップアーティスト
ておえむく|イラストレーター・クリエイター
ハマノイエ
中林千莉|作家
住田薫|茶湯活動家
[寺町地区]
興徳寺 -日蓮宗- 金沢市寺町5-12-16
紅乃谷安那(志門加乃紅)|アーティスト
紀逢|書道家
松村啓未|日本画家
コネクトスペースRYO N’ yun|アート占い師/ウェルネスナビゲーター
村上正幸|写真工作家
seeds|ビーズアクセサリー作家
徳本愛|デザイナー
雅山|ハンドメイド作家
長久寺 -曹洞宗- 金沢市寺町5-2-20
つな|イラストレーター
ムニュ|普通のひと
山口実華|作家
水脇梨菜
髙明輝|画家
yuuhi|作家(絵と詩)
水上聡太|作家
吉田一誠|作家
齊藤愛花音|金沢学院大学
常松寺 -曹洞宗- 金沢市野町1-3-8
SWAT|作家
三好優苺那|金沢学院大学 芸術学部
haru|空間アート作家
大橋りほ|オルタナティブ仏画
利光由行|金沢学院大学 芸術学部
Tomo Kitagawa|会社員
ー後期日程ー
[浅野川地区]
聞善寺 -浄土真宗- 金沢市瓢箪町5-33
かたつむり工房|学校職員
BeBe|イラスト作家
アム|コレクティブスペース
玲|画家
中西晶子|石川県愛瓢会・全日本愛瓢会会員
金澤TangleZ|ゼンタングルⓇ認定講師
羽姫|作家
大津あくり|金沢美術工芸大学 彫刻 修士
小坂素石|書家
Merry♡|Merry Lounge
崇禅寺 -曹洞宗- 金沢市瓢箪町5-43
沖野萌|金沢美術工芸大学 彫刻専攻
bonaparton|お絵描き屋 イラスト作家
木下富雄|漆芸家
竹内翔馬|塗師屋
Yoshimi Tanaka|陶芸家
なつ
正水瞳|糸かけ師 点描曼荼羅作家
西谷駆琉
[東山地区]
浄光寺 -浄土真宗- 金沢市森山2-19-32
灘ふい|線のひと 作家
杉下ゆうこ|糸の絵 作家
むこだあゆみ|主婦
杉下ゆうこ|糸の絵
東陽菜|金沢学院大学文学部
齊藤美知代|木彫刻
下橋晶|仏像画アーティスト
marie|会社員
カガユウジ|コラージュアート作家
妙圓寺 -日蓮宗- 金沢市山の上町1−36
北口辰也|アーティスト
ノリトマリ|フォトグラファー/表現作家
村上弘幸|何でも写真家
セラミミック|陶制作
下橋翔|画家
Sgatch|クラッチペダル存続委員会 会長
marinco|かむかむきゃっと
Vo.TAKUO|SIVIL
取材協力:oterart金澤 実行委員会







