社会的距離はとっても心の距離は狭めて、ミュージカルブームを止めるな

東京
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター
これだから演劇鑑賞はやめられない
阪 清和

 日本ではブームが到来したと言われるほど、ミュージカル人気が沸騰している。しかしそれを直撃したのが新型コロナウイルスである。感染防止の観点から「ミス・サイゴン」や「エリザベート」なども軒並み中止された。

 問題はソーシャルディスタンシング(社会的距離)と呼ばれる感染防止のための戦略だ。都市封鎖が解除された後もある程度の期間守ることを求められると考えられるため、前後左右の座席と数十cmしか離れていない劇場という場所が「開放」されるのはかなり後になるだろう。

 「キャッツ」で知られる世界的プロデューサー、キャメロン・マッキントッシュも5月に入り「ウエストエンドやブロードウェイで来年初めまでに公演が行える可能性は低い」と発言。夏の終わりごろには再開できると考えていた世界中の演劇関係者に衝撃を与えた。

 しかし、上演できるかどうか分からなくても稽古の段取りは必要だし、来年以降の公演の準備や、数年後以降の上演権の獲得交渉なども水面下で続いている。何より俳優たちは、「資本」である自分たちの身体能力を維持するため体やのどのケアに余念がない。また特にきずなが強いとされるミュージカル俳優同士のつながりも維持。あの「レ・ミゼラブル」の代表的な楽曲をリモートでつないで公開するなどし、絶賛を浴びている。NHK連続テレビ小説「エール」には、山崎育三郎や吉原光夫、古川雄大、柿澤勇人ら多くのミュージカル俳優が出演してドラマを盛り上げている。

 私たち観客もそんな俳優たちの音楽にかける熱い気持ちに思いを馳せ、せっかくのミュージカルブームの灯を燃やし続けなければ。社会的な距離はとっても、心の距離だけは日々狭めていこう。

プロフィール
エンタメ批評家・インタビュアー・ライター
阪 清和
共同通信社で記者だった30年のうち20年は文化部でエンタメ分野を幅広く担当。2014年にエンタメ批評家として独立し、ウェブ・雑誌・パンフレット・ガイドブック・広告媒体などで映画・演劇・ドラマ・音楽・漫画・アートに関する批評・インタビュー・ニュース・コラムなどを幅広く執筆中です。パンフ編集やイベント司会も。今春以降は全国の新聞で最新流行を追う記事を展開。活動拠点は渋谷。ほぼ毎日更新のブログはこちら(http://blog.livedoor.jp/andyhouse777/)

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