映像2018.06.20

「どうやったらできるのか」と考えるプラス思考でお客様の願いを形に。地元・福井の頼れるカメラマンを目指して

福井
カメラマン 田中康夫 氏
Profile
1979年生まれ。福井県出身。金沢のデザイン専門学校を卒業後、地元・福井に戻り、印刷会社の制作部門でTVCMのCGクリエイター、ブライダル業界のムービーカメラマンを経て、現在はブライダルのスチールカメラマンとして売れっ子に。
地方で輝くクリエイターを紹介する「LOVE LOCAL」17回目となる今回は、福井を拠点に、ブライダル・カメラマンとして活躍する田中康夫さんにインタビュー。高校時代に一眼レフのカメラに魅せられるも、CGを学ぶためにデザインの専門学校へ。CGクリエイターとしてクリエイター道をスタートしました。その後、あるキッカケでカメラマンとなった田中さん。ビデオ撮影はもちろん、編集、ディレクション、ウェブデザインなどなんでもこなすマルチクリエイターとしての素顔に迫りました!

人見知りゆえにカメラマンは向いていないと思っていたが……

カメラとの出会いはどのようなものでしたか?

中学生の時に親のカメラが壊れたことで、カメラを新調しにカメラ屋へ行ったのが最初の出会いです。それから、人見知りだったことのもあり、人物以外のいろんなものを撮っていました。そして高校の修学旅行で同行していたプロのカメラマンの使うカメラに惹きつけられたのを覚えています。

では、それからカメラマンの道へ一直線に進まれたのでしょうか?

いえ、そうでもなくて。ドラマを撮りたい、アニメを作りたいと思いデザインの専門学校に入りました。そこでCGを学んでいたのですが、ブライダルのビデオ撮影のアルバイトがキッカケで、ムービーを撮るようになりました。ブライダルのビデオ撮影は、記録的に撮影するもので、黙々とカメラを回すだけだったので、自分には向いていると思いました。スチールだと被写体となる結婚するお二人に積極的に声をかけて演出しなければいけないので、自分には無理だな……と初めは思っていて。しかしムービーの仕事をする中で「写真も撮れる?」という依頼をいただき、写真もやるようになりました。

ブライダルの写真を撮る中で、カメラマンとして鍛えられたということでしょうか?

そうですね。実際に、写真を撮るようになって鍛えられました。ブライダルなので、お二人のラブラブな写真を撮らないといけないわけですが、「チューしてみてくださ~い」とか盛り上げられるようにもなりました。また、自分はもともとCGをやっていたこともあって、立体的にものを見る感覚を持っていたことも写真を撮る上で役に立っていると思います。ブライダルの写真を撮りながら、自分なりの美学も磨かれてきて、他にはない演出の写真に喜んでいただけるお客様が多く、気づいた時には、写真の仕事が定着していました。

フリーランスのカメラマンだからこそ、相手の気持ちや雰囲気を読み取って撮影

ブライダル撮影における、田中さんのこだわりとは何ですか?

写真を撮る前にどういう演出をするか、お客様と話して進めていくのですが、自分のほうから提案しすぎない方ように気をつけています。結果的に思った通りになることもありますが、要求や提案を敢えていろいろせずにお客様と話しながら、お二人が願っていることを形にしようと考えています。例えば、「集合写真を望まれていないのではないか」と思った場合、違う写真を提案します。結婚されるお二人にとって一生に一度のブライダル写真はクレームに発展することも多く、お二人がやりたいと思うことを第一優先に、撮るべき写真はきちんと撮るというバランスが大事ですね。

どのようにバランスをとっていらっしゃるのですか?

ブライダル撮影は、カメラマンのオリジナリティだけではだめで、マニュアルがきちんと頭に入っていないといけません。最低限これだけはおさえておかなければいけないという基本の上に、オリジナリティを追加します。このオリジナリティが腕の見せ所ですが、自分はお二人と話しながら直感を働かせます。実際に、あまり話したくないというお客様もいますので、その場合は無理やり話してもらうのではなく、雰囲気などをくみ取って直感で演出を決めていきます。

田中さんのブライダル写真撮影の強みは何ですか?

常識にとらわれない提案を心がけています。普通は、ここまではしないだろうということもしますよ。式場のウェディング・プランナーでは縛りがあって提案できないことでも、自分はフリーランスの立場なので、自由がききますから。例えば、グアムに来て撮影してほしいというお客様には、要望に応えるため現地にも行きました。私は、基本的にプラス思考なので、まず、お客様が望むことをすべてやるにはどうしたらよいかを考え、そのうえで自分も楽しんで行動します。物事に対して壁を作らないようにしています。フリーランスの強みでもあると思いますが、判断するのは自分ですからお客様のご要望に、「これはちょっと相談します」ということはありません。

直感やご自身の判断で失敗されたことは?

ブライダルは失敗が許されない緊張した現場です。一度だけ、花火の演出の後にお二人の入場という場面で、思い出の花火が撮れなかったことがありました。お二人には、申し訳ない思いでいっぱいでした。その時はCGで花火を合成しました。感謝すべきことに大きなクレームには発展はしなかったのですが、進行表にあったのをすっかり忘れてしまったのです。それからは2度とこのような失敗をしないよう進行表を頭にしっかり入れるようにしています。

地元の福井でクリエイターとしての幅をもっと広げようと、再起

今後、カメラマンとしてどのようにお仕事をされていきたいですか?

基本的には何でもやります。現在も、フリーペーパーや雑誌の撮影も依頼があればやっています。 今はウェブ通販サイトの撮影の仕事をしていて、企業に週3日のペースで通っています。完全にフリーランスの仕事と、企業に属して定期的にいただく仕事の両方をしているわけですが、その働き方が自分には理想的だと思っています。定期的な仕事があることで心に余裕ができフリーランスの仕事にも前向きに臨めます。私は毎日同じ生活を送れないタイプなので、このように2つの仕事を両立している方が個人的には良いと思います。

これまで福井でずっとお仕事をされてきましたが、今後も福井でお仕事を続けていかれるのでしょうか?都会に行こうと思われたことは?

福井出身で土地勘もあるので、このまま福井でやっていきたいと思っています。福井は道がよくて運転もしやすいですし、生活環境的に安全だと思います。
実は2年前に活動拠点を東京に移そうとしたことがありました。実際に、仕事の面接にも行ってみましたが、自分の技術をフルに求められていないことがわかりました。自分の求める対価を得られないことがわかったので、やっぱり福井でやろうという結論になりました。もともと福井が拠点ですし、福井でお客様を増やすのもよいかな、と福井で再起したところ仕事が軌道に乗ってきました。
都会だと刺激も多いし、面白いことも多いとは思いますが、毎日仕事をする場所として、生活をする場所として福井が良いと思っています。

福井ではどのように仕事のオファーがきたのですか?

私が、専門学校を卒業した2000年当時、福井にCGクリエイターが少なかったこともあり、仕事はもらいやすかったですし、やりやすかったと思います。その時から仕事で知り合った人たちを大事にして軌道に乗せてきた感じです。また、ブライダル・カメラマン業界に、オリジナリティのある提案ができる人がいなかったこともあって重宝されました。カメラマンの仕事を始めた時、式場の代表の方に気に入ってもらい、自分が独立したら一緒にやってほしいと言われていたのですが、今ではそれが実現して、式場契約をもらっています。 また、これまで婚活パーティーを主催したこともありましたが、その時に知り合ったお客様からブライダルの写真を依頼されたこともあります。

福井でクリエイターとしてやっていきたいという人へ向けてのアドバイスはありますか?

人間関係がなにより大事だと思います。 福井の人との人脈を作ることが大きいかと。例えば、ブライダル協会に入るなど、ネットワークは大事です。私はカメラマン同士のつながりも大事にしています。人脈といいましたが、福井の人は見栄を張る人が多いので「自分はこういう人を知ってるよ」という話題によくなるんです。知り合いの幅の広さを自慢したいというか。なので、いろんなイベントに顔を出していたり、仕事をした人とのつながりを大事にしたりしていると、自分の名前が出てきて紹介されて仕事につながっていきます。紹介が紹介を産むので、やはり人とのネットワークが大切だと思います。

目指すは身近で頼りになるクリエイター

今後はどのようなクリエイターになっていきたいですか?

若い時は夢をもってトップクリエイターになりたいとの思いがありましたが、今は困ったときに安心感をもてるカメラマン、難しい状況になったときに頼りにされるカメラマンでありたいと思っています。このギャラでここまではしてもらえないかも……となったときに田中さんにまず相談してみようと、無理な状況だったとしても撮影してくれるのは田中さんしかないよね、といった具合に自分の名前を思いだしてもらいたいですね。そのためにも壁を作らないようにしています。自分が特別なことをしているとは思わないようにしています。

取材日:2018年4月24日 ライター:中野宏美

田中康夫(たなか やすお)・カメラマン

1979年生まれ。福井県出身。金沢のデザイン専門学校を卒業後、地元・福井に戻り、印刷会社の制作部門でTVCMのCGクリエイター、学生時代のアルバイトから続けていたブライダル業界のムービーカメラマンを経て、スチールカメラマンとしても活躍するようになる。現在ではブライダルのスチールカメラマンとして売れっ子に。提案力とフットワークの軽さを武器に、撮影+αのできるカメラマンとして幅を広げ日々邁進中。

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