映像2024.02.20

シナリオって何ですか?

東京
映像ディレクター
秘密のチュートリアル!
野辺五月

今日はちょっとだけシナリオの仕事について書いてみようと思います。
とはいえ、全ジャンルのシナリオを経験したわけではないので、ざっくり聞いた話と経験した話とを混ぜて、例えばこんな感じだよと言ったところを大雑把にまとめてみます。

先月ドラマの件で哀しいニュースがあり、「シナリオ」とは何かを聞かれる機会が増えました。
シナリオは一般的には台本ですが、英単語自体をみてみると「筋書,予想事態,計画」などを示します。テレビ・映画・ドラマ・CM・企業VP他……実写・アニメ問わず、映像にはシナリオがつきものです。中でも絶対シナリオが必要とされる場面といえば、やはりドラマ・映画でしょう。他にもラジオ・イベントなども番組台本・進行台本・司会台本が必要となります。シナリオライターが書くものとディレクターや演者が書くもので分かれますが、最低限はあります。
映像の中でいうと、企業VPやCMにはテキストでの粗筋・メモ、コンテを台本として進める場合もあります。
専門職が求められるのは主に物語がメインとなるコンテンツです。ただ、制作の過程と予算の都合上、最近では監督=脚本とするケースも増えています。特に小規模の映画はその傾向が濃く、また脚本家と組んでの場合も、学生時代やインディーズからタッグを組んでいたというケースが割と多く見受けられます。
もちろん活躍している脚本家と一緒に、プロデューサー・監督が本を作るケースもあります。が、あまり知られていないようですが、脚本家は基本的にフリーランスです。協会や団体に所属していても、それはあくまで互助的なものであったり、保険の関係であったりすることも多く……また最近では、プロダクション所属の人もいますが、預かりが多く……要するに所属場所から賃金を得ながら働くというケースはあまりきいたことがありません。(内部で脚本チームを雇っている会社も0ではありませんが)

仕事への入り方は別のポジションからのスライドオファーなどもありますが、基本的に賞をとった後に声が掛かったり、関係者と知り合う中で作品を見せて仕事に~という話が多いようです。
なおドラマ以外の番組コンテンツについていえば、知ってる限りですと、番組プロデューサーがチェックし、ディレクター以下が書いて作ったたたきを元にもんでいくパターンが多いように思います。報道や一部クイズは、元ネタや台本を作ることに特化した会社もありますが、最終的にはプロデューサーチェックが大きく影響しており、自主的に企画を上げていくのは「シナリオ」を任されている人たちではありません。ナレーション原稿も時にナレーターが、時にディレクターが任されるので、わざわざシナリオライターを立てるケースも減っていると思います。

みんなの目が行くのはドラマのシナリオライターだと思いますが、ドラマは話数があるので何人かが動いています。大筋を決める人が立てられている場合もあれば、監督やプロデューサーが大枠用意していて、振り分けられるターンも多いです。
ちなみにゲームの場合も内部・外部両方のケースがあり、かつ大体は複数人での作業です。全体を纏める人間が立つ場合もあれば、管理する専用のディレクターが立つ場合もあります。ジャンルにもよります。ライティングが多くなるストーリーベースのものに大切なものと、名前や道具などのネーミングも含めた周辺の言葉周りを任されている場合もあります。
少しずつ齧れば齧るほど、一言で「これがシナリオライターの仕事だ」と言い切れないことが分かると思います。

ちなみに、コロナ禍前に歴の長いシナリオライターさん(コンクール対策の講座なども持っている)にこんなことを聞きました。ドラマを始め、シナリオライターへの成り方は、基本オリジナル作品である(コンクール)にもかかわらず、実際の現場は原作ものが多く、その二つで必要とされる能力はかなり違うため、大変だ、と。
勿論基礎は基礎であるので、コンクールを通り、仕事に入ればある程度形にする能力はあるわけです。しかし、原作ものをどう炒めるかの話は、特に教わるでもなく、工夫しながら、あるいはプロデューサーや先輩に聞きながら学んでいくしかないことも多いのだそうです。ケースバイケースでしょうが……「新人が即オリジナル作品を持つことが少ない(ほぼない)」という状況やその理由は何となく見えます。

更に、日本の場合は割と古くから大きく脚色することで、映像化に成功してきた……というようなケースも多くあり、昔から映像優先マター(原作とは別物というベース)で動いてきたという状況も察せられはします。
同時にもちろん漫画も小説もそのまま映像は物理的に(予算理由はもちろん、形式の問題で)不可能なでもあります。そもそもシナリオとは設計書に近い部分もあるため「悲しかった」というようなことは書きません。せいぜい「俯いて涙を流す」など動作になります。また、演出は監督の仕事であり、演技は俳優の仕事なので、現場や状況によっては「書き過ぎない」ことが求められたりもします。
重ねて言えば、脚色と脚本……これは、明確にハリウッドでは区別されていますが、演出による脚色はとにかく、シナリオによっての脚色は、シナリオライターに投げられている場合もあります。(※それにせよ、最終ジャッジは演出家や監督・プロデューサーですが)

近年配信が世界にむけるにいたり、ハリウッドスタイルなども増えてきたといわれますが、日本のドラマ制作でのシナリオにも「型」があり、制約も違い、そのままハリウッド式を持ち込めるかというとそういうことでもありません。
長々と書きましたが、要するに「成り方」と職業自体の成り立ちから考えてもなかなかに、今シナリオライターという仕事は、微妙にねじれた構造があります。

中には『のぼうの城』の作者のように、シナリオとしてかいて「忍ぶの城」(のぼうの原案シナリオ)で城戸賞をとり、映像化するために先に小説をしてはどうかという話をプロデューサーがもちかけて小説にし、第139回直木賞にノミネート、09年本屋大賞2位を受賞という異例のケースはありますが、シナリオ・小説両刀で行ける人も稀有なものです。

オリジナルを確実に担当するには、ヒットする原作を作って広めてから……という流れをくむ方が速いような状況からもわかるとおり、オリジナル企画へのGOは出にくい昨今。原作ものは求められる……けれど、そのモチベーションのあるシナリオライターはどこにいるのか?どこでその力をつけるのか?疑問はつきません。

脚色をきちんとしていくために、原作の中身――コアの部分を分析し、作者の別の作品などからも着想を得て作り上げるタイプの、いわゆる脚色が得意な職人肌のシナリオライターさんもいます。最近では、原作もの×シナリオという観点の切り口へ、世間的な注目が行くようにもなってきました。どうやって実写化の原作をシナリオへおとしこんだのかを雑誌でも特集していた『ゴールデンカムイ』や、丁寧な原作ものに定評のあるシナリオライターを起用した漫画原作の『カラオケ行こ!』などは原作ファンからの評判も良いように思えます。

どのみち、色々な要素が一緒くたになっているので全部一緒のシナリオとして語るのは厳しいなと言うのが実際のところです。ただそもそもドラマや映画など制作の形も……これまでのルーチン・枠組みを見直さないと動けない状況になっているようなきもします。

スポンサーも含めて、管理も含めて、現場まで……予算との歪な関係には何となく苦いものを感じます。Netflixの『ワンピース』など原作日本×海外制作も増えたので、そう言う形も増えていくでしょうが、日本の制作も目先の対応をするのではなく、どうやればみんなとシェアできるか……仕事にしていくことができるのか、今後の改革を期待したいです。

ところで、仕事としてシナリオライターを見ると、シナリオ開発期間中にお金が出るケースはあまりききません。途中で消えた企画で、シナリオだけは着手していて……それどころか、本打ちもしたし、何稿かまではあげたな……というようなものもあります。その間は別の仕事で生活費を賄っていたので、結構大変だった記憶があります。

「作って、だして、検討をお願いしますね」という持ち込みならまだしも、オファーはあるけれど結果は不明で、謝礼どころかアイディアだけ別のところで使われたという話もあり……これはまた別の問題であると思います。

同時に、最近では二極化がすすみ、物凄いプロフェッショナルが必要&分業ベースの大きな現場OR小回りが利く何でもそれなりにできる人に監督から一連の流れで任せる現場に分かれているようにも思えます。大きな現場ほどバジェットもあり、まだまだ変化できる余地があり……基本的なチームの組み方は大切になってくるのではないかなと。

また、シナリオライターが必要とされる現場は今はざっくりは大き目な映像制作の現場ですが、「脚色の要素」だけで言えば、大きなドラマ・映画に限らずニーズは増えていると思います。0→1よりも脚色的な要素を伸ばしていくことで「仕事」は拡張するかもしれません。(モチベーションの問題で、最初がオリジナルをやろうであるのか、職業として選択しているのかにもよるとおもいますが)

今回は、(プロデューサーや、ディレクターほどではありませんが)業界・場所によって使われ方・求められ方が違うシナリオライターについて、ちょっとだけまとめてみました。

プロフィール
映像ディレクター
野辺五月
学生時代、研究の片手間、ひょんなことからシナリオライター(ゴースト)へ。 HP告知・雑誌掲載時の対応・外注管理などの制作進行?!も兼ね、ほそぼそと仕事をするうちに、潰れる現場。舞う仕事。消える責任者…… 諸々あって、気づけば、編プロ・広告会社・IT関連などを渡り歩くフリーランス(コピーライター/ディレクター)と化す。 2015年結婚式場の仕事をきっかけに、映像畑へ。プレミア・AE使い。基本はいつでもシナリオ構成!2022年は現場主義へ立ち返り、演出・構成をメインに活動。現在の主流は「インタビュー」「取材」もの。 「作るために作る」ではなく「伝えるために作る」が目標。趣味の飲み歩きができるようになって嬉しい反面、ダイエットせねばと叫ぶ日々。

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