金沢21世紀美術館「アペルト19 森本啓太 what has escaped us」

金沢
ライター
いんぎらぁと 手仕事のまちから
しお

金沢21世紀美術館で5月20日から始まった「アペルト19 森本啓太 what has escaped us」を見てきました。

金沢21世紀美術館が若手アーティストを個展形式で紹介する「アペルト」シリーズは、今年で10年目。昨年の能登半島地震の影響により中断していましたが、今回の展示で約1年5か月ぶりの再開となりました。

19回目の本展は、海外でも注目を集める画家の森本啓太さんに焦点を当てています。

森本啓太
Photo: Haruta

森本さんの作品について担当学芸員の立松由美子さんは、「展示された壁から光が差し込むような印象を受けた」と話します。

今回のために描き下ろした作品も多く、森本さんとしては初めての立体作品や一辺が3メートルを超える大型の作品も展示されました。

大型作品《For the light that left us》の前で説明する森本さん

森本さんの作品の特徴は、古典絵画の技法で「どこにでもありそうで、どこにもない場所」を表現しているところです。

国内外のさまざまな街を歩いて見つけた匿名性の高い場所や記憶の奥底にある風景、コンビニや自動販売機、公衆電話などの「光」にエネルギーを感じて描いていると森本さんは言います。

本展覧会でも展示されている「Where we once stood」では、金沢在住の観覧者からは「これは金沢のあの坂の景色ではないか」と言われ、また、アメリカでも似たようなことを言われたそう。

《Where we once stood》 2025
© Keita Morimoto
Courtesy of KOTARO NUKAGA
Photo: Osamu Sakamoto
作家蔵

確かに森本さんの絵には、観覧者一人ひとりの記憶や思い出にそっと呼び掛ける情景があります。

16歳でカナダへ移住し、コロナ禍で日本に戻ってきた森本さんが描く公衆電話や自動販売機もどこか温かく、どこか寂し気に見える「日本らしい景色」です。

《Between Our Worlds》 2024
© Keita Morimoto
Courtesy of KOTARO NUKAGA
Photo: Osamu Sakamoto
牧寛之氏 所蔵

《This stays between us》 2024
© Keita Morimoto
Courtesy of KOTARO NUKAGA
Photo: Osamu Sakamoto
牧寛之氏 所蔵

初の立体作品となった「Wunderkammer(ヴンダーカンマー)」は森本さんが日本に帰ってきて「大切なものを入れている宝石箱のように見えた」という自動販売機を、廃棄予定の本物の機械を使って製作しました。

《Wunderkammer》

自動販売機の中に取り入れたLEDは時間帯にあわせて、森本さんの絵画に描かれた「光」のモチーフのように温かい黄色から涼しげな青へ変わるのも見どころです。

金沢21世紀美術館のホワイトキューブで、絵画だけの個展は珍しいとのこと。開催は10月5日まで。

ノスタルジックでいて、誰も見たことがない景色をぜひ楽しんでみてください。

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アペルト19 森本啓太 what has escaped us
期間:2025年5月20日(火) – 2025年10月5日(日)
会場:金沢21世紀美術館 長期インスタレーションルーム
休場日:月曜日(ただし7月21日、8月11日、9月15日は開場)7月22日、8月12日、9月16日
お問い合わせ:金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800

プロフィール
ライター
しお
ブランニュー古都。 ふるくてあたらしいが混在する金沢に生まれ育ち、最近ますますこの街が好きです。 タウン情報サイトの記者やインターネット回線、動画配信サービスのまとめ記事などを執筆しながら見つけたもの、感じたことをレポートします。 てんとうむししゃ代表。

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