グラフィック2019.06.12

常に「進行形」で変革を。

名古屋
株式会社イングカワモト 代表取締役社長
Yoshihiro Kawamoto
川本 嘉博

1925(大正14)年から90年以上にわたって事業を重ねてきた株式会社イングカワモト。時代の変化に柔軟に対応し、近年ではネイルシールを中心としたビューティー・ホビー関連のビジネスが急成長を遂げています。老舗でありながらさまざまな変革を推し進める代表の川本嘉博(かわもとよしひろ)氏に、同社が手がけているビジネスや同社の強み、クリエイターへのメッセージなどを伺いました。

ネイルシール「ツメキラ」のヒットで祖父から受け継ぐ会社をV字回復に導く。

御社のプロフィールと手がけられている事業を教えてください。

当社の創業は1925(大正14)年。祖父が写真製版業を立ち上げたのがはじまりです。戦争によって名古屋も焼け野原となり休業した時期もありましたが、父が事業を受け継ぎ、新聞広告用の写植と写真製版に特化した事業で成長を遂げました。私がビジネスを引き継いでからは、凸版からオフセットへの移行、DTPの台頭、リーマン・ショック、デジタル化の波など激動の時代をさまざまな策で乗り越えてきました。そして2011年にスタートしたビューティー・ホビー関連のビジネスが急成長を遂げ、現在はそれが売上の2/3ほどを占めています。

ビューティー・ホビー関連とはどのようなビジネスですか?

ネイルシール「ツメキラ」やレジンシール、タトゥーシールなどのオリジナル商材を企画・販売しています。2018年には若い女性に人気のハーバリウムシールの販売も開始しました。 主力商品となった「ツメキラ」はネイルサロンでも使われるプロ仕様ということで、業界でも大きなシェアを持っています。有名ネイリストの先生とのデザイン開発のコラボレーションも積極的に行い、販売促進のインフルエンサーにもなっていただいています。また、マーケティングから販促ツールの作成、公式オンラインショップの運営までをすべて自社のスタッフで行っています。

ネイルシール「ツメキラ」が生まれたきっかけは?

当時は広告宣伝のあり方が変わる時期で、チラシなど印刷物の受注が激減していく頃でした。当社もデジタル化への対応を行いながら、別のビジネスモデルを模索している時期でした。

「ツメキラ」が生まれたきっかけとなったのは、ある女性社員の一言。ネイルアートが大好きな彼女はたまたま導入を考えていた印刷機を見て、「これならうちの設備と人材ですぐに始められるのでは?」とネイルシールを提案してくれたのです。さらに話していると、その女性社員が「ぜひ自分でやってみたい!」というので、追加の設備投資を行って始めてみることにしました。デザイナーが空いた時間を使ってシールのデザインを起こし、印刷オペレーターが印刷を行う体制でスタートしたのです。

精緻な印刷技術とデザイン力を武器に常に変わり続ける姿勢を持つ。

「イングカワモト」の社名の由来を教えてください。

「ING」つまり、常に進行形で業態変革ができる会社という意味です。私が代表に就任した1994年に、入社後に立ち上げたグラフィックデザイン会社を統合する形で株式会社イングカワモトが生まれました。

御社の「強み」はどんなところにありますか?

「精緻な印刷技術とデザイン力」にあると考えています。この2つが、お客さまから変わらず評価をいただいている部分だと思います。あとは、元々私がビジネスを引き継いだ頃から会社をもっと成長させていきたいと考えていたので、時代に合わせて新しいことを取り入れ、変化してきたことも当社の強みだと感じます。

変化することには勇気が必要だと思うのですが?

たしかに、変化には勇気が必要です。しかし、私たちが歩んできた印刷業界は次から次へと変革の波にさらされてきましたので、たえず新しいものにチャレンジし、変化を続けないと不安でしかたなかったのです。また、変化するといっても全く別の業界に鞍替えするのではなく、今いる人材で勝負できる領域へのチャレンジですのでワクワクする一面もありました。

能力よりも、人間力。

川本社長がビジネスで心がけていることを教えてください。

「人間力」を高めることに力を入れています。仕事をするうえで「能力」は必要ですが、それ以上に人間力がないと成長は続きません。会社としても成功につながりません。私自身、これまでの採用活動で何度も失敗してきたのですが、能力があってもそのベースとなる人間力が伴わない方が入社しても、短期的な成果は上がってもそれが長続きすることはありませんでした。個人の能力よりもチームとしての達成を重視し、それぞれの人間力を磨いていくことを大切にしています。 また、京セラの稲盛さんが言われる「謙虚にして驕らず、生きていることに感謝し、善行、利他業を積む」という考えも日々心がけ、実践しています。

今後、力を入れていく領域を教えてください。

当社のコアコンピタンスは「精緻な印刷技術とデザイン力」。この部分は今後も変わることはないと思っています。そこに近年積み上げてきた「売る力」を組み合わせることで、新たなグッズの開発を行っていこうと考えています。おもしろいオリジナル商品をどんどん生み出していきたいですね。

組織づくりの視点では、ダイバーシティと言われるように子育てと仕事を両立する母親から海外の方、障害がある方にも、それぞれが最大限の能力を発揮して等しく働ける強い会社作りをしていきます。

最後に、クリエイターへのメッセージをお願いします。

より便利で効率良く仕事ができたり、心や体を癒して元気になったりといった、社会に役立つデザインやモノづくりをすることがクリエイターにとって大切だと私は思います。クリエイターにはアーティスト的な志向も必要です。しかし、自己満足に固執してしまうと成り立たない職業です。そのあたりのバランスを取りながら創作活動に挑み、社会に貢献してください。

取材日:2019年4月24日

株式会社イングカワモト

  • 代表者名:代表取締役社長 川本 嘉博
  • 設立年月:1924年1月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:ネイルシール事業/レジンシール事業/ハーバリウムシール事業/タトゥーシール事業/SPツール制作全般/広告デザイン制作/オンデマンド印刷/ウェブサイト構築/スキャンデータサービス/ファイル管理ツール/新聞製版
  • 所在地:〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄4丁目17番18号 川本ビル
  • 電話番号:052-241-3825
  • URL:http://www.ingk.jp
  • お問い合わせ先:info@ingk.jp

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