テレ玉を支える映像制作会社ユーネット 埼玉で33年続く制作現場と人材育成

埼玉
株式会社ユーネット 代表取締役
Hiroshi Koike
小池 宏氏

埼玉県民に愛される放送局「テレ玉」ことテレビ埼玉の番組を中心に、数々の映像制作に関わる株式会社ユーネット。代表取締役の小池宏(こいけひろし)さんは、東京のテレビ業界で出会った師匠からの一言を受けて埼玉へと向かい、28歳で地元に根ざした会社を設立しました。創業33年を迎えた現在、テレビ業界でがむしゃらに働くスタッフに向けて「ひたすら誠実に取り組んでほしい」とメッセージを伝える小池さんに、これまでのキャリアや会社設立の背景などを聞きました。

人生を変えた師匠からの“ある言葉”が転機に

まず、映像業界でのキャリアを、教えてください。

大学卒業後に広告代理店に就職して、最初に営業に配属されました。クリエイティブ職として採用されたのですが、入社後、研修を終えて配属されたのは営業だったんです。テレビCMの撮影現場に立ち会っても、そこで活躍されているクリエイターから「営業は黙ってその場に立っていろ」という空気を感じ続けて、やっぱりクリエイティブ側で仕事をしたいという気持ちが強くなっていき、入社から2年後にクリエイティブ職へ就くために退社しました。

その後、テレビ業界へ転職されたのでしょうか。

その後、テレビ朝日の現場で仕事をさせてもらう機会を得ました。立場としてはアシスタントプロデューサーのような役割でしたが、いってしまえばプロデューサーの補佐として何でもやる雑用係のような仕事でしたね。ただ、そのプロデューサーが、私の人生を変えてくれる師匠でした。
ある日「台本を書きたいのか、番組の演出をしたいのか、撮影したいのか、編集したいのか。お前は何を選ぶんだ?」といわれて。とまどっている私に「埼玉のテレビ制作現場に行って修行してこい。全部、1人で任されるから」といってくれたんです。それを受け入れて、現在の会社がある埼玉・浦和での仕事が始まりました。

心機一転、埼玉に来てからはどのようなお仕事をされていたのですか?

テレ玉などの映像を手がける制作会社のスタッフとして、テレビ番組やCM、企業のプロモーションビデオなど、幅広い映像にたずさわりましたね。東京ではディレクターやAD、カメラマン、編集と、映像に関わるスタッフの分業が進んでいましたが、師匠がいっていたように、埼玉では何でも1人でこなさなければならない環境だったので驚きました。ただ、自分のやりたかったことですし、最初から楽しくて仕方なかったです。

例えば、CMでは絵コンテを作成し、カメラで撮影し、編集し、テロップ作成、選曲、MA、広告主に完成前の映像を見せるプレビューまで担って…。そうしていくうちに、埼玉に来てから1年で一通りのことができるようになりましたね。一通りの作業がこなせるようになってからは、東京でお世話になった師匠から「こっちに戻ってくるか」と聞かれましたが「もう戻りません」と答えて、映像業界の人間として「埼玉で生きる」と決心しました。

28歳で独立。埼玉に根差して、33年

埼玉で生きると決めてから、1993年に独立された背景には何があったのですか。

まず、所属していた制作会社の経営が傾きつつあったんです。ちょうどその時期にテレ玉でかわいがってくださった方々が「お前が独り立ちするなら協力するよ」といってくれて、独立を考えました。ただ、会社を作る前には、フリーランスの選択肢もありました。生々しい話になりますが、1人で映像を作れるようになったので、制作会社の月給を考えると、フリーランスになれば月収が3倍以上になると分かったんです。

当時は妻と結婚して半年ほどたったころでしたが、妻にも「生活に困らないだろうし、フリーランスになろうと思う」と伝えました。ただ、大学時代から私を知っている妻に「小さくても“城を持ちたい”とずっといっていたじゃない。今がチャンスじゃないの?」「今やらない人に次のチャンスが来るわけない」といわれまして、28歳でまだ若いと思っていたのですが、その勢いも借りて自分の会社を作りました。

その後は、ご自身の環境やお仕事に変化はありましたか?

それほど大きな変化はなかったです。ただ、制作に経営が加わる大変さはありました。私自身が職人気質なのか、制作の現場に出ていないと「自分のアイデンティティが失われてしまうかもしれない」という不安もあったんです。カメラを持って現場に赴き、編集室にこもって映像を作るような生活は、今でも変わっていません。経営面では会社を作ってから5年ほどで、テレ玉の方から「頑張っているし出資するよ」と打診していただき、受け入れさせていただいたのが転機でした。

2026年で創業33年を迎えていらっしゃいますが、現在の事業内容もお伺いできればと思います。

番組制作、テレビCM、ミュージックビデオ、企業の販売促進用に使われる「VP(ビデオパッケージ)」の制作が中心です。近年では、配信プラットフォームの案件も増えてきました。大手月額サブスクリプションサービスの格闘技番組も手がけており、定期開催される試合、選手のドキュメンタリーなども制作しています。

軸となる番組制作では、情報番組『マチコミ』をはじめテレ玉の番組を複数手がけていらっしゃいますね。

そうですね。ほかには、ボートレースなどの公営競技の結果を伝える「BACHプラザ」や西武ライオンズの応援番組「LIONS CHANNEL」、大宮アルディージャの応援番組「オレアル」、正月の恒例特番でSNSでも話題を集める「埼玉政財界人チャリティ歌謡祭」など、ジャンルを問わず、さまざまな番組を制作しています。

埼玉県は、東京都、神奈川県、大阪府、愛知県に次ぐ全国で5番目に人口の多い都道府県ではありますが、その魅力が十分に伝わりきっていないと感じているんです。県内では制作会社の数も限られており、映像業界にとって未開の地でもあります。制作のすべてを1人で経験しながら、新たな魅力を掘り下げていけるのは、この会社ならではの楽しさだと思っています。

少数精鋭の環境がもたらす成長スピード

現在のスタッフ構成を教えてください。

正社員は22人、契約社員を入れると30人ほどです。埼玉の土地柄か、東京で映像業界の方に話すと「それほど少ない人数でやっているんですか」と驚かれるほど、少数精鋭の環境ですね。メインとなるテレ玉の番組では、スタジオ業務のすべてを担当しており、ADやディレクター、カメラだけではなく、音声やミキサー、スイッチャーなど、技術にも関わっています。職種としては、基本的に制作として入社してもらっています。

映像業界の経験者、未経験者の構成はいかがでしょうか。

いずれも幅広く受け入れています。過去の私のように、東京の映像業界でつらい経験を味わったスタッフが、生き生きと働いているのは弊社の特徴かと思います。挫折しかけていたはずが、弊社ではやりがいを見出し、とんとん拍子で番組を任せられるほどのスキルアップを重ねるスタッフも少なくありません。
私からは「ひたすら誠実に取り組んでほしい」とだけ伝えており、あとはのびのびと働いてもらいたい。番組制作を通して自己実現できる楽しさをスタッフには知ってほしいと思っています。

御社ならではの教育制度はありますか?

新卒スタッフを迎え入れる際に講習会を設けたことはありますが、基本はOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)です。入社直後からアシスタントとして現場に入ってもらうぶん、成長が早いのはスタッフにとっても利点だと思いますし、東京と比較した埼玉のよさとも考えています。
番組の企画から関わる機会もありますし、自由度も高いです。過去のケースでは「ラーメンが好きですけど、お金がないんです」といっていたスタッフが番組でラーメン巡りのコーナーを作り、趣味を活かした企画で、生き生きと働いていたこともありました。

最後に、小池さんが描く御社の展望を教えてください。

動画配信なども主流となった映像業界では、関わる人たちのスキルも、視聴者に求められる内容もめまぐるしく変わってきました。「クオリティ」という言葉は本音をいえば嫌いなんですが、映像に限らず「クオリティ」の価値観そのものも多様化しています。

そのため、経営者として「一人親方でやってきた」という感覚もあった体制を見直すため、新たに役員候補を育てています。彼らには「君たちが好きなようにやっていいから、映像業界の人間としての自覚を持ってほしい」と伝えているんです。許認可制のテレビ業界は潰れないと思われていますが、オールドメディアといわれているのも事実です。生き残るには、新しいことをやっていかなければならないんです。視聴者に「プラスアルファの楽しみをどう届けられるか」を考えながら、一丸となって事業を継続していきたいです。

取材日:2026年7月22日 ライター:カネコ シュウヘイ

株式会社ユーネット

  • 代表者名:小池 宏
  • 設立年月:1993年8月
  • 資本金:1,300万円
  • 事業内容:テレビ番組、CM、ミュージックビデオ、VP(ビデオパッケージ)の制作、企画、構成、撮影、プロダクション、編集、ポストプロダクション
  • 所在地:〒330-0061 埼玉県さいたま市浦和区常盤6-4-24 テレビ埼玉別館4F
  • URL:https://www.u-net1993.com/
  • お問い合わせ先:048ー825ー9061

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