職種その他2026.08.05

ジャンルレス・自主興行の独自スタイル。東北発コンテンツの全国展開に挑戦する

岩手
ニイタカプラス株式会社 取締役専務兼仙台支社長
Shin Kikuchi
菊池 慎

「最後は、やはり熱量です」――そう語るのは、仙台から東北のエンタメシーンを牽引(けんいん)するニイタカプラス株式会社の菊池 慎(きくち しん)さん。ジャンルレスな企画と、リスクを背負う自主興行を強みに事業を展開しています。
東京のコピーではなく、コンテンツホルダーとして全国へ挑む生存戦略とはどのようなものなのか。取締役専務兼仙台支社長の菊池さんに、厳しい現場の先に待つプライスレスな感動から、仕事にかける覚悟の本質までを語っていただきました。

「地方からでも戦える」エンタメ業界への一歩

エンターテインメント業界に携わるようになったきっかけを教えてください。

実は、私はもともと「演者側」だったんです。中学生からDJを始めました。大学時代に一緒に活動していた仲間はメジャーデビューし、オリコンランキングでトップ10に入るほどのアーティストになりました。
私自身、DJは趣味の延長だと思っていたので、「好きなことで食べていけるほど世の中は甘くない」と、一般企業に就職する道を迷わず選びました。
ところが、デビューした仲間たちはメジャー契約や法人化の準備など、音楽活動以外のさまざまな実務に直面することになります。そのタイミングで「手伝ってくれないか」と声をかけられたのが、エンターテインメント業界に入ったきっかけですね。

当時、エンターテインメント業界はどのような時期だったのでしょうか?

強いていうなら、まだヒップホップなどのジャンルは、国内のメジャーシーンでは確立されていない時期でした。
30年ほど前の話ですが、完全にアンダーグラウンドでしたね。私自身もドレッドヘアで道を歩いていたら職務質問を受けたこともありました(笑)。
ちょうど、J-POPの中でもRAP(ラップ)を主体としたアーティストが登場し、世の中にも浸透していきました。エンタメの構造そのものが大きく変化していく時代だったと思います。

長年、活動の拠点を仙台・東北に置いていらっしゃる理由をお聞かせください。

私は東北の出身で、18歳から現在まで、約30年を宮城で過ごしてきました。
東北で活動を続けるのは、ちょうどキャリアを積んでいた時期に「グローカル」という言葉が注目され始めたことが大きいです。「グローバル(Global:地球規模)」と「ローカル(Local:地域)」を掛け合わせた造語です。インターネットの普及もあり、「東京に行かずとも、地方から全国へ発信して戦える」という手応えを感じ始めていました。
地方だからできないのではなく、地方からでもできる。当時の私はその可能性を信じて疑わなかったんです。

常識を覆すジャンルレス・自主興行の独自のスタイルで仕掛ける

ニイタカプラスでは、どのような事業を展開されていますか?

主軸はイベントの企画・制作です。会社自体はまもなく創業50年を迎える歴史があり、長年エンタメやカルチャーに関わる事業をしてきました。現在も岩手県で2店舗の音楽教室を運営しています。また、案件によっては広告代理店のような役割を担うこともありますね。
ただ、ここ数年はイベント事業の割合が大きくなっており、「イベントの企画・制作会社」としての色合いが強くなっています。

イベント業界において、ニイタカプラスの強みや他社との違いはどこにあるのでしょうか?

弊社の特徴は2つあります。一つはジャンルレスであることです。 一般的にイベンターと呼ばれる同業他社さんは、扱う事業の多くが音楽ライブです。一方で私たちは、音楽だけでなく、演劇、お芝居、美術展など、あらゆるジャンルを手広く手掛けています。
なぜ他社がやらないかというと、演劇やお芝居は非常に手間と人手がかかるからです。働き方改革の影響もあり、こうした手のかかるジャンルにまで事業を広げられる会社は、東北では弊社くらいなのではないかと自負しています。

もう一つの特徴を教えてください。

リスクを背負った自主興行を行っていることです。多くの地方イベンターは、東京資本の会社などから依頼されて現地運営を代行する「受け」といわれる仕事が大半を占めますが、私たちはこれをほぼやりません。
自社で責任(金銭的リスクも含む)を負って自主興行を行います。売れなければ損失はすべて自社が被る。普通なら避ける道でしょう。
なぜあえてこの手法を選ぶかというと、私たちが「後発組」だからです。本格的にエンタメ事業に参入したのはコロナ禍以降で、すでに先駆者がいるなか、同じように受託を待っていても仕事なんて回ってきません。だったら、リスクを背負ってでも、面白いと信じるコンテンツを自ら仕掛ける。退路を断ったこの挑戦こそが、私たちの生存戦略なんです。

教科書なき現場でプロを育てる。厳しい現場を共に走る仲間に求める覚悟

採用にあたり、特に強化したい職種や求める人材像はありますか?

正直に申し上げますと、一番求めているのは「自分で稼げるプロデューサー」です。ただ、そうした人材は地方には滅多にいないので、経験者をスカウトするか、未経験から育てるかのどちらかになります。
エンタメ業界は一見、外から見るととても華やかですが、実際には非常にハードな仕事です。一般のお客さまが休んでいる土日祝日こそが本番ですから、「規則正しい休み」を重視する方には「この業界はやめたほうがいいよ」と正直に伝えています。
24時間365日、常に新しいものが生まれ消えていく世界です。枠に縛られすぎないマインドは不可欠ですね。新卒採用も始めましたが、今はどのポジションでも「やる気と熱量がある人」を大募集中です。

未経験の方でも、エンタメ業界に挑戦することは可能ですか?

もちろん可能です。例えば、事務やデスクワークでもチケットの販売管理など専門的な業務があります。「*票券(ひょうけん)管理」業務は、よく自分でチケットを買ってライブに行く方なら話は早いです。「あなたが普段買っているチケットの裏側を動かす仕事だよ」といえば、イメージがつきやすいと思います。
大切なのは、自分の趣味や好奇心の延長線上にエンタメがあること。家に帰っても自然とエンタメ情報を追ってしまうような人なら、未経験からでも早く戦力になれます。
* 票券管理:チケットの発行・販売管理や顧客データの管理などを行う業務

現在のメンバー構成や、最近の採用実績はいかがでしょうか?

現在、仙台オフィスの常勤メンバーは5名ですが、うち3名は地元のテレビ局出身の「20年選手」です。この強力なプロ集団がいるからこそ、少数精鋭でありながら大手並みの多彩なラインナップを仕掛けられています。
採用実績としては、今年6月に中途で1名、3年前に新卒を1名採用しました。新卒スタッフはもともと演者志望で、学生時代からインターンとして現場を経験していたため、即戦力になってくれました。公共ホールの運営管理スタッフとしても新卒メンバーが1名活躍しています。良い出会いがあれば、中途採用は随時行っていきたいですね。

入社後の教育体制や、若手が成長できる環境について教えてください。

正直にいうと、教育体制はまだ発展途上です。私自身もプロデューサーとして現場に立っているため、手取り足取り教える時間は十分につくれません。そのため、新卒なら内定後にインターンとして現場を経験してもらい、入社後はOJTで仕事を覚えてもらいます。
なぜこの泥臭いやり方にこだわるかというと、この仕事には「教科書」がないからです。
現場は毎回すべて条件が異なりますし、天気一つで状況は180度変わります。1000人規模のイベントともなれば、瞬時の判断の遅れが事故につながるような、人命に関わる判断を迫られることすらある。それほどの覚悟と緊張感が必要な仕事なんです。
現場で揉まれ、自分の目と耳で本物を感じること。これ以上に成長できる方法はありません。

涙ながらのスタンディングオベーション、子どものキラキラした目……自分がプロデュースした空間が生み出す瞬間

そこまで過酷な現場でありながら、走り続けられる「やりがい」はどこにあるのでしょうか?

普段テレビやネットでしか接することがない著名な方々と仕事をつくり上げる「非日常を日常が交差する面白さ」は、この仕事の特権ですね。
でも、それ以上に走り続けられるのは、言葉では言い表せないほど「プライスレス」な瞬間があるからです。
例えば、自主興行等の終盤で観客席の全員が立ち上がり、涙を流しながらスタンディングオベーションを送ってくれる。あの空気、熱気、一体感を肌で感じ、「この空間を自分がプロデュースしたんだ」と思える瞬間を一度でも味わうと、もうこの仕事は辞められません。
特に子ども向けのイベントを手掛ける時は強く感じます。小さな子どもたちが目をキラキラさせてステージを見つめている。この日の体験が、その子の将来を何か変えるきっかけになるかもしれない。実際に、そういう場面に何度も立ち会ってきました。
お客さまの人生に大きな影響を与えられる仕事だからこそ、責任も重大です。私たちの対応一つでお客さまの体験価値は大きく変わります。そのため、一つ一つの公演に真摯に向き合い、最高の体験を届けたいと思っています。

 

東京のコピーを脱し、仙台発を全国へ。次なる目標はコンテンツホルダー

今後、ニイタカプラスをどのような会社にしていきたいとお考えですか?

エンタメ業界に本格参入してまだ6年目ですが、おかげさまで社名もかなり浸透してきた手応えがあります。ここから先は、「ニイタカプラスの催事は、とにかく面白いものばかりだよね」と、地域の方々に信頼されるブランドを確立することが一番の目標です。
地方都市である仙台を拠点に活動していると、どうしても「東京のコピー」になりがちです。しかし、それではいつまで経っても東京の二番煎じであり、真のオリジナリティは生まれません。
私たちが目指す次のビジョンは、単に外からコンテンツをもってくるのではなく、自分たちでものづくりをして「コンテンツをつくり出す側」へと舵を切ることです。そして、将来的には東北(仙台)で生まれたコンテンツを、全国へツアー展開していくという流れをつくりたい。それが私たちの目指す未来です。

最後に、クリエイティブ業界での活躍を目指す読者へメッセージをお願いします。

最終的に必要なのは、やはり「熱量」ですね。
今はAIの発達などで誰でもスマートな企画書を出せますが、その企画に「本当に血が通っているか」は、現場を見れば一瞬で伝わってしまいます。自分が熱くなれない領域には触らないほうがいい。つくり手の熱量不足は、確実にお客さまに見透かされます。
何も最初からすべてを網羅している必要はありません。一人一人が自分の「偏愛」をもち寄り、その熱量が集まることで、会社として新しい化学反応を起こせばいいんです。
私たちのビジネスは「娯楽産業」です。不景気や物価高の現代において、人々は生きるために「衣食住」を優先します。エンタメは最後の一つ。自由に使えるお金が限られているなかで、お客さまがチケットを買おうと決断してくださる。その時に選ばれるものをつくり出すのは、生半可な気持ちでは不可能です。
自分が心から「これは素晴らしい!」と信じるものを、熱をもって人に伝える。純粋な熱量こそが人の心を動かし、劇場へ足を運ばせる原動力になります。皆さんの「好き」という強い熱量を、ぜひこの業界で爆発させてほしいですね。

取材日:2026年6月11日 ライター:今野 なつ

ニイタカプラス株式会社

  • 代表者名:高橋 德好
  • 設立年月:1978年8月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:イベントマネジメント、クリエイティブエージェンシー、音楽教室
  • 所在地:
    本社:〒025-0092 岩手県花巻市大通り1丁目4番15号
    仙台オフィス:〒980-0013 宮城県仙台市青葉区花京院1丁目4番47号 ALLELL花京院4F
  • URL:https://www.niitaka-plus.com/
  • お問い合わせ先:https://www.niitaka-plus.com/contact/

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