佐渡の酒に魅了され、「飲む」から「造る」へ。クラフトサケで広げる日本酒業界の未来
2020年、大学在学中に起業し、株式会社サケアイを設立、AI×日本酒をキーワードにしたWebサービス&アプリ「Sakeai」を発表しました。その後、OEMでの日本酒販売を発想し、高級酒ブランド「SAKENOVA」を立ち上げました。現在は、クラフトサケを醸す蔵として佐渡にベースを置き、自ら酒造りの陣頭に立っている代表の新山大地さんに、お話を伺いました。
佐渡の日本酒にほれて。学生起業家が描いた「AI×日本酒」のアイデア
起業はいつから考えていたのですか?
地元・青森県の八戸高等専門学校を卒業して、長岡技術科学大学の情報・経営システム工学課程へ編入したころです。AIを使ったサービスやアプリ開発をしている会社にインターンをして技術的なことを学ぶうちに、いずれはプロダクトをつくりたいと思うようになりました。
新山さんを日本酒の世界に引き込むことになるきっかけは何だったのですか?
20歳のころ、新潟に来て、日本酒の魅力に引き込まれました。特に天領盃(てんりょうはい)酒造の「雅楽代(うたしろ)」と逸見酒造の「至」にほれました。どちらも今、僕たちの蔵がある新潟県佐渡の酒蔵でできた日本酒です。
そこから起業までの経緯を教えてください。
「AI×日本酒」という発想が生まれ、Webサービス&アプリ「Sakeai」を開発し、翌年、大学4年のときに仲間の4人とともにサケアイを立ち上げました。在学中にAIの裏側のアルゴリズムなどは学んでいましたが、アプリの開発自体は初めてだったので、すべて独学でした。
「Sakeai」はどのようなサービスですか?
自分が飲んだ日本酒の口コミを書き込んだり、ほかの人の感想を閲覧することができる、「日本酒記録サービス」のアプリです。独自開発のAIにより、日本酒をレコメンドしてくれるので、自分に合った日本酒を見つけられます。
日本酒への情熱が導いた新たな挑戦「SAKENOVA」

日本酒造りにチャレンジするようになったのはどうしてですか?
「Sakeai」アプリ自体はマネタイズできるものではありませんでした。AIを使い、何か別のことをする方向性もあったのですが、それより日本酒自体に興味が強まっていったんですよね。アプリをきっかけに、造り手の方とのやりとりが増え、数多くの酒蔵を訪問し、日本酒に対する思いを聞く中で、日本酒の素晴らしさを世に届けたいという思いが強くなりました。そこで日本酒ブランド「SAKENOVA(サケノヴァ)」を立ち上げ、日本酒造りをスタートしました。

SAKENOVAという名前への思いは?
「酒」と「新星」を意味するNOVAの組み合わせです。日本酒業界にはほとんど新規参入者がありません。そこに僕たちが入っていって新しいことを始めるという意味合いでこの名前にしました。
スタート当初の価格設定は、720mlで27,500円。日本酒としては、非常に高価格な設定ですが、不安はありませんでしたか?
不安はありませんでした。僕たちが参入したところで、既存の酒蔵さんには太刀打ちできないことばかりです。はっきりとした棲み分けをして売り出していかないといけないと考えていました。SAKENOVAは高級酒というカテゴリーにしぼって勝負することにしたのです。X(旧:Twitter)で予約注文形式の募集をしたところ、すぐに完売しました。
日本酒業界に新風を吹き込む「共創型ブリュワリー」
「共創型ブリュワリー」とは?
OEMという形式で日本酒販売をしていく中で、酒蔵を持ちたい、持たなければならないという思いが強まりました。明確なファンを獲得するためには、自分たちがメーカーになり、ブランド力を持たないといけないと実感したんです。そこでクラウドファンディングを始めるのですが、その際に「一緒に造りましょう」と伝えるため「共創型ブリュワリー」というキーワードを使うようになりました。

佐渡に蔵をつくった理由を教えてください。
修業をさせていただいた天領盃酒造の敷地内に僕たちの蔵はあります。僕たちの蔵はクラフトサケと呼ばれるジャンルなのですが、当時離島での立ち上げは一つもなかったんです。そこで生まれる珍しさも狙いの一つです。それから、佐渡はリンゴやレモン、ミカンなど果実が非常に狭い範囲の中で栽培されています。これは日本でも非常に珍しく、副原料が必要な僕たちにとっては好都合でした。原料の多くを佐渡産でそろえられることは、お酒造りとして大きな強みです。
クラフトサケとはどのようなお酒ですか?
僕たちは輸出用の日本酒造場免許を持つ日本酒蔵で、国内では「米、水、麹」に加え、「副原料」を用いて醸したお酒「クラフトサケ」を製造販売できる蔵です。造り自体は日本酒を造るのと変わらないので、一般の方にはその差はほとんどわからないと思います。はちみつやリンゴなどの副原料のフレーバーをほのかに感じられるお酒です。
どこで購入できるのですか?
佐渡島内の酒屋さんや僕たちのオンラインショップでも購入できます。新潟市内でも3軒ほどの酒屋さんで取り扱っていただいていますね。これらは「SAKENOVA Crafted Series Brew Note」という名前で、僕たちとしては試験醸造酒の位置付けで、醸造の記録やテストを重ねていくお酒です。
今後どのようなクリエイターと一緒に働きたいですか?
まずはお酒造りをしたい人というのが大前提ですね。ただ製造経験者じゃなくても構いません。むしろ、ほかのことができる方のほうがいいですね。デザイン、開発、まったく別の世界のスペシャリストでかつ日本酒好きという人が僕たちのやろうとしていることと合いそうな気がします。
取材日:2026年2月27日 ライター:コジマ タケヒロ
株式会社サケアイ
- 代表者名:新山 大地
- 設立年月:2020年2月
- 事業内容:佐渡の醸造所「SAKENOVA BREWERY」の運営、ハイエンド日本酒ブランド「SAKENOVA」の運営、日本酒レコメンドサービス「Sakeai(サケアイ)」の開発・運営
- 所在地:〒950-0911 新潟県新潟市中央区笹口1丁目2番地 PLAKA2 1階 NINNO+
- URL:https://sakeai.co.jp/
- お問い合わせ先:https://sakeai.co.jp/contact/






