WEB・モバイル2025.12.17

「AIの民主化」を熊本から全国へ。AI導入支援で働き方に“余白”を、思考に“創造”を

熊本
株式会社mimu 代表取締役社長
Kosuke Morita
森田 幸輔

熊本を拠点に、企業の業務効率化と生成AI導入を支援する株式会社mimu(ミム)。代表の森田 幸輔(もりた こうすけ)さんは、地方企業の「DXの最初の一歩」を伴走しながら支えている。「AIは“人の仕事を半分にして、新しいことに振り向ける時間をつくる”ためのもの」——。そんな想いのもと、“現場で本当に使えるAI”を追求している。地方発の実践型DX、そのリアルを伺った。

小学生の文集に書いた「システムエンジニア」という夢

最初にIT業界を志したきっかけを教えてください。

僕、小学校の卒業文集に「システムエンジニアになりたい」って書いていたんですよ。当時小学6年生の自分がなんでそんな言葉を知ってたのか、覚えていないんですけど。
学校にパソコン室が導入され始めたころで、パソコンを使って何かを“動かせる”のが楽しかったんです。

エンジニアとしての最初のキャリアは?

地元の高校の電子機械科を卒業して、熊本の専門学校で情報処理を学びました。 就職先は、自動車、半導体、家電など多様な産業分野向けの生産システムや産業用ロボットを製造・販売する平田機工グループの「タイヘイコンピュータ(現:株式会社トリニティ)」。入社初日に東京本社への配属が決まり、20歳で上京しました。
東京では主にポイントシステムやカード会社の基幹をつくる案件に携わっていました。複数案件を同時に回す日々でした。エンジニアって黙々とコードを書く仕事かと思っていたのですが、実際は“人と話す仕事”なんですよね。どう伝えれば相手に伝わるのか、毎日考えていました。

総務省のプロジェクトで得た「やり切る力」

キャリアの中で特に印象に残っている仕事はありますか?

27歳のときに参加した、マイナンバーカード(個人番号カード)や電子決済の普及を目的に総務省が実施する「マイナポイント」の実証実験です。半年間のプロジェクトで、総務省の審議官の方々と直接議論しながら仕組みを作っていきました。要件定義から説明、調整まで全部やりました。
厳しい現場でプレッシャーもすごく大きかったですが、“人に伝える力”と“やり切る力”が鍛えられましたね。

その後、熊本にUターンされたと伺いました。

そうです。結婚して、子どもが生まれたことがきっかけでした。
妻に「東京では子育てが大変かも」と言われて、「じゃあ帰ろうか」と。ごく自然な流れでした。「東京じゃなくても、地元でできる仕事がある」と気づいたことも大きかったです。
熊本に戻ってからもシステムの仕事を続けていましたが、やがて「もっと柔軟に、面白いことをやりたい」と思うようになって、2023年3月に独立しました。

「目の前のことを楽しくする」──mimuという名前に込めた意味

社名「mimu」にはどんな想いが込められていますか?

「耳を傾ける(みみ)」と「見る(みる)」を掛け合わせています。さらに、“まみむめも”の“みむ”で“めの前”、つまり「目」なんです。“目の前のことを楽しくする会社”にしたいと思って名付けました。
クライアントの声を聞き、現場の課題を見つめ、仕組みで支える。目の前にある課題を一つずつ解決していくことで、気づけば会社全体の未来も明るい方向に変わっていく。 そんな姿を描いています。

AI導入は「特別なこと」ではなく「日常の道具」に

現在の事業内容を教えてください。

主な事業は、生成AIの導入支援と業務効率化のシステム開発です。特にChatGPTを中心としたAIを、企業が安全に・効率的に使えるようにする仕組みを作っています。
ChatGPTの有料プランを100人に配布すると、月額でおよそ40万円かかります。mimuではAPIによる従量課金制を採用しており、同規模でも月2万円台+サーバー費約5,000円+保守費5万円=合計7万5,000円程度で運用が可能です。つまり、およそ5分の1以下のコストで、全社員がAIを日常的に使える環境を整えられます。
私たちが目指しているのは、「AIを特別な人の道具ではなく、全員の仕事道具にすること」です。
事業はそのほかにも、NFT導入支援・開発、自走支援アプリ「みんホム」、HP・ECサイト構築を行っていますよ。

導入支援では、どんな形で関わることが多いですか?

大きく2パターンあります。ひとつは、クライアントの現場をヒアリングしながら、AIワークフローをノーコードで設計・構築して納品するパターン。もうひとつは、生成AI導入後に社員研修やチューニングを伴走支援するパターンです。
例えば、「議事録作成AI」や「書類チェックAI」など、社内ポータルに専用チャットボットを設け、社員が自然にAIを使える環境をつくります。情報漏えいリスクを避けるために社内専用サーバーで管理し、機密情報も安心して扱える構成にしています。

「断らない」スタンスで、課題をまるごと支える

mimuの特徴をひと言で表すなら?

「断らない会社」ですね。 “できません”ではなく、“どうしたらできるか”を常に考えています。 例えば、地元熊本の起業家・スザンヌさんの新ブランド立ち上げでは、ホームページ制作からECサイト構築、レジ導入、カフェの予約システムまで一括でサポートしました。 当初は、複数のベンダーや店舗運営チームとの調整が必要で、情報共有の手間が大きかったんです。店舗側とオンライン販売の在庫連携、キャッシュレス決済の仕様統一など、 “システム同士をどうつなぐか”という部分で苦労しました。異なる分野を橋渡ししながら一つの仕組みに落とし込むことができるのもmimuの強みです。

私たちは「課題を解決する伴走者」でありたいんです。そのため、AIが合わないケースでは「RPA(Robotic Process Automation/ソフトウェアロボットを用いて定型的なPC作業を自動化する技術)で自動化した方が早いですよ」などと最適な解決策を伝えますし、既存のベンダーさんの方が適していれば、そちらを紹介することもあります。“お客さまにとっての最善とはなんなのか”を常に考えています。

迷ったら、ワクワクする方へ──新アプリ「みんホム」が描く未来

森田さんが大切にしている言葉はありますか?

「迷ったら、ワクワクする方へ」ですね。AIやDXの世界は変化が速く、迷うことも多い。でも、面白そうだと思える方向に進めば、たいてい新しい価値が生まれます。NFT(非代替性トークン)や生成AIの導入支援、そして自走支援アプリ「みんホム」などの新しい挑戦も、すべてその感覚から始まりました。

自走支援アプリ「みんホム」について、教えてください。

「みんホム」は「みんなのホームルーム」の略で、目標管理や自己成長をサポートするクラウドサービスです。社員や生徒が「自分の目標」と「日々の行動」を見える化でき、活動報告や学びの進捗を入力すると、育成ゲームのように鳥のキャラクターが成長します。
記録データをもとに、上司や教師といった管理者もフォローやフィードバックを行いやすくなります。毎日の記録は、どうしても面倒で続けにくいもの。だからこそ、「少しでも楽しく続けられる仕組み」を意識しました。学びや仕事を、ゲームのように“楽しく”感じられる設計になっています。
実際に学習塾や企業研修への導入も進んでおり、 「目標を忘れず、日々を楽しむ」ことを支えるプラットフォームとして好評を得ています。

「みんホム」の紹介写真

地方発の「現場で使えるAI」導入で企業課題を解決する

最後に、今後の展望を教えてください。

熊本をはじめ地方には、まだAIを「難しそう」「コストが高そう」と感じている企業さんが多いです。でも実際は、導入コストも運用の手間も最小限にできる時代になってきています。
私たちは「AIの民主化」を熊本から広げたいと思っています。AI導入で生まれた余白の時間を、新しいアイデアや挑戦に使ってもらいたい。その循環が、地方経済の未来をつくるはずです。

取材日:2025年10月16日 ライター:酒見 夕貴子

株式会社mimu

  • 代表者名:森田 幸輔
  • 設立年月:2023年3月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:生成AIシステム開発/企業導入支援/NFT導入支援・開発/自走支援アプリ「みんホム」/HP・ECサイト構築
  • 所在地:〒860-0072 熊本県熊本市西区花園7-8-28
  • URL:https://www.mim-u.co.jp/
  • お問い合わせ先:

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