WEB・モバイル2025.12.17

帯広で育てる、十勝を支える。ワンストップのクリエイティブで地域企業の価値を高める

北海道
株式会社プロコム北海道 代表取締役
Tatsushi Sekimukai
関向 樹志

帯広を拠点に、広告代理店とデザイン会社の強みを併せ持つハイブリッド型のクリエイティブカンパニー・株式会社プロコム北海道。パッケージデザインからテレビCM、地域プロジェクトまで幅広く手がけ、災害復興支援でも独創的なアプローチで地域を支えてきました。「デザインで困ったときはプロコムだよね」と頼られる存在を目指すという代表・関向 樹志(せきむかい たつし)さんに、地域に根ざしたクリエイティブの価値と役割について伺いました。

「お客さま本位」を貫くハイブリッド型クリエイティブカンパニー

起業前のキャリアと独立のきっかけを教えてください。

もともとはまったく異なる仕事をしていたのですが、28歳のときに広告代理店に転職し、帯広支社で10年間営業を担当。自分のアイデアや発想、心配りでお客さまが喜んでくれるのがうれしくて、大きなやりがいを感じていました。
「もっとしっかりお客さまの方を向いて仕事をしたい」という思いが強まり、2009年に独立を決意しました。広告代理店ではフリーランスの方々と仕事をする機会も多く、「いつか自分も」と思っていたのも独立の後押しになりました。

現在の事業内容について教えてください。

帯広本社には約20人のスタッフがおり、デザイナー、プランナー、事務系スタッフで構成されています。現在はパッケージデザインの比重が大きいですが、パンフレット、チラシ、Web、テレビCMなど幅広い領域を手がけています。北海道・帯広という地域柄、食や観光、移住にまつわる仕事が多いのも特徴です。
十勝の生産者から「地元でこんなものを作りたい」という6次産業化の相談を受けることもよくあり、商品開発からパッケージ、Web、ポスター、CMまで一貫してサポートするケースも多いです。そうした経験やノウハウの積み重ねが、当社の大きな強みになっています。

広告代理店とデザイン会社、両方の強みを併せ持つ点が特徴だそうですね。

最初は“一人広告代理店”としてスタートしましたが、のちにデザイナーが加わり、デザインの満足度が差別化と付加価値につながることを実感しました。広告代理店では「まずは広告を売らなければならない」というプレッシャーがありますが、デザインを軸にすることで、広告枠を売ることが目的ではなく、本当にお客さまの課題を解決するための提案ができるようになりました。
社内でクリエイティブ機能を抱えている広告代理店は多くない中、当社はデザインから広告展開を含むプロモーション、印刷までワンストップで対応できるのが最大の強みとなっています。

逆転の発想で地域を支える。災害復興からコロナ禍まで、課題解決の実績

特に印象に残っているプロジェクトを教えてください。

地域の課題に一緒に向き合い、デザインやアイデアで解決を支援したプロジェクトはどれも印象的です。なかでも、災害復興支援、食育、コロナ禍での地域支援など、広告代理店の枠を超えた取り組みが心に残っています。
特に忘れられないのは、2018年の北海道胆振東部地震のあとの「十勝川観光復興プロモーション」です。十勝は震源地からも遠く離れていて地震の直接的な被害はないのに、風評被害で予約が全キャンセルに。観光客が激減して、秋の繁忙期のさなかに観光業界が危機に陥りました。
そこで、「全然大丈夫じゃないです!元気ないです!」という自虐的なプロモーションを展開。同時に「今来てくれたら最高のサービスが受けられます」というメッセージを発信しました。テレビの全国放送でも取り上げられ、すぐに観光客が戻ってきてくれました。
2011年の東日本大震災のときは創業直後で十分に尽力できなかった悔しさがあり、今回は「広告会社として必ず力になりたい」という思いで取り組みました。

ユニークな発想ですね。ポスターも面白いです。

また、コロナ禍で飲食店が困っていたときは、自動販売機でテイクアウト商品を販売する「十九勝(トクカチ)プロジェクト」に、デザインの面で協力しました。その時々の問題や課題に対してデザインやアイデアで貢献できるのが、プロコム北海道らしさだと思います。

「とかちショクテラス」の立ち上げも、こうした地域支援の一環でしょうか?

はい。「とかちショクテラス」は、調理・撮影・発信に活用できるレンタルキッチンスタジオです。コロナ禍で非接触型のプロモーションが求められる中、十勝の食の魅力を伝えるには写真や動画が重要だと考えましたが、当時十勝には料理撮影ができるキッチンスタジオがなかったんです。もともと食関係の仕事が多かったこともあり、地域に必要な取り組みだと考え、事業再構築補助金を活用して建設しました。
現在では、全国のメーカーがイベントやセミナー、展示会で使ったり、インバウンド向けのコンテンツ撮影や観光プランに組み込まれたりなど、幅広く活用してもらっています。

「ここぞというときはプロコムだよね」。地方でデザインの価値を高め続ける

帯広・十勝という地域で仕事をすることについて、どのように感じていますか?

お客さまや生産者との距離が近いのが魅力です。原料・材料がすべて十勝産という生産者は多いですが、さらに「デザインまで十勝産だといいよね」と言ってくださる方も増えています。
良いデザイン、アウトプットをするためには、心身ともに健康が大切だと思います。
この業界は、不規則な生活になりがちですが、十勝の恵まれた環境と美味しい食べ物で心も身体も健全にクリエイティブ活動に携われることも、魅力の一つですね!
一方で、かつては「ここぞというときのデザインは札幌や東京に頼む」という企業も多く、悔しい思いをしてきたことも事実です。だからこそ、地元で高品質なクリエイティブを提供できる会社が必要だと考え、「デザインで困ったときはプロコムだよね」と言われる会社を目指してきました。

地方都市ならではの課題はありますか?

課題は、制作費やデザイン費への理解を得ることですね。「企画費って何?」「デザインなんてすぐできるでしょ」といった声もいまだあり、理解を促していく必要があると感じています。良いデザインには投資する価値があるんだということを丁寧に説明しています。

企業の転換期を支えるブランディング支援も増えているそうですね。

世代交代で会社を継いだ経営者からの「古いイメージを一新したい」「採用力を強化したい」という相談が増えていますね。経済産業省も推奨する「デザイン経営」という考え方が広まり、商品の付加価値づくりだけでなく、企業価値の向上や経営戦略にデザインを活用する動きが活発化しています。
設備会社や建設会社など、これまでデザインと縁遠かった業種からの依頼も増えていますよ。働く人の満足度を上げ、人材をひきつけるために、ロゴや名刺、スタッフジャンパーなどを統一して会社のイメージを刷新したいというニーズが多いですね。

新卒採用10年、離職率の低さの理由。地域で学び、成長できる環境づくり

新卒採用を10年継続されているそうですね。地方の中小企業で新卒採用を続けるのは簡単ではないと思います。

新卒のほうが会社の文化や方針に早くなじみやすいかなと思ったことがきっかけですが、みんな一生懸命やってくれています。
また、単に人手を確保するだけでなく、地方でも若いデザイナーが成長できる環境をつくりたいという想いがあります。若い世代に、東京や札幌だけでなく「地方でもこういう会社があるんだ」と知ってもらい、選択肢を広げてほしい。それが地域にとっても、業界全体にとっても意味があることだと考えています。新卒採用では1週間ほどインターンシップを体験してもらい、お互いを理解した上で採用しているのでミスマッチも少なく、3年以内の離職率はほぼゼロです。

最後に、一緒に働く方に求めることを教えてください。

一番は素直さ、二番目は北海道と十勝を“いいな”と思ってくれることです。
それから、広告やデザインが好きでお客さまに喜んでもらえることをモチベーションにできる人が理想的です。自己表現も大切ですが、商業デザインである以上、お客さまの課題をどう解決できるかを考え、提案できる人、そこに喜びを感じる人と一緒に働きたいと思っています。

取材日:2025年10月16日 ライター:小山 佐知子

株式会社プロコム北海道

  • 代表者名:関向 樹志
  • 設立年月:2009年2月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:販売促進と広告宣伝、印刷物等の各種デザイン、商品開発の企画・パッケージデザイン制作、イベント企画・実施、レンタルキッチンスタジオの運営e品目(テレビCM、ラジオCM、新聞広告、雑誌広告、WEB広告、折込みチラシ、DM、ポスター、パンフレット、カタログ等の印刷全般、パッケージング、看板、HPなど)
  • 【本社】
    〒080-0015 北海道帯広市西5条南9丁目2-15 タチノセンタービル5F
    【札幌オフィス】
    〒060-0053 北海道札幌市中央区南3条東2丁目1番地 サンシャインビル3F 303
    【ショクテラス】
    〒080-2460 北海道帯広市西20条北2丁目23 URL:https://www.t-shokuterrace.jp/
  • URL:https://procomh.co.jp/
  • お問い合わせ先:0155-20-2656

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