WEB・モバイル2025.11.12

CGやXRで複雑な技術を視覚化し、伝える。ものづくりの中心地・名古屋で企業に寄り添う

名古屋
デジタルデザインラボ株式会社 代表取締役
Takamasa Suzuoki
鈴置 崇真

名古屋駅から徒歩10分の本社と東京・銀座に拠点を持つデジタルデザインラボ株式会社。2011年の創業以来、大手メーカーとの直接取引を通じてCGアニメーションやVR/AR(仮想現実/拡張現実)技術を駆使した先進的なクリエイティブを提供しています。代表の鈴置 崇真(すずおき たかまさ)さんに、会社設立の経緯や今後の展望、クリエイターとしての哲学やメッセージを伺いました。

父親の背中を見て思った「デザインに関わる仕事がしたい」

子どもの頃や学生時代、どんな夢を持っていましたか?

父親が設計の仕事をしていたので、デザインやものづくりに携わる仕事に漠然とした興味がありました。高校生になると将来はデザインに関わる仕事がしたいと明確に感じるようになり、造形に関する大学に進学しました。
大学ではグラフィックデザインやプロダクトデザインを学び、工業製品の中でのCGグラフィックスの可能性に魅了されました。今の仕事の基盤となるプロダクトデザインやコンピュータグラフィックスの基礎は、この時に築かれたものです。

アジアのバックパッカー旅で日本の魅力を再確認

大学卒業後、起業にいたるまでのキャリアを教えてください。

私は1975年生まれで、いわゆる就職氷河期世代です。大学卒業後は、自分探しの一環として1年ほどアジアをバックパックで旅しました。生まれた時から職業が決まってしまう国や地域もあり、自由にやりたいことを追求できる日本という国の良さを再確認しましたね。
帰国後は、ソニー系のゲーム事業に携わり、家庭用ゲーム機・Xboxが普及し始めた時期に3D表現やグラフィックスの開発に関わりました。その後、地元である愛知県に戻り、自動車メーカーに属するデザイン会社で海外向け車両のデザインやUI/UX、CGを使った未来のビジョン提案などを行っていました。
2011年に会社が本社へ吸収合併されたのを機に独立を決意しました。これまでの仕事のつながりや信頼関係を生かし、デジタルデザインラボの前身であるスズオキデザインを設立しました。

独立後も堅調に成長中。今後のカギは人材の確保

独立後の14年間はいかがでしたか?業績や苦労した点も教えてください。

設立直後に東日本大震災があり、大変な時期もありましたが業績は基本的には右肩上がりで、コロナ禍では、モビリティショーなどの展示会が減った時期もありましたが、VR/ARといったXR領域のニーズが高まり、事業は安定しています。

現在はデザイナーとエンジニアの人材不足が課題です。仕事の依頼は多いのですが、新しい産業領域なので対応できる人材が足りず、成長の余地はまだまだあると感じています。エンジニアとデザイナーと連携してインタラクティブなコンテンツを作る必要があるので、人材の確保が今後のカギですね。

社名を「スズオキデザイン」から「デジタルデザインラボ」に変更したのはなぜでしょうか?

個人名を冠した「スズオキデザイン」は私自身のデザイン提供に焦点が当たっていましたが、会社を技術やクリエイティブを提供する「場」として再定義したかったからです。私自身も40代も終盤になって若い世代や新たな才能が活躍できるプラットフォームを作りたいと考え、2023年に社名を変更しました。
「ラボ」という言葉には、試験研究や先行開発のイメージを込めました。私たちの仕事は新しい技術を試し、顧客の課題を解決する提案を行うことが多いため、“研究開発の場”としての役割を強調したかったんです。また、人材採用の面でもデザインだけに縛られず、エンジニアや技術者も含めた集合体としてのイメージを打ち出したかったですね。

ロゴマークやデザインに込めた思いを聞かせてください。

ロゴはスタッフと一緒に作りました。ブルーを基調としたグラデーションは、デジタルとデザインの融合を表現しています。柔らかすぎず、かっちりとした印象を与えるデザインにすることで、工業製品に関わる私たちの姿勢を反映しました。
シンプルでありながら、技術力とクリエイティブのバランスを意識したロゴに仕上がったかなと感じています。

ものづくりの中心地で、技術とデザインの融合を

名古屋に拠点を置く理由を教えてください。

自動車関連の大手メーカーが集まる愛知県は、ものづくりの中心地。研究開発や付加価値の高い仕事をメーカーのデザイナーやエンジニアと一緒に開発することが重要だと考えています。名古屋は、クライアントとのコミュニケーションをスムーズにし、信頼関係を築くのに最適な場所なんです。

現在の主な事業内容を教えてください。

主軸はCGアニメーションです。顧客の新製品や新技術を分かりやすく伝えるための動画制作が中心で、コンセプトビジュアルやUI/UXデザインも手掛けています。目に見えない技術を視覚化する仕事が多く、得意としています。
展示会用のコンテンツやVR/ARを活用したインタラクティブな体験開発も増えています。例えば、エネルギーのビジュアリゼーションや洋上メンテナンス船のシミュレーターを制作しました。これらは複雑な技術を見た人が直感的に理解できるよう工夫しています。

XR領域での取り組みや事例について教えてください。

XR(VR、AR、MR)領域は、UnityやUnreal Engineを使ったインタラクティブなコンテンツ制作に力を入れています。例えば、洋上メンテナンス船のシミュレーターでは、波の荒い海で風車に正確に接岸する操作をVRで再現。ユーザーが実際の操作感を体験できるようにしました。これらは、製品開発の効率化や顧客への訴求力向上に貢献しています。

新技術へのモチベーションは顧客満足

新しい技術を取り入れる楽しさや醍醐味は、どういったところにありますか?

新しい技術と顧客の課題を組み合わせ、解決策を考えるプロセスが一番楽しいですね。例えば、CO2を分解する技術をどう視覚化するか、顧客の話を聞きながら「こう表現すれば分かりやすい」と提案し、反応を見るとやりがいを感じます。クイズを解くような感覚で、技術とデザインの掛け合わせで新しい価値を生み出す瞬間が面白いんです。
お客さまが「かっこいい」「分かりやすい」と言ってくれると、やってよかったなと思います。

日本のものづくりを再び世界のトップランカーへ

今後の展望や目指す会社像を教えてください。

「ラボ」という名前のとおり、自分たちから新しい技術や表現を発信できる会社にしたいです。日本のものづくりは、UI/UXやデジタル化の面で欧米に比べるとまだ遅れていると感じています。日本の強みである「使いやすさ」や「お客さま目線」を生かし、デジタル技術で新たな価値を提供したいですね。
現在は10人程度の組織ですが、もう少し規模を拡大し、アウトプットを増やしていきたいです。クライアントのニーズに応えつつ、クリエイティブの可能性を広げていくのが目標ですね。

AIに頼らず、自分だけの表現や価値観を大切にしてほしい

最後に、世の中のクリエイターへのメッセージをお願いします。

AI生成技術の進化で、高品質なアウトプットが簡単に作れる時代になりましたが、クリエイターには「らしさ」や「哲学」が重要です。AIは道具として使うべきで、頼りすぎると個性や創造性が薄れてしまいます。
デザインには正解がなく、会社ごとに異なる「山」がある。自分だけの表現や価値観を大切にし、それをどうやって形にするかを追求してほしいですね。クリエイターとしての「旬」を意識しつつ、属人的な強みを生かすことが、長期的な成功につながると思います。

取材日:2025年9月9日 

デジタルデザインラボ株式会社

  • 代表者名:鈴置 崇真
  • 設立年月:2011年5月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:3DCGを駆使したプロダクトデザイン支援/UI/UXインタラクションデザイン/新技術・新製品のPRコンテンツ制作
  • 所在地:〒451-0045 愛知県名古屋市西区名駅2-34-20 CK23名駅前ビル4F
  • URL:https://dd-lab.jp
  • お問い合わせ先:https://dd-lab.jp/contact

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