変わりゆく時代の中で ずっと伝え続けたい紙媒体の価値
- 仙台
- 合資会社トイズ 代表社員 若山 修氏
恩師が教えてくれた「流通系チラシ」という原点
まずは若山さんがデザイナーを志したきっかけを教えていただけますか?
きっかけは私が高校時代に出会った姉の友人です。東京に住む姉が夏休みの帰省で、デザイナーの友人を連れてきたのです。私は絵を描くのが好きだったので、姉の友人に作品を見てもらったり、いろんな話を聞かせてもらったりしました。それからどんどんデザイナーという仕事に興味が湧いてきて、高校を卒業後、東京に住む姉の友人を頼って弟子入りし、昼間は、デザイナーとして働き、夜間は、桑沢デザイン研究所で学びました。その姉の友人は、私にデザインの楽しさを教えてくれた恩師ですね。
それからの道のりは?
5年後仙台に移り住み、仙台のデザイン会社に就職をして35歳で独立したのですが、その頃、子どもが10歳を過ぎて、ちょうど子育て真っ只中でした。今振り返れば子どもの成長とともに、自分自身もデザイナーとして、もっと大きく羽ばたきたいという野心がありました(笑)。その後、バブル時代の終焉や、写植・版下からパソコンへと移行する時代の中で、様々な苦労も味わいましたが、自分の歩んできたデザイナーの道を貫きたい!生活のためにも会社を作りたい!という思いが強くなり、2001年に合資会社トイズを設立させていただきました。2名のスタッフで始まった当社も、現在では20代を中心にデザイナー7名が在籍する会社になりました。
現在の主な仕事内容について聞かせてください。
世の中では紙媒体の需要が減少しておりますが、当社では約7割が流通系折り込みチラシの仕事です。どうしてもチラシの折り込み日が重なるため、作業が集中せざるを得ないことも多く、1~2名では裁ききれないボリュームがありますので、当社のような中規模ながらスタッフが7~10名のデザイン会社が重宝されています。制作時間が限られていますので、時間との闘いの中、仕事の配分や、デザイナーの育成の仕方など悩みもありますが、若いスタッフたちが力を合わせ励んでくれているので、とてもありがたいです。
様々なデザインの基礎となる流通系チラシの制作
流通系チラシ制作における魅力と難しさを教えてください。
制作期間が短くスケジュールはハードですし、情報の正確さを求められる大変な媒体だと思います。 私は最初に勤めた会社で流通系折り込みチラシを制作したのがきっかけで現在も続けていますが、他のものをデザインする際にも基盤になることを学べる媒体だと思います。どの商品を小さくして、どの商品を大きくするのか?といったバランス感覚も養われますし、段取りを組んで短い制作期間で進めて行く習慣があるので、他のデザインをやらせても、すぐにできる子が多いですね。 食品関係のチラシを制作していると、どんどんパッケージデザインに、興味が湧いてくるようになって面白いと思います。 今と昔の大変さを比較すると、今の方が上回るかもしれないです。パソコンがない時代はレタリングなどをやっていましたが、業務分担がしっかりありました。でも今はデザイナーが製版の分野までやるので大変だと思います。
若山さんが考える“紙媒体の良さ"についてぜひ教えてください。
そうですね、ウェブ媒体には、便利さや手軽さやスピード感という魅力がありますが、紙媒体には、存在感や価値観があると思います。紙で取っておくことの大切さと言いましょうか。 聞いた話ですが、高齢化社会で、紙媒体の需要が戻ってきていると聞いたことがあります。私もそう感じていて、以前と同じ在り方ではないにせよ、時代のニーズに合わせて紙媒体の良さを伝えていきたいです。
流通系チラシのほかには、どのような媒体に取り組んでらっしゃるのですか?
ネット販売に力を入れており、宮城のご当地グルメを届ける『うまいっちゃ宮城』(http://www.umai-miyagi.com/)を運営しています。ネット販売の勉強にもなりますし、幸い協力会社様もいらっしゃるので、今後も宮城のおいしいものを発信していきたいです。 他に、VVM(ビデオ・ビジュアル・メッセ―ジ),SNSを利用した広告にも取り組んでいて、もっと研究と改良を重ねていきたいと考えています。先日、歯科医院の広告を制作させていただき、定期健診のお知らせを患者さんのスマートフォンへ送るシステムをご提案させていただきました。さっそく活用して、患者さんに喜ばれているようでうれしいです。今後はファッション衣料のネット販売なども視野に入れていて、当社の若手スタッフを中心に「今どきの感覚」を取り入れながら、前向きにチャレンジしていけたらと思っております。
これからも伝え続けたい紙媒体の魅力
デザイナーをやっていて、良かったと思うのはどんな時ですか?
そうですね、40年くらいデザイナーとしてこの業界におりますが、デザイナーであり経営者でもある現在は、純粋にデザインに携わっている時が一番幸せですね。デザインに関しては「まだまだ若い人には負けないぞ」と思っています(笑)。以前は、デザインの塾を開いたり、講師をやらせていただいたこともありました。趣味の音楽が高じて5年くらいスタジオを運営していたこともあります。デザインから少し離れることで、自分の幅が広がり、より一層、本業に励めると言いましょうか。自分にはデザイナーという一本柱があると、改めて実感できる気がします。 また、今は経営者として会社を運営する大変さも感じておりますが、一人ではない喜びも感じております。ある程度社員に安心して任せられますし、やっぱり仲間がいるのは幸せなことです。
最後に今後の展望について聞かせてください。
インターネットの発展と共に、流通系チラシの仕事は、減少傾向にあります。1人1台タブレットを持ち歩く時代が迫っており、今後はより一層ネットチラシへ移行することが予想されます。しかし日本の高齢化社会にともない、紙媒体が見直される兆しもあるので、紙媒体だからこそできることや魅力を改めて伝えられるような仕事をしていきたいです。もう10年以上のお付き合いになる既存のクライアント様との繋がりを大切にして、今まで以上に手厚いお手伝いをしていきたいと思います。 現在、私は64歳なので、70歳を目途に、安定した状態で後継者へ会社を引き継ぎたいと考えております。規律正しく、厳しくもありつつも楽しく、そして、どこへ出しても恥ずかしくないように、若いスタッフを育て、日々頑張っていきたいと考えております。ですから、「絵を描くことが好き」「DTPに興味がある」という元気な若いスタッフにどんどん来ていただきたいです。欲を言えば、男女問わず意欲のある営業マンの方も来てくださったら、うれしいです。
取材日:2016年1月19日 ライター : 桜井玉蘭
企業名 合資会社トイズ
- 代表者名(よみがな): 代表社員 若山 修(わかやま おさむ)
- 設立年: 2001年
- 事業内容: グラフィックデザイン/パッケージデザイン/イラストレーション/キャラクターデザイン/WEBサイト制作/ビデオコミュニケーションツール/ネット通販/写真購入サイト運営
- 所在地: 〒980-0014 宮城県仙台市青葉区本町1丁目6-23 ムサシノ仙台ビルディング 503
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