WEB・モバイル2024.03.27

沖縄、東京、海外を渡り歩き経営者へ。デザイン会社だけれどブランディングにも強いワケとは?

沖縄
合同会社Kivi designfarm 代表
Megumi Gushiken
具志堅 恵
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沖縄の合同会社Kivi designfarm(キビデザインファーム)は、デザイン力を武器にブランディングを手掛ける制作会社。クライアントを伴走することをモットーに、Webサイトやグラフィックはもちろん、ロゴや店舗、商品まで、ありとあらゆるものをデザインします。その一方で、クラウドベースのWebサイト作成ツール「STUDIO」を活用したデザインテンプレートの販売も展開。「ライスワークとライフワークの両輪を大切にしている」と語る代表の具志堅 恵(ぐしけん めぐみ)さんに、どのように会社を切り盛りし、どのような未来図を描いているのかを伺いました。

偶然の出会いに導かれ、フリーランスから経営者となり、ベトナムへと移住を決意

会社立ち上げまでの具志堅さんの経歴について、お聞かせください。

沖縄生まれで、写真の専門学校への進学を機に上京しました。しかし卒業後は写真で食ってはいけないな、と思い、Web制作会社に就職することに。その会社は人気映画の公式サイト制作などの大きな案件を請け負うことが多く、毎日夜中まで働いていました。とても大変でしたが、ものすごいスピードで鍛えられたと思います。当時は「Adobe Flash(アドビ・フラッシュ)」が大流行りで、毎日必死で勉強しながら作り込んでいました。
しかしリーマンショックの影響を受け映画の広告予算が削減されるようになるなど、会社の経営が一気に悪化。社内の業務だけでは立ち行かなくなってしまうからと、私はアパレル系のWebサイトを作る会社へ出向することになったのですが、出向元の経営が依然思わしくなく、退職して沖縄に帰ることに決めました。すると出向先から業務委託の提案をいただいて、沖縄でフリーのWebデザイナーとして、リモートの仕事をスタートできました。

当時はリモートワークがまだ一般的ではなかったですよね?

そうなんです。10年以上前のことなので、もしかしたらリモートの先駆けかもしれません(笑)。そんななか、知人からデザイン会社を作らないかとお誘いを受け、引き受けることにしたのですが、経営のノウハウもなく、自転車操業でやりくりする毎日に。たちまち経営は悪化し、結婚して間もないのに家に帰ることもできず、心身ともに疲弊してしまいました。
そんなときに旧知のクライアントから、ベトナムで家具の会社を作るのでデザイナーとして参画してほしい、という依頼があって。いい機会だと会社を畳み、夫とともにベトナムへの移住を決意しました。

海外の新天地で念願のブランディングの仕事をスタート。沖縄で同志と起業、飲食店を中心にサポート

ベトナムではずっとその家具会社に勤めていたのですか?

しばらくデザイナーとして勤めたのち、ベトナムの日系広告代理店へ転職しました。そこがすごく楽しくて、今の仕事へとつながったんです。
実は私は昔から一介のデザイナーではなく、企画段階から携われるようになりたかったのですが、当時の日本は今以上に学歴社会だったので、専門学校卒の私では代理店への入社は厳しい。しかしベトナムでは学歴は関係ありません。晴れて代理店への転職が叶い、広く自社ブランドを展開しているナショナルクライアントの案件にも参画できて充実した日々を過ごしていました。
3年ほどたった頃、妊娠や出産などが重なり、沖縄に帰ることになりました。再びフリーWebデザイナーとして働いていたのですが、ブランディングの仕事を続けたいという思いは消えなくて。悶々としていたときにブランディングの経験を持つ方と幸運にも出会い、一緒にチームを作ることになりました。再びブランド構築にかかわれるようになりました。

当時の印象的なお仕事を教えてください。

全国にファンを持つローストチキン専門店「ブエノチキン」のお仕事を請け負ったことです。今でこそ有名店ですが、当時はまだ沖縄だけで知られた存在でした。お店のオーナーさんの手腕で急成長を遂げる過程で、私たちはクリエイティブパートナーとして、ロゴやグッズ、サイトの作成などのさまざまなクリエーションにかかわれ、とても良い経験を積めたと感謝しきりです。この仕事の影響からか、コロナ禍からの巻き返しを図る飲食業を中心に多くのオファーをいただけるようになり、今現在お付き合いのあるクライアントの8割は飲食関連です。

ブランディングチームとして十分順調だったようですが、どのような経緯で法人化することになったのでしょう?

携わる案件が大きくなるにともない、法人化した方が信用度が高まるということと、ブランディングの知見やテクニックはもちろん利益的にも蓄積できると考えたからです。
2022年に法人化し、ブランド立ち上げからSNS運用まで一貫して行える体制を整えることを優先し、一緒に仕事をしてきたクリエイターたちとより連携を取りやすいよう、サポーターという名称でパートナーシップを結びました。

どのような方がサポーターとして参画されているのですか?

まずデザイナーです。全員女性で、グラフィックからWebまでそれぞれ得意分野を持っているので、案件によって個々でアサインさせてもらっています。加えてイラストレーターやフォトグラファーなどがいて、ブランディングにまつわるほとんどのクリエイティブを任せていただけるような組織にしています。

会社運営に大切なライフワークとライスワークのバランス。プログラムなしのWeb制作で費用対効果アップへ

現在の事業内容を教えてください。

大きく分けて全部で四つあります。一つ目はブランド確立をサポートするブランディング。二つ目は、制作会社として広告代理店などからデザインのみを受注するパターンです。三つ目は、月極の契約でインハウスデザイナーとしてかかわること。四つ目の軸では、クラウドベースのノーコードWebサイト作成ツール「STUDIO」を活用して、サイトの制作を代理店を通さず直接請け負ったり、採用サイトのテンプレートを制作して販売したりしています。
この四つの事業の中でライフワークともいえるのが、最初に挙げたブランド構築ですが、手間暇が非常にかかるのでそれだけでは会社を運営していけません。ですのでライフワークとは別軸で「ライスワーク」、つまり食べていくための仕事として、Web制作の方も走らせています。私自身Webデザイナー歴が最も長くサクサク進めていけるので、コストパフォーマンスもタイムパフォーマンスもどちらもいいんです。特に「STUDIO」が登場してから、さらに効率が良くなったと感じています。

どのような点で「STUDIO」は優れているのでしょう?

従来はエンジニアがいないとWebデザインはできなかったものが、デザイナーのみで作れるようになった点です。ユーザーにもメリットが大きく、Web制作にかけるコストを抑えられますし、その分の費用をSNS運用などに回せるので、より充実したPRプランを作れます。最近ではWebサイト制作の依頼があれば、ほとんど「STUDIO」を活用したものをおすすめしています。
「STUDIO」の活用法としてもう一つ、テンプレート販売が安定した収入源になっています。今の時代、商品のPRや通販はSNSでまかなえる場合も多いですが、採用に関してはしっかり作り込んだWebサイトの方が反響がいいようで、クライアントからは重宝されています。

ライスワークと並行してのライフワークについてですが、なぜブランド構築の事業を特に大切にされているのでしょう?

多くのクライアントさんに必要だと実感したからです。デザインと一口に言っても「点」と「線」のデザインがあると思っていて、点はロゴやWebサイトの制作、線はそれらを活用した経営の道筋を指します。依頼を受けてクライアントと話をしてみると商品自体、延いては会社自体のあり方そのものに問題があることが多々あり、そんなときは、デザインを「線」と捉えて、経営にまで突っ込んで課題を洗いだします。そして目標まで明確にし、必要な道筋そのものをデザインします。
この時点では制作物はゼロなので、売上もゼロというケースも。しかしクライアントさんが成長すれば売上的にもノウハウ的にも、弊社が得られるものは増えます。とはいえ、手堅い仕事も会社運営には必要なので、バランスを取りながら「ライスワーク」も行っているというわけです。

デザインの力で、人と社会の問題を解決する一翼を担いたい。組織力強化のために雇いたい人材は

今後の目標を教えてください。

「福祉とデザイン」「女性活躍支援」をテーマに、社会貢献できるようになりたいと思っています。例えば社会福祉士の友人がいるのですが、彼女はきょうだい児と呼ばれる、障がいのある兄弟姉妹がいる子どもたちが集えるコミュニティを作りたいと思っていて、私はデザインの力で協力できないかと具体的な方法を模索中です。
直近での目標はThe Brush Upという会社のサービスを広めたいと思っています。この会社は沖縄在住の女優さんが代表者となって、俳優とクリエイターがタッグを組み、企業の課題を解決することを目的としています。
そもそもなぜこのようなサービスが生まれたかというと、沖縄で活動する俳優さんたちが活躍できる場が非常に少ないんです。それを改善したいと代表の女優さんが独自でドラマを制作しYouTubeで発信したところ、評判となりました。この成功をヒントに、組織化してコンテンツの種類や内容を広げ、クオリティを高めようという試みです。私もクリエイターの1人として、その一翼を担えればうれしいですね。
県内で映像制作を行える人材を募り、動画チームも発足できればと考えています。

最後に、どのようなクリエイターと一緒に働きたいと思いますか?

ブランディングに時間を費やすと、どうしても営業面がおろそかになってしまいます。またSNS運用にもなかなか手が回っていないのも現状です。組織としてより強くなるために、営業とSNSなどの運用に長けたマーケターの方に参画していただければとてもうれしいですね。

取材日:2024年2月19日 ライター:仲濱 淳

合同会社Kivi designfarm

  • 代表者名:具志堅 恵
  • 設立年月:2022年10月31日
  • 事業内容:デザインによる問題解決や価値創造、ブランド立ち上げにおけるコンセプト開発、デザイン、SNS、ウェブマーケティング
  • 所在地:〒900-0004 沖縄県那覇市銘苅211-1 ユーカリ那覇208 株式会社hais内
  • URL:https://kivikivi.co/
  • お問い合わせ先:上記HPの「お問い合わせ」より

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