世界に誇る日本のモノづくり産業を映像で伝え、底上げ。単なる「かっこいい」ではなく目指すのは……

奈良
ツクリテラ合同会社 代表社員
Takeshi Fujita
藤田 猛士

製造業・モノづくり企業に特化した映像制作会社として、動画・CG・グラフィック制作、写真撮影、ホームページのデザインなどを手掛けている奈良のツクリテラ合同会社。映像を通じて製造業・モノづくり企業のブランディングの強化、市場の活性化を促し、次世代のモノづくり立国への一助となれたらとの想いで事業を展開しています。代表取締役の藤田 猛士(ふじた たけし)さんは、スチールカメラマンとしてキャリアをスタート。写真スタジオの映像事業部での経験を経て、2019年に自身の会社を立ち上げました。そんな藤田さんに設立までの経緯や現在の事業内容、今後の展望などについてお話を伺いました。

将来の夢はカメラマン。子供の頃からの憧れていた夢が現実に

立ち上げまでのキャリアについて、お聞かせください。

もともとは、スチールカメラマンからスタートしました。祖父が写真をやっていた影響から小学校の卒業文集には「将来の夢はカメラマン」と書くほど写真が好きで、中学時代は写真部に所属していました。高校時代には映像に興味を持ち、大学は写真学科のある九州の大学に進学しました。
卒業後は、カメラマンのアシスタントとして5年修業し、一般企業の営業職を経て、フリーランスのカメラマンとして活動。そんななか、関西に戻ることになり、東大阪市にある写真スタジオの「株式会社2055」に入社しました。私自身フリーランス時代から映像制作をしていたこともあって、私の入社をきっかけに映像事業部ができ、10年間勤務しました。ここでは、カメラマンとしてだけでなく、フリーランス時代から携わっていた照明、台本制作、コピーライティングといった映像制作全般の業務も担当しました。「株式会社2055」に入社したことで、より大手のクライアントからの仕事や、3DCGなどよりクリエイティブな仕事を経験することができました。

会社を設立した経緯を教えてください。

フリーランスの頃から独立志向はずっとありましたので、10年を区切りに退職し、19年に「ツクリテラ合同会社」を設立しました。当初は、大阪のお客さまが多いこともあって、東大阪市に事務所を構えましたが、コロナ禍になったため、商談や打ち合わせは大半オンラインに。この状態なら、どこでも仕事ができるのではないかと思い、23年11月、自宅付近の奈良県生駒市に拠点を移しました。(※取材時の10月16日は東大阪の事務所)

「作り手」と「作り手」が手をつないで業界を盛り上げていく。社名に込めた想いを形に

事業内容についてお聞かせください。

弊社は、製造業・モノづくり企業に特化した映像制作会社です。映像制作以外に、スチールの写真撮影、動画・CG・グラフィック制作、ホームページのデザインも手掛けています。基本的には、1人企業ですが、お客さまからの要望にあわせて外部のブレーンを使うときもあります。
「モノづくり」には、伝統工芸品、電子製品、アパレル、食品、まちづくり、地域活性化にいたるまで、さまざまな業界があります。特に日本のモノづくりは、使う人の立場に立って考え尽くした付加価値の高い製品づくりをされています。
「ツクリテラ」という社名は、「作り手たち」という意味です。私自身も「作り手」ですし、お客さまも「作り手」であることから、互いに手を取り合って、お客さまの製品をビジュアルでPRし、業界を盛り上げていきたいとの想いを込めて名付けました。ロゴは、手と手をつないでいるマークにしています。

「作り手」という共通点を持ちながら、お客さまと一緒に進んでいくということですね。

昔の日本は「モノづくり大国」といわれるほど世界から注目されていましたが、現在は海外に押されてしまい、技術的には優れていても、若者たちが目指したいという業界でなくなってきつつあります。しかし、職人一人一人は、良い技術を持っており、その会社にしか作れないものがたくさんある。それが埋もれてしまわないように、映像や写真といったツールでアピールしていくのがわれわれの使命だと考えています。

全国のあらゆるモノづくりを後押し。きっかけは、大学の卒業制作で撮影した刀鍛冶

製造業に特化しようと思ったきっかけは?

大学の卒業制作で被写体として撮影したのが刀鍛冶の人だったんです。一から砂浜に行って磁石で砂鉄を集め、それを溶かして鋼にし、何度も塊を作っては伸ばしていくといった工程を撮影するなか、モノづくりの仕組みに興味を持ちました。モノづくりの世界は、業界が違っていても構造の流れに共通点があります。そんな点に魅力を感じたのがきっかけです。

どんな企業からのご依頼が多いですか?

全国各地のさまざまな企業からご依頼をいただきます。インターネットで「ものづくり 映像」と検索すると、どうやら弊社が上位表示されるようなんです。それをご覧になった全国の製造業の企業から問い合わせをいただき、各地に散らばっている工場に出向いて撮影しています。
テレビの撮影の場合は、映像のカメラマン、演出、録音、照明と、それぞれの役割を持つプロが集まりますが、スチールのカメラマンの場合はストロボ設定などもすべて自分でやってしまいますので、基本的には私1人で行くことが多いです。映像は、写真の連続です。1枚の絵をきれいに撮ることができなければ、映像もきれいに撮ることができないと思っています。

「モノづくりの足跡」を映像で残していくことが何よりうれしい。「すべてに丁寧」を心がけ

映像を撮りたいと思ったきっかけは?

小学生の頃に「CMNOW」という雑誌を立ち読みしたときに、CMの作り方に興味を持ちました。当時はCGがない時代でしたので、不思議な映像もアナログ手法で撮影していたわけですが、そういった舞台裏を見て、自分もいつか映像を撮りたいなって。同時に文章やキャッチコピーで思いがけない広告の言葉を考えるコピーライターの仕事にも憧れたのもこの時期です。
今の仕事では、制作の過程で台本やシナリオも自分で手掛けることが多いです。コピーライターが書いたものを提供いただくこともありますが、映像的な目線での手直しを頼まれる際には私のほうでリライトしています。きっとフリーランスだけでやっていたら、こういった経験はできなかった。前職でそういった経験を積ませていただいたことに感謝の思いでいっぱいです。

この仕事をしていて良かったと思うのはどんなときですか。

われわれの仕事は、テレビのように視聴率が出るわけではないので、あいまいな部分もありますが、お客さまから「期待以上の良い映像でした」と感謝の言葉をいただいたり、リピートしていただいたりすると本当にうれしいです。
また、クリエイター視点では、思った以上にきれいな絵が撮れたときです。映像の場合は、いくら形に残るとはいえ、あくまでデータとしての一つのファイルにしかならず、手に取って触れることができません。しかし、お客さまの製品は、肌触り、動きのなめらかさ、重みを手に取って感じられます。そういった手に取って触れることができるモノづくりの足跡を映像で残していくことに大きな喜びを感じています。

大切にされている信念はありますか。

「すべてに丁寧であること」です。お客さまのなかには、人生かけて一つの技術を追い求めている人もたくさんいます。だからこそ、私自身もきちんとしたモノを作らないと失礼です。自己満足にならず、常にお客さまのことを意識しながら、納得のいく作品を提供していきたいと思っています。

求める人材は「できる人よりやりたい人」。互いに高め合っていけるチームに

現在、抱えている課題はありますか。

弊社のお客さまは、リピーターや紹介が多いのですが、新規に力を入れていくためには、1人企業であるがゆえ、仕事が増えすぎたときにどう対応するかを考えていかねばなりません。そのためには、若手人材を育成する会社組織にしていく体制を整えることが課題だと考えています。
最近、副業で仕事をしたいという問い合わせをいただくことが増えてきて、YouTuberの真似事のような作品を送っていただいたくケースも多いです。現代は、フイルムの時代とは違ってカメラの性能も良くなってきましたので、センスが良ければ、見たままのものを映すことができます。
しかし、われわれの仕事は、単に「かっこいい映像」を作れば仕事になるということではありません。たとえば企業のVPだと、3〜5分といった時間のなかで、きちんとお客さまの課題を掘り下げ、ターゲットに届けるというストーリーを盛り込んでいかねばなりません。映像を作るその先にはお客さまがいて、お客さまにもお客さまがいる。そういったことを理解したうえで、映像制作に取り組んでいくことが大切です。
また、現場に出ると、突発的なトラブルが必ずあります。そんななかで何をどう形にしていくか、その場その場で対応していくには、最終目的が見えていないとルートを選べません。そういったことを後継者である若い人たちに伝えていきたいですし、それができる人材をどんどん育てていきたいです。

今後、どんな会社にしていきたいですか。

若い人たちの考えを常に吸収しながら、互いに高め合えるチームを作っていきたいです。そして、ゆくゆくは、私がいなくてもツクリテラの目指す映像づくりを実現してくれる人材を輩出していきたい。求めている人材は、「できる人より、やりたい人」。好奇心旺盛な人がいいですね。ゴールに向かって突き進んでいく熱い思いを持っている人と一緒に仕事がしたいです。

映像はあくまでもツール。お客さまが伝えたいことを伝えることが大切

クリエイターを目指している人たちへメッセージをお願いします。

クリエイティブな仕事は、その分野が好きだからこそ続けられるわけですが、これからクリエイターを目指す人には、自身の分野以外のことに対しても興味を持ち、「多趣味」であることをおすすめします。そうすれば、きっと将来、自身の作品を作るうえでも、お客さまとのコミュニケーションの場面でも、さらに厚みが出てくると思います。私自身も何でもやりたい性格なので、カメラだけ、編集だけということではなく、お客さまの課題を解決するためには新しいことを何でも吸収していこうと、興味の幅を広げてきました。
映像はあくまでもツールであり、お客さまが伝えたいことを伝えることこそが大切です。「自社の製品や技術を伝えたいけれど、うまく伝わらない」「自分で撮影した動画を編集したいけれど構成が難しい」、そんな困りごとを抱えている企業さまは、映像制作のプロとしてコンサルティングいたしますので、お問い合わせください。また、映像業界に興味がある人も、ぜひ気軽にご連絡ください。

取材日:2023年10月16日 ライター:堀内 優美

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

ツクリテラ合同会社

  • 代表者名:藤田 猛士
  • 設立年月:2019年6月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:写真・映像の撮影、企画及び制作/コンピューターグラフィックス映像の企画及び制作/パンフレット等、グラフィックデザインの企画及び制作/各種コンサルティング業務
  • 所在地:〒630-0223 奈良県生駒市小瀬町915−1 102
  • URL:https://tukritella.co.jp/company
  • お問い合わせ先:07-4385-4887 contact@tukritella.co.jp

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