WEB・モバイル2023.09.27

クーポン業界に新風。ホームレス生活を経験した代表がつくる、人を大切にするITサービス

広島
SKY SOCIAL株式会社 代表取締役
Shohei Ikeda
池田 昌平

「割引交渉権」「裏メニューの提供」など、個性的な内容のクーポンを多数掲載する地域特化型クーポンアプリ「みせとく!」。運営する広島のSKY SOCIAL(スカイソーシャル)株式会社の代表取締役・池田 昌平(いけだ しょうへい)さんは、クーポンを登録するお店のユーザビリティや効果を模索し、この形にたどり着きました。「一時は橋の下でホームレス生活を送っていた」という波乱万丈な経歴を持つ池田さんに、“お店ファースト”という考え方にいたった経緯や目指すサービスのあり方をお聞きしました。

単に誘客にとどまらない、店舗に必要とされるサービスを提供。SDGs達成の一助にも

御社ではどんなサービスを提供されていますか?

弊社は「みせとく!」という地域特化型のクーポンアプリを運営する会社です。飲食店や美容関連だけでなく、アパレルショップやスーパー、公園、観光施設など多様なスポットで使えるクーポンを掲載しています。
またアプリの利用登録企業さまを対象に、Webサイト・ECサイト制作、映像制作、プロモーションなども手がけています。

「みせとく!」にはどのような特徴がありますか?

利用登録企業さま向けのデータビジネスに力を入れていることと、広島という地域に特化していることです。
クーポンでの店舗サポートというと、単に誘客をイメージされることが多いのではないでしょうか。このアプリは利用者の動向調査に特化しており、何曜日の何時ごろ、どういう性別・年齢の客層がどのように動いているかといった行動来店予測データを把握できるよう設計しました。
お店側はそれらを参考にすることで、立地に合ったターゲット設定や繁忙日・時間の把握、それに応じた食材や人員の確保、最適なタイミングでのビラ配りなどが可能になります。これらのデータはマーケティング戦略の基盤となり、単に誘客にとどまらず経費削減やプロデュースなどにつながります。食品ロスの削減にも役立ち、SDGsの達成に貢献すると言えるでしょう。
お店側が必要としているサービスを徹底して検証し、この形にたどり着きました。今も利用企業さまにヒアリングしながら、サービスの改善を続けています。
もちろんエンドユーザーに楽しくお得に使っていただける工夫もしています。検索いらずでGPSの位置情報に基づき、近くのお店のクーポンを紹介。居酒屋さんの「100円の位四捨五入」など、個性的な内容のクーポンも多いんですよ。

実家には頼れない。退路を断って臨んだチャレンジで極限状態に

会社を立ち上げる前は、何をされていましたか?

私は島根県出身で、以前は地元で大手の金融機関で営業職に就いていました。成績は悪くなかったのですが上司と考え方が合わず、親の反対を押し切って退職。資格を取得して心理カウンセラーとして独立しました。
地元の大手企業を辞めたことで親は大激怒し、勘当同然で広島で開業。起業の知識が何もなかったため当初はまったく依頼が入らず、すぐに行き詰って家賃も払えない状態になりました。橋の下でホームレス生活を送ったのはそのころです。実家にも頼れず極限状態で、精神的におかしくなりかけました。
途方に暮れていると、知り合いの飲食店の方が時おりまかないを食べさせてくれて、お風呂や宿泊場所を貸して助けてくれました。仕事も紹介してもらい、大家さんに謝ってアパートに帰ると、大家さんは「家賃よりも生きているかが心配で声をかけていた」と言ってくれました。本当に周りの方の温かさがありがたかったです。この経験から学んだことは多く、人生の転機となりました。
その後、ある会社の社長秘書に採用され、社長室長としてWebサイト制作から車の運転、資料作成、出張手配、マーケティングまで、会社のほぼすべての業務をこなすようになりました。
寝る間もなく働く毎日でしたが、その社長からは「ありがとうの数がお金に変わる。徳を積みなさい」という考え方をはじめ、大事なことをたくさん教わりました。会社が海外に移転するタイミングで退職しましたが、「相手が嬉しいと思うことをしよう」と強く思うようになったのは、その社長のおかげです。本当に感謝しています。それが「みせとく!」の構想につながりました。

レッドオーシャンに飛び込み、独自の立ち位置を形成。「実現したい」という思い大切に

会社を立ち上げてみて、イメージと違ったことはありましたか?

実際にクーポン業界に飛び込んでみると、ものすごく大手の競合が多いレッドオーシャンで驚きました。会社の立ち上げからここまでの2年ほどの間に、失敗もたくさんしました。
ただ、弊社の提供するサービスを評価され、ひろしまサンドボックスの「RING HIROSHIMA」、毎日みらい創造ラボの「アクセラレーションプログラム」など、さまざまな支援事業に採択いただいてきました。広島から「ユニコーン企業(評価額が10億ドルを超える未上場のスタートアップ企業)」を10年間で10社創出しようという「ひろしまユニコーン10」プロジェクトの候補企業に選ばれた時は、嬉しかったですね。
そうした事業に採択されると、同じ目線で成長を志すスタートアップ企業との繋がりができるという点も魅力です。

実際の作業はどのように進めておられますか?

弊社は正社員を雇用しておらず、常勤スタッフは私だけです。社外にダブルワークで協力してくれているパートナーがいます。
実際のアプリ開発や撮影・編集などの業務は、信頼できる企業と秘密保持契約(NDA)を締結して対応しています。

どのようなクリエイターと一緒に働きたいですか?

一緒に働く人は、芯がある人がいいですね。弊社はあくまでスタートアップ企業なので、自分でやり方を模索したりや努力を必要としたりする場面が多く、嫌なこともあるかもしれません。それでも「これを実現したい」という芯があれば、続けていけるんじゃないでしょうか。その思いをぶらさないでほしいです。
また、自分のアイデアを何かの形でアウトプットし、発信できる人は強いと思います。アイデアって寝ている時や運転している時、歩いている時などふとした瞬間に下りてくるんですよね。そうしたものを大切にして、消える前に形にしてほしいです。今の時代、クリエイターもたくさんいますが、発信を続けていれば、自分のニーズにマッチする人の目に留まるかもしれません。以前、Instagramでシンガーソングライターの方にCMソングを依頼したことがあります。こちらから声もかけますし、捕まえにいきますよ。

AI分析による最適化した情報を提供するサービス展開

今後「みせとく!」をどのように成長させていきたいですか?

今期は「AIコンシェルジュ」を実装する予定です。例えば、髪が傷んできたなと思ったときに、カットやカラーを任せている普段の美容室では物足りないことがあるとします。そんな時にトリートメントに強いお店を紹介してくれるなど、お店の強みとユーザーのニーズをマッチングさせてくれる機能があれば嬉しくないですか?
普段検索する店舗の傾向からAIがお勧めを紹介する機能で、エンドユーザーにアプローチしていきたいです。
また、サービス提供企業との提携も増やし、事業規模拡大が加速させたいです。現在は広島でサービスを展開していますが、全国展開も視野に入れており、150店のクーポン掲載店を4,000店まで増やしたいと思っています。
同時にサービス提供地域にカメラを設置し、人流分析に取り入れることで、データの正確性向上を目指します。膨大な数のカメラと大容量のデータベースが必要なので、すぐには実装できませんが、いずれは取り入れたいと考えています。

中身のあるITサービスに必要なのはアナログサポート?サービスで広島へ「恩返し」

今後のビジョンを教えてください。

企業さまに実際にITに触れてもらうことで、デジタル格差を縮めたいです。例えば現時点でITリテラシーがなくても、触れて慣れていけばリテラシーは上げられます。
そのために必要となるのが、実際にお店を訪問して対面で使い方を指導するような、アナログなサポートですね。結局雑談の中にしか本当の悩みは出てきませんから、そこで現場の悩みを抽出したり、施策を提案したりしていきたいです。
費用対効果はとても悪い作業ですが、そこをおろそかにすると中身のないデータになっていきます。どんなに便利なサービスも、結局使うのは人。人を大切にしないITやDXは、意味がありません。
そこに力を入れていくため、高級ホテルの人事教育をずっと担当してきた人と一緒に、今年から人材教育プログラムの構築を進めています。

会社としては、どのような成長を遂げていきたいですか?

弊社の企業理念は、「すべての人のサンドボックス」です。ホームレス生活を送ったこともある私だからこそ、誰かが本当に困ってそこに行きつく前に受け止めてお手伝いができる受け皿になりたい。
将来的には株式上場を目指しているのですが、東京証券取引所では、新規公開の記念に鐘を5回ついてお祝いすることをご存じですか?弊社が上場する際は社員だけでなく、ユニコーン10プロジェクトでお世話になっている県庁の方など、初期から弊社に関わって応援してくださった方々みんなをお連れしたいんです。
広島から世界に通用するような高度なIT技術やサービスを発信して大きな成功を収めれば、私が本当に困っている時に助けてくれた広島の人たちへの恩返しにもなるかもしれません。これからもコミュニケーションや人とのつながりを大切に、成長していきたいです。

取材日:2023年8月16日 ライター:進藤 真由美

SKY SOCIAL株式会社

  • 代表者名:池田 昌平
  • 設立年月:2021 年5 月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:クーポンアプリ「みせとく!」の運営、Webサイト・ECサイト制作、映像制作、プロモーション
  • 所在地:〒730-0828 広島県広島市南区京橋町1−7アスティ広島京橋ビルディング
  • お問い合わせ先:082-909-2326
  • URL:https://www.sky-social.com

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