ストーリーを創る・紡ぐ。心を動かす映像表現を武器に ブランディングに挑戦する

名古屋
株式会社muvin 代表取締役
Tetsuya Murasaki
村崎 哲也

映像業界で多彩なスキルを獲得し、ストーリーの力で心を引き込む映像作品を紡ぎ出す株式会社muvin(以下、ムーヴィン)。代表の村崎哲也(むらさき てつや)さんは、映像クリエイターとして独立し、同社を設立しました。“感動する映像を生み出すための4原則”をまとめた著書も出版した村崎さんは、心を動かす“物語”を大切にしているんだとか。そのような思いにいたった経緯とは。同社の強み、著作や講師を通じたクリエイター教育への想いなどをお聞きしました。

大好きなテレビ番組の作り手になりたくて

村崎さんの学生時代の夢を教えてください。

高校生の頃はダウンタウンやとんねるず、ウッチャンナンチャンなどのバラエティ番組が全盛期で、その作り手になりたいと思っていました。そのため、岐阜県高山市の高校から専門学校名古屋ビジュアルアーツに進んで映像を学び、名古屋で就職して企業のPV(プロモーション映像)やブライダル撮影などを経験しました。

機材一式を自分で揃え、フリーランスとして出発

そこからフリーランスになられた経緯は?

その頃は映像機器が高額で、業務用の映像システムは1000万円以上するのがあたりまえの時代でした。しかし僕が21歳の時にSONYのVX2000という小型のビデオカメラとMacの映像編集システムが発売されたのを機に個人でも映像編集ができるようになったんです。当時はまだ会社員でしたが、自腹で70万円ほどかけてその一式を購入しました。

機材一式を揃えて、最初はどのように仕事を獲得していったのでしょうか?

当時は演劇にも興味を持っていたので、劇団に飛び込みで電話して「タダでいいので撮らせてください!」とお願いしました(笑)。今のようにスマホで気軽に映像が撮れる時代ではなかったので、劇団としてもメリットが大きく快諾してくれました。それをきっかけに口コミで映像の撮影と編集の依頼が入るようになり、22歳で会社を辞めてフリーランスの活動をスタートしたんです。

そこからのキャリアを教えてください。

立ち上げから1年ほどはアルバイトを掛け持ちして、独学でAfter EffectsなどのCGも学びました。でも、高校時代に抱いたテレビ業界の夢をやっぱりあきらめたくなくて、テレビ局の派遣スタッフとして再び働き始めました。23歳の頃です。

テレビ局では、どのようなことを吸収できましたか?

そのテレビ局では、主に報道番組の夕方のロケ撮影を担当しました。そこで本物の映像技術をいろいろと吸収することができました。独学で学んできた撮影・編集と違い、テレビ番組は失敗が絶対に許されません。ミスが出ない仕組みを考え抜き、保険をいくつも用意して撮影に臨んでいました。
テレビ局でたくさんのことを学んだのですが、2年ほどして「このまま報道系のカメラマンを続けていくのか?」「それとも違う道を進むのか」と思い悩んだ結果、最初から最後まで1人で作り上げる映像作家の道を歩むことを決心したんです。

密着ドキュメントのカメラマン経験が転機に。ブライダル映像で軌道、法人に

その後はどのようなプロジェクトを?

フリーランスに復帰した直後に知り合いから声がかかり、ラジオDJで有名なクリス・グレン氏の専属カメラマンに挑戦しました。ヘリコプターのみを使って日本からオーストラリアヘ冒険するという、およそ40日のプロジェクトに密着したのですが、途中、ヘリがジャングルに不時着するというアクシデントに見舞われながらも与えられた仕事を完遂することができました。
新たな経験で自信をつけ、これまでに身につけた映像技術でアルバイトなどもしながら、27歳で完全に独り立ちを果たしました。

10年以上フリーランスでご活躍されてから法人化した理由はありますか?

フリーランスに専念するようになってからは主にブライダルの映像作品を手がけ、スタッフも雇えるくらいに事業が軌道に乗っていきました。このままフリーランスでいるほうがリスクは少ないのですが、将来的にはチームを作って活動していきたいという気持ちが固まり、覚悟を決めて法人化したんです。法人化したことで、お客さまとも対等なパートナー関係を築けるようになりました。

心を動かす映像表現にとことんこだわる。専門書出版で講演依頼など舞い込む

「muvin」という会社名の由来を教えていただけますか?

ブライダルの撮影・編集を通じて、感動的な映像が好きなのだと実感しました。会社の方向性としても感動的な映像を推していきたいと考え、move(心を動かす)というキーワードを思いつきました。
ただ、そのまま使っても面白くないのでいろいろ考え、現在進行形「moving」の発音である「muvin」が気に入りました。小文字で書いた時の流れるような美しさにも惹かれました。オリジナリティを感じていただける社名だと思っています。

御社が手がけている事業を教えてください

映像製作を主な事業としています。長年携わってきたブライダル系と舞台撮影のほうは安定しているため、今後は企業PVのボリュームを増やしていこうと働きかけています。Web制作会社やWeb系の広告代理店とタッグを組んだり、異業種交流会に参加したりしてつながりを広げています。YouTubeチャンネルを開設して、映像ノウハウの配信も始めました。

村崎さんは映像に関する本も出版されていますよね?

「伝わる映像 感情を揺さぶる映像表現のしくみ」という著書を幻冬社から出版しています。これは、私がこれまでの経験を通じて獲得した、感動する映像を生み出すための4原則を記した本になります。「人を感動させるにはどうしたらいいのか?」を徹底的に追究し、ロジカルにまとめました。
本を出した反響も大きく、読んでくれた大学の先生から講演の依頼をいただいたり、推薦入試の課題図書に指定いただいたり。Yahoo! JAPANの社内向けクリエイターズプログラムにも登壇の機会をいただき、著書に感動したスタッフの方から“ふせん”だらけの本を見せてもらって私も感動しました。

感動を生み出すための、人の力と人材教育。映像製作をワンストップで

講演に加え、講師もされています。講師をするメリットなども教えてください。

講師も長年やってきたのですが、やはり教えることで自身の理解が深まるというのは大いにあると思います。
また、映像は人が見るものなので、どれだけ技術が進んでも結局は人の力が必要です。そしてディレクションやジャッジメントの鍵を握るのは、やはり教育。チームとして大きな仕事をするためには、人材教育は絶対に避けられないと思っています。

御社の強みはどのようなところにありますか?

ムーヴィンの強みは、経験と技術に裏付けられた懐の深さにあります。これまでにあらゆるジャンルの映像作品を手がけてきたので、どのような依頼が来ても柔軟に対応できます。また、企画から撮影、編集、CGまでの一連の経験があるため、映像作品をワンストップで作れます。

映像作品を作るうえでこだわっていることは何ですか?

「ストーリーを創る・紡ぐ」ことにこだわっています。昨今はビジュアルを重視してストーリーのことはあまり考えない映像表現が多いのですが、私は、人の心を動かすのはストーリーだと考えています。しかし、ストーリーはパッと目につくものではないため、その価値が埋もれがちなんですよね。
作品のテーマや背景、登場人物のキャラクターから何かを見つけ、それを物語に落とし込んで共感を呼び込むというプロセスを追求しています。感情に訴えかける山場を「カタルシス」と呼びますが、インタビューもカタルシスにつながるような話の引き出し方を心がけています。
企業PVの制作現場では、お客さまが気づいていないような魅力を見つけて、引き出すことも大切にしています。

本質を捉えたチャレンジが成長を後押しする。YouTube発信にも力

協業するクリエイター、パートナーに求めるのは、どんなことでしょうか?

協業するパートナーに求めるのは「チャレンジする気持ち」です。常に新しいチャレンジをしている方と一緒に仕事がしたいですね。
一概にチャレンジといっても、なんでもやればいいというわけではなく、本質を捉えたチャレンジが重要です。外してはいけない根っこを守りながら、チャレンジするって実はすごく難しいことなんです。

今後の展望をお聞かせください

コアとなる社員メンバーと協業パートナーをバランスよく増やしていきたいという気持ちがあります。先ほど話したように企業系の案件を増やしていき、より上位のブランディングを手がける立場で、企業のパートナーになるのが目標です。
YouTubeの活動も活発化させていく予定です。YouTubeで映像ノウハウを発信しつつ、リアルとオンラインを組み合わせた新たな学びの場も創造していく予定です。

真逆のフィールドから多くを学び、壁を破るヒントをつかむ

最後に、クリエイターにアドバイスをお願いします

映像の勉強をしていると、いつのまにか偏りが出てきます。得意分野を伸ばすのはとてもいいことなのですが、それでも壁が訪れる時が必ずやってきます。そんな時はぜひ、真逆の領域と思うようなところを学んでみてください。たとえば、感動的な映像が得意だったらバラエティにチャレンジしてみるとかです。真逆の方向を学ぶことで、思いもよらぬ発見があるはずです。それが、壁を乗り越えるきっかけになることもあります。
バランスを大切に映像制作のさまざまな領域を学んで、ぜひチャレンジを続けてください。また、クリエイターにとって好奇心はガソリンのようなもの。多くのものに興味をもって、たくさんの体験をしてください!

取材日:2023年6月6日

株式会社muvin(muvin inc.)

  • 代表者名:村崎 哲也
  • 設立年月:2017年8月
  • 資本金:500万円
  • 事業内容:映像制作、舞台撮影・ライブ配信
  • 所在地:〒451-0052 名古屋市西区栄生2-4-3 705
  • 電話番号:052-700-2106
  • URL:https://muvin.co.jp
  • お問い合わせ先:

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