WEB・モバイル2023.08.23

「成功するはずがない」と言われて逆に成功を確信。公平な受験環境を目指し、全国360会場でDX化を推進

東京
株式会社シー・ビー・ティ・ソリューションズ 代表取締役
Koji Noguchi
野口 功司

人生を左右する資格・検定の市場をけん引。東京の株式会社シー・ビー・ティ・ソリューションズは、受験者の申込みや決済、試験監督、採点といった試験運営の委託サービスを中心に、成長し続けている企業です。「誰もが公平に受験できる環境を作ろう」と設置された同社のテストセンターは47都道府県に360カ所(2023年6月現在)。資格・検定の主催と、人生を変えようと願う受験者の架け橋となっています。創業当初から試験の「DX化」に取り組み、現在はAIを駆使した「カンニング防止システム」などを研究している同社の見据えるビジョンとは。代表取締役・野口 功司(のぐち こうじ)さんに、日本社会における資格・検定の意義を、来歴やクリエイターへのメッセージとともにお聞きしました。

誰もが公平に「資格・検定」を受けられる環境を作るために。7回の転職を経て

大学卒業から会社設立までに、7回の転職を経験されたとは驚きです。

元々、小学3年生で将来の夢を社長と決めて、プログラミングの勉強をはじめたんです。それがあって大学卒業後に宮崎県から上京したので、経営者に必要な知識を積もうと転職を繰り返していました。
企画やマーケティング、経理、人事、法務と幅広い職種を経験しましたね。ほとんどの会社で MVPをもらってから辞めたので、その企業には迷惑だったかもしれません(笑)。学べるものを学び、自分なりに満足したら「次の会社へ行こう」と決めていました。

転職を重ねる中で、資格・検定市場に可能性を見出したのでしょうか?

そうです。就職した当初は、経営者になったとしても「どの産業なら勝てるか」は分かっていませんでした。1社目の富士ソフトABC株式会社ではSEとして資格・検定のシステム作りを担当して、2社目の日本オラクル株式会社はマーケティング職で、同社運営のデータベース管理システム「Oracle Database」の独自資格「オラクルマスター」の主催者側として資格の普及にたずさわりました。
決定的だったのは、3社目のPearsonVUE株式会社です。外資系の同社が日本に参入してきたタイミングで、営業責任者として「CBT(Computer Based Testing。コンピュータを使った試験方式)」の普及に関わったんです。当時、遠隔で試験を受けられるビジネスモデルは日本では浸透していなかったのですが、素晴らしいシステムだと直感したんです。いずれ日本で「誰かがやらなければいけない。ならば、自分がやろう」と思い、必要な知識を蓄えたうえで独立を決意しました。

「自分がやろう」と決意した背景には、相応の覚悟もあったのかと思います。

教育事業の社会貢献性はもちろん、資格・検定が日本社会で「必要なもの」だと思ったんです。日本では、資格がなければ仕事に就けない職種や、個人の能力を証明するための検定がたくさんあります。例えば、社会人として「経理の仕事に転職したい」と思い「日商簿記検定」を受験される方もいますよね。海外の文化とは異なり、義務教育から高校、大学へと進学し、社会人としてようやく「自分に何ができるか」を定める風潮のある日本社会では、資格・検定がきわめて重要ですし、誰もが公平に受験できる環境を作らなければいけない。その思いも、独立の背景にありました。

「成功するはずがない」の声で「成功を確信」?都市のみならず、全国各地に試験会場を設置

現在、どのような事業を展開されているのでしょうか?

47都道府県で360カ所のテストセンターを設けていて、国家試験から民間検定まで、210団体ほどが主催する資格・検定を受験できる仕組み「CBTスキーム」を提供しています。テストセンターは主要都市に限らず、例えば、北海道であれば釧路、函館、帯広。沖縄では石垣島や宮古島にもあります。

会社は15年目ですが、創業当初は苦労もあったのでしょうか?

日本ではまだほとんど認知されていないビジネスモデルでしたし、設立当初は周囲から否定されました。独立した時点で、試験の申込みや決済、テストセンターの予約、採点などをITで一括管理するシステムを構想していて、知り合いの成功者達に出資をお願いしたところ「絶対に辞めろ。こんなビジネスが成功するはずがない」と、かなりの人に言われたんですよ。ただ、「できない」と判断されるのは逆に考えると「マネする人間がいない」ということですし、むしろ成功を確信しました。

現時点まで、どのような成長をたどってきたのでしょうか。

最初の契約100団体目までは全て自分で新規開拓してきました。初めて契約締結できたのがJR九州の今はなき「九州鉄道検定」、次がエイベックス株式会社の「ダンス・ストリート検定」でした。怖いもの知らずで営業したのが良かったです。
47都道府県にテストセンターを設置できたのは、4〜5年目です。「日本漢字能力検定」など、老舗の資格・検定と契約締結できるようになったのは7〜8年目でした。現在は、コロナ禍を経たDX化推進の追い風も受けて「基本情報技術者試験」や「アマチュア無線技士」など、国家試験などもCBT化されております。
資格・検定には人生を変える力もありますし、日本の将来を考えるのであれば、経済の東京一局集中型を避け、地方でも多くのビジネスが生まれるべき。資格や教育制度は東京だけでなく全国どこでも受験できるように整備するべきなんです。当社がその教育インフラを全国規模で整備していきたいですね。

国内市場をリードしてきたからこそ実現できる「DX化」。時代の変化に負けず、最高の試験環境を追求

直近ではどのような取り組みがありますか?

受験手続きやテストセンターでの試験運営など、あらゆる側面で創業当初からDX化を実現しています。今まさに研究しているのは、テストセンターにおける試験監督のDX化です。AIを駆使した自動のカンニング防止システムはすでに作っていて、受験者の不正な動きを感知してピンポイントで、その瞬間を捉えたカメラの映像を確認できる技術は実現しています。
ただ、現状では完全無人化は難しいと判断していますね。カメラによるカンニング防止システムのデメリットは、映像の範囲外で不正が行われると確認できないところにあるんです。現時点では、AIと人間のダブルチェックで、目視で確認する人間をAIでサポートする仕組みが理想だと考えています。また、試験問題の作成でもDX化を図っていますね。

「試験問題の作成」では、どのような取り組みがあるのでしょうか?

テストセンターでは「随時試験」として365日、何らかのテストを受けられるようにしているのですが、ランダムに出題される問題の難易度にはバラつきがあるんです。例えば、昨日の受験者は「平均70点」の試験を受けたのに、今日の受験者は「平均25点」の試験を受けたとなると、不公平になってしまうのは想像がつきますよね。それを解消するべく、正答率や問題の品質を一定に保てる技術を研究、開発しています。

研究、開発の余地はまだまだありそうですね。

そうですね。今後、対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」の普及により、カンニングもより巧妙になってくるでしょうし、こちらも進歩を続けて最高の試験環境を提供していかなければと考えています。日本における資格・検定のDX化をリードしてきたからこその自負もありますし、可能性はいくらでも広がると思っています。

「日本で一番働きがいがあり、カッコいい会社」目指して。“社員ファースト”の考えから社内にバー?


社内に設置されたバーカウンター

バーの裏にはダーツボードや卓球台も

御社では、どのようなクリエイターを求めていますか?

自分の仕事が「世の中に影響を与えている」と喜べる人。そして、資格・検定の業界をリードする立場なので、最新技術に貪欲な人を求めていますね。弊社のスタッフは「プロフェッショナル集団」だと自負しているのですが、毎週「勉強会」を自主的に開催するなど、スタッフ同士での技術交換も活発です。
研究が大好きで試験問題に関するアルゴリズムを追究している人間もいれば、私の承諾なしに客先でのリクエストを受けて新機能を導入してしまう人間もいるほどですから(笑)。裁量もある程度は委ねていますし、優れた先輩がいて、その下にいる後輩も自然に育つ環境になっているかと思います。

社内にはスタッフが交流できるバーを設置。育休・産休が取りやすい環境づくりも心がけるなど、福利厚生が充実されています。

僕らが目指しているのは「日本で一番働きがいがあり、カッコいい会社」なんです。80坪もあるバーはその一環で作ったもので、定時上がりの交流スペースとして機能していますね。地方から帰省した社員がお土産で買ってきた地酒で楽しんだり、卓球台やダーツといったレクリエーションもあります。ただ、一気飲みなど強制するのはNGで、気軽な「飲みニケーション」ができるような場づくりに努めています。
育休・産休も、社員ファーストの考えからです。現在、社会的には育休・産休で戻ってきたときに「冷遇されないか」との不安から、取得できずに悩んでいる人たちも少なくないと思うんです。ただ、弊社では育休・産休から明けても温かく迎え入れる環境・文化づくりを大切にしています。実際、部長職で育休・産休を取り、役職そのままに現場復帰した人間もいますし、今後も同じ境遇になったスタッフが気兼ねなく休める社内文化を持続していきたいです。

最後、クリエイターへのメッセージをお願いします。

日々、勉強を続ける仲間たちと一緒に「やりがいを持って働きたい」と思う人と、仕事をしてみたいです。例えば、技術の進歩が著しいAI分野をやりたいとか、新しい知識を得ることに貪欲な人は大歓迎です。プロになる覚悟があれば、経歴は問いません。実際に、弊社のCTO(最高技術責任者)は素人から成り上がった人間ですし、営業責任者は元バーの店長と異色の経歴でした。「絶対に成功したい」と願い、頑張れる人と出会えればと思います。

取材日:2023年6月16日 ライター:カネコ シュウヘイ

株式会社シー・ビー・ティ・ソリューションズ

  • 代表者名:野口 功司
  • 設立年月:2009年5月
  • 資本金: 3,000万円
  • 事業内容:
    試験運営総合委託サービス【CBT(コンピュータによる)全国随時試験運営委託サービス、
    OLTC(オンラインによる)リモート試験運営委託サービス、
    PBT(マークシートによる)全国一斉試験運営委託サービス】、
    受験サポートシステム構築サービス【IBT(インターネットベースドテスティング)、リモティー、Web受験申込・決済システム】、
    事務委託・印刷・データ処理・分析サービス【運営事務局委託・コールセンター委託、各種印刷物製作・データ処理、試験データ分析サービス】、
    資格・検定のポータルサイト「日本の資格・検定」の運営【広告・企画・運営】、
    就職マッチングサービス・人材紹介サービスの運営【資格de就職、資格de就職AGENT、宅建転職、有料職業紹介事業許可(13-ユ-310617)】、
    プロフェッショナルテストセンターの運営【銀座CBTS歌舞伎座テストセンター、CBTS横浜テストセンター、CBTS岡山駅前テストセンター、CBTS三宮駅前テストセンター】、その他のサービス
  • 所在地:〒101-0022 東京都千代田区神田練塀町3 AKSビル6階
  • URL:https://cbt-s.com/
  • お問い合わせ先:上記サイト「お問い合わせ」ページより

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