どんな企画依頼でも「できます」からスタート。周囲を巻き込む代表の熱意、たどった道

金沢
株式会社スマイルラボ 代表取締役
Masako Gitani
儀谷 雅子

イベント企画や映像制作などを行う金沢の株式会社スマイルラボ。東京で映像制作の仕事を経験し、結婚を機にUターンした儀谷 雅子(ぎたに まさこ)さんが立ち上げました。もともと映像制作に注力していましたが「クライアントの要望を叶えたい」との思いから、より多くの提案に対応できるよう企画制作へと幅を広げました。前向きな人柄で周囲を巻き込み、生き生きと仕事をする儀谷さんに歩みや展望などを語っていただきました。

金沢から上京。CM制作から海外撮影まで幅広い仕事をさせてもらった20代

映像の仕事に就いたきっかけを教えてください。

小さい頃からテレビっ子で、時代はアイドル全盛期。歌を真似したり、ダンスを踊ったり、テレビアニメも大好きでした。とにかく映像が好きで、高校卒業後は関西にある映像の専門学校に進学しました。
映像を学んだときに、ドキュメンタリーのジャンルが好きだと気づきました。その人の生き様を映した目尻のしわや目などから、心に秘めている言葉にならない想いを映し出すことに魅力を感じたのだと思います。

その後、東京で映像の仕事をしないかと誘われて上京されたそうですね。

はい。映像の専門学校を卒業して就職した金沢のデザイン会社がCM制作の編集作業を東京で行っていました。そのときプロデューサーに「映像の仕事をするなら、金沢ではなく東京で仕事をしないと」と誘われて、上京しました。
その会社が国際博覧会の日本政府館の企画の仕事を担当しており、私は日本政府館の映像制作を手がけるプロデューサーの制作進行として海外にも同行しました。
その後、渋谷のハチ公前にある大型映像機や各地にある大型映像機に海外の映像や日本の美しい風景を撮影し、その作品を上映する仕事を会社の映像制作チームが担当していたので、私はコンテンツ制作の企画を考え、大使館や航空会社にヒアリングを行いながら海外の観光地のリサーチをして企画書を作りました。社内で企画が通るとそれぞれの国に撮影チームと一緒に映像を撮りに海外へ行っていました。
また、大物の俳優さんを起用した企業CMなど、幅広い分野の企画・演出にも携わっていました。家に帰る時間がないほど仕事は充実しており、今では考えられない経験を20代でさせてもらえたことは、感謝しかありません。


スイスでの撮影の様子 

儀谷さんが関わった作品の一部

結婚で帰郷し、再就職。「クライアントの要望を叶える」ため、映像から企画の世界へ

結婚を機に金沢に戻られたのですね。

はい。これを機に家業を手伝いながらのんびり過ごす予定でした。一方で、金沢の業界へ戻った方がいいという周囲のすすめもあり、目にした新聞で映像制作会社の求人を見つけて面接を受けました。過去の仕事を評価していただき、プロデューサー職で再び映像の世界へ戻ることになりました。

東京と金沢の両方で映像の仕事を経験して、違いを感じる点はありましたか?

やはり予算の金額の違いですね。金沢で最初に「これだけの予算でCMを作れないか」と相談されたときの、あまりの予算の低さに驚きました。逆に、限りある予算のなかでどこまで希望に添えるものが制作できるか、自分のやる気魂に火がつきました。負けず嫌いな性格とクライアントを喜ばせたい気持ちがここで発揮されていますね。
限られた予算のなかで最大限のクオリティを引き出せるよう、頭を使って工夫を重ねていきました。そのうち代理店からも頼られ、直接クライアントの要望をヒアリングしていると、映像制作だけでクライアントの要望を叶えるには限界を感じました。というのも、幅広い視点で提案をしたほうが、よりクライアントの満足度が高まります。映像以外の提案ができるようになりたいという気持ちが徐々に募っていき、映像会社から企画会社へ転職しました。

「自分には何ができるのか」、常に前向きに考える姿勢がお客様に安心感を与える。起業を周囲が後押し

株式会社パステルラボの代表・伊藤数子さんの元で仕事をした経験は、現在の仕事の姿勢に影響を与えているそうですね。

パステルラボの伊藤さんには本当に多くのことを学ばせてもらいました。特に社訓は、今でも私の心にささっています。例えば、仕事は「できません」からスタートするのではなく、「できます」からスタートする、という言葉です。少し納期の期間が短いものや大きなイベントを控えているときでも、“できる”というポジティブな気持ちで仕事の相談を受けられるようになりました。 また、伊藤さんの元で経験を積んだことで、クライアントさんが求めていることを先回りして考え、求められたときに対応できるようになり、より信頼されるようになりました。

ご自身で独立すると決めて伊藤さんに報告したとき、出された「条件」があったとお聞きしました。それはなんでしょうか?

スマイルラボを株式会社にすることです。パステルラボ時代、取引させてもらったお得意さまをそのまま私が引き継ぐ代わりに伊藤さんが出した条件でした。クライアントは会社につくもので、個人で独立しても、ついてきてくれることが少ないのです。
独立についてある会社の部長さんに相談すると「今まで一緒に苦労してきたのだから、ついていくよ」と心強いお言葉をいただけたときは自信になりました。これをきっかけに独立を決意しました。 大きな心で独立を喜び、送り出してくれた伊藤さんにも感謝です。

他社と比べてスマイルラボが選ばれる理由を教えてください。

最初から「できない」と否定して断らない点は大きいと思います。お客さまのニーズをヒアリングして「できない」と即決して諦める前に、自分には何ができるのか、何をすればいいのかを先に考え、提案することを心がけています。
また、逆境やトラブルに強いのも選ばれている理由の一つです。実現が難しい依頼であっても、常に「やってやる!」という前向きな姿勢が、クライアントに安心感を与えているのかもしれません。イベントで司会やゲストの方にも「儀谷さんがいると元気をもらえます」「緊張していましたが、儀谷さんとお話をして落ち着いてきました」と言ってもらえることが多いです。どんな場面でも怖気づかないのは経験を重ねてきた結果ですね。

事業内容を教えてください。また、受注した仕事は、どのように振り分けていますか?

展示会やセミナーなどのイベント企画、CM、会社案内PVなどの映像制作を行なっています。そのほか、Web制作やプロダクト企画など、幅広く事業を展開しています。
私が受注した案件は、会社に依頼しているものもあれば、フリーランスで活動されている方にお願いするなど、その時々で対応しています。依頼する仲間のネットワークはありがたいことに、一緒に仕事している方から、「儀谷さんにこの人を紹介したい」と人づてに紹介していただくことが多いです。
仲間が輝くためのステージの土台を作ることが私の役割だと思っているので、絶対に勝つという自信を持ってプレゼンテーションに臨んで案件を獲得します。私が準備したフィールドで、仲間が自分の才能を最大限に発揮して期待に応えてくれると、この仕事を引き受けて良かったとうれしく思います。

好奇心をもって新しいことにトライ。元号をまたいで感じたデジタル技術の発展

儀谷さんが企画として関わった中で大きな挑戦だったことはありますか?

ICTに関する展示を行ういしかわ情報システムフェア「e-messe kanazawa」というイベントに長期で企画に携わっていることです。昭和、平成、令和と仕事をしてきましたが、大きな変化を経験しました。アナログからデジタルへの変化は大きく、私も最先端の技術を追いかけるのに必死で食らいついています。
その中で、東京で開催している大きなITに関する展示会を石川県の皆様にも見ていただきたいという思いがとても強いです。実際に最先端を見て触れて感じて欲しいです。

今までの経験と最先端の技術に触れて、今後、デジタル世界の変化はさらに加速していくと思いますか?

e-messe kanazawaのイベントには20年以上関わっていますが、初期のe-messe kanazawaで出展していた技術が、今になって応用されて実用化の現実味を帯びてきたという事例は今までにもありました。
進歩には順序があり、タネが、花を咲かせる前に実をつけるなんて普通なら考えられないように、今の社会で起きていることは、これまでの成果や知識を10年20年と積み重ねた上で、要望や意見を元に軌道を徐々に修正されてきています。一つ一つの改善は小さく、日常生活では気づかないものですが、結果的に大きな変化や進化につながります。
現在、注目されている仮想空間でも、直接会って会話を楽しんできた現実空間に加えて、コンピューター上に作られた架空の空間でアバターと呼ばれる仮想のキャラクターを操作して、お互いに対話や共同作業ができるようになっています。
仮想空間と現実世界が重なり合う世界が私たちにとって当たり前の世界になるのは、Z世代といわれる今の子どもたちが大人になってからでしょう。
私が関わった映像の世界でデジタル化が進んでいるのは確かです。しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれる、データとデジタル技術を活用して、企業がビジネスモデルや市場、価値観が変化する世界の実現は、もっともっと先の話だと思っています。

人が交流する仮想空間を作りたい。「本物」に出会う大切さ

今後、儀谷さんが挑戦したい分野はありますか?

一番興味があるのはVRChatです。VRChatとは、VR空間でさまざまなユーザーと交流ができる「ソーシャルVR」と呼ばれるプラットフォームです。「コンピューター上に展開される3DかつCGの仮想空間」という特徴から、メタバースとしても最近は注目されています。自分が作り上げた仮想空間にほかのユーザーがアバターで行き来するような世界を自分で作ってみたいです。
以前から気になっていたのですが、5月に開催したイベントのセミナーでメタバースDJの松丸祐子さんのお話を聞いて、さらにVRChatの興味が加速しています。この熱が冷めないうちに自分でも試してみたいです。

最後に、映像クリエイターになりたいと考えている人に向けて、メッセージをお願いします。

映画や絵画などの作品、場所、そして人に出会うことが大切です。 ポイントは、誰かのフィルターを通して作られた映像や写真だけに頼るのではなく、自分の足を使って実際に現場に足を運ぶ、実際に展示されている作品を見に行く、実際にある場所の景色を自分の目で見るなど、自分の力で行動して良いものに出会うというアクションを起こしてほしいです。自分の作品を作るとき、今までの経験と自分の目で「本物」を見た瞬間に感じたインスピレーションが結びつくと、新しい視点や刺激につながるでしょう。
また、映像を作る人であれば、映像は画角が大事だということを覚えておいてほしいです。本質を見極めて編集をしていくと、映像を見たときに違和感がありません。人が見ていて気持ちの良い画角にすることは、見てくれている人への愛情だと思います。原点を忘れて独りよがりになると、良質なものをクリエイトし続けるのは難しいと感じます。やってみないとわからないことはどの世界でも共通です。臆することなく挑戦していってください。

取材日:2023年6月12日 ライター:高井 寧香

株式会社スマイルラボ

  • 代表者名:儀谷 雅子
  • 設立年月:2009年4月1日
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:企画、制作
  • 所在地:〒920-1156 石川県金沢市田上の里1丁目38番地サトヤマスタイルC棟1F
  • URL:http://www.smilelabo.tv/
  • 電話番号076-262-8815
  • お問い合わせ先:

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