「その動画、本当に必要ですか?」動画制作事業者が各業界のプロと協働で取り組む課題解決

札幌
株式会社DMR 代表取締役
Higuchi Daisuke
樋口 大介

動画制作事業を中心に展開する北海道札幌市の株式会社DMR。前職で広告の企画やデザイン、ライティングなどを経験してきた樋口 大介(ひぐちだいすけ)さんが、2022年10月に立ち上げました。独立間もないながらも、さまざまな強みを持ったクリエイターやプロフェッショナルとチームを組み、動画だけじゃない、顧客の期待を上回るクリエイティブを提供しています。「成果につながらないコンテンツは作っても意味がない」と話す樋口さんに、現在進行中のプロジェクトや今後の展望などをお聞きしました。

5Gのサービス拡大で動画マーケティング市場に商機を予感

クリエイティブ業界との出会いはいつでしょうか?

音楽系の専門学校卒業後は、音楽活動をしながらアルバイトをかけ持ちしていたのですが、そのひとつが携帯電話のWebサイトの保守管理でした。当時はまだガラケーが主流で、画面に入る文字数は一行10文字ほど。その中でデザインや企画を考え、コンバージョン率を上げるにはどうすればよいのかということをずっと考えていました。仕事としてクリエイティブに関わったのはそれが最初です。
10年ほど働いたのち、保険の総合代理店の営業に転職したのですが、営業が性に合わず広告宣伝部に異動して、広告の企画やライティング、イベント企画などを担当しました。

その後、北海道へ移住され、起業されたのですね。

移住後はフランチャイズの学習塾を経営していたのですが、当時の仕事仲間に「学習塾をたたんで、制作の仕事に戻ろうと思う」と相談すると、「札幌でも5Gが利用できるようになって、動画のムーブメントが来る。動画制作を覚えた方がいいよ」と助言を受けました。そこでスクールに通って動画制作の技術を身につけ、クリエイティブ業界に戻ってきました。今の事業で独立したのは2022年10月で、本当に立ち上げたばかりです。

「その動画、本当に必要ですか?」。作って終わりにならない、成果の出るクリエイティブに

メイン事業である動画制作の中でも、力を入れているプロジェクトはありますか?

今力を入れているのは、クライアント様の「補助金施策」のサポートです。行政書士の先生とタッグを組んで取り組んでいます。国や自治体には、コロナ関連をはじめたくさんの補助金事業があり、「補助金を使って動画を作りたい」というお仕事がたくさんあります。
しかし、「補助金を使って素晴らしい動画が制作できた。費用の大部分は補助金で賄えたので持ち出しも少なく済んだ。めでたしめでたし」で終わっているケースの多いこと。これでクライアント様の目的は達成できたのでしょうか? 売上は上がったのでしょうか?いくら予算をかけて素晴らしい動画を作っても、それだけで商品が売れるわけではありません。

目的と手段が入れ替わってしまっているということでしょうか?

そうなんです。中には「補助金を使いたいから動画を作れますか?」というケースもあるほどです。そして、たとえ費用を補助金で賄えたとしても、成果が生まれないなら投資した時間や手間の分、実は損をしています。
そこで、「その動画、本当に必要ですか?作ったあとはどうするんですか?本当はどうなりたいんですか?」と、私たちが一種のセカンドオピニオンとして、もっとよいアイデアがないか掘り下げていくのです。場合によっては動画じゃなくてチラシにしよう、そもそもの方向性を修正しようなど、目的を達成するために本当に必要な企画を提案し、行政書士がその取り組みに合った補助金の申請をサポートします。そうすることでクライアントが本当に必要とする企画を盛り込んだ、オーダーメイドの補助金施策ができるのです。私たちは制作の仕事をいただけて、クライアントの取り組みは成功、行政書士もやりがいのある仕事になるという三方よしのプロジェクトです。

動画が万能ではない。多様なプロとの協業による差別化

 

 

視聴者に響く動画にするために心がけていることはありますか?

視聴者が見たいと思っているものを見せるのは当たり前で、そのあとで「そうきたか」という、いい意味での裏切りがあるといいなと思っています。昔の音楽CDに入っていた隠しトラックのようなイメージですね。なくても成立するのだけれど、それがあることで本編をさらに引き立たせ、インパクトを与えられると思います。
また、動画じゃないと実現できないような内容だとさらによいのではないでしょうか。ただし、あくまで動画制作は目的を達成するための選択肢のひとつで、動画が万能なわけではありません。

特に他社との差別化ができている部分はどこだと考えていますか?

自分一人では特別なことはできませんが、クリエイター仲間や各業界のプロと協業することで、対応できることの幅が広いことが強みになっていると思います。VRもメタバースもドローンも、SNSの縦型動画も制作できますし、運用や改善まで携われます。先ほどの「補助金施策」も、プロと組んでいるからこそ実現できているプロジェクトです。

「その発信、本当に必要ですか?」。積極的な情報発信も目的があってこそを

自社サイトやSNSなどで積極的に発信している印象がありますが、ブログなどもすべてご自分で書かれているのでしょうか?

事業を立ち上げたばかりなので、WebやSNSでの発信は営業も兼ねています。Webからの集客が増えれば効率的ですからね。自社サイトはデザインも内容も自由で自分の想いが込めやすいので、特に力を入れています。ブログは、検索エンジンの表示順位を上げるSEOも意識しながら自分で書いていますよ。SEOは定番の手法ではありますが、正攻法もある程度確立されているものですから。

クリエイターも自らどんどん発信していくべきだと考えますか?

発信するなら目的を決めて発信するべきです。目的がぶれたままなんとなくブログやSNSをしているのは、「その発信、本当に必要ですか?」の状態です(笑)。目的が決まれば媒体の使い分けや内容の精査もしやすくなります。私もSNSは一通り取り組んでいますが、Facebookは取引先も見ているのでビジネスチャンスを狙うために、Instagramは周知しフォロワーを増やすために、Twitterはタグやリンクも使えるので仲間募集や流入を目的に、というように使い分けています。

自信と覚悟を持って進み続けるクリエイターに

これから取り組みたいプロジェクトの構想はありますか?

現在、求人・採用系の動画制作に多く携わっているのですが、さらにその先に現れる課題にもクリエイターとして関わっていきたいと考えています。たとえば企業の成長を妨げている原因のひとつに離職率の問題があります。企業は労働環境の改善や福利厚生の充実、コミュニケーションの円滑化などさまざまな施策を行っていますが、そこへクリエイターとして関われることはないだろうかと。入社後の社員研修用の動画を作ったり、社長様の想いや社風が伝わりやすいコンテンツを企画したりするなど、さまざまな場面で各ジャンルのプロの方々と組んでできることがないか思案中です。

最後に、クリエイターを目指す方にメッセージをお願いします。

心がけてほしいと思っていることが二つあります。一つ目は、安売りをせず自分に自信を持つこと。勉強中だから、新人だからといってすごく安く仕事を受けてしまう人がいるのですが、よくありません。本人はよかれと思って安く受けているつもりでも、結果として業界全体の価格低下を引き起こしてしまいます。動画制作は特殊機材を扱う専門技術です。プロのクリエイターを名乗って仕事を受けるなら、自信を持って適正価格を提示する覚悟を決めるべきです。
二つ目は、立ち止まらないということ。成果物を提供するという意味では、クリエイターはパフォーマーやアーティストにも似ている部分があります。しかし、クリエイターだけは「作業者」にもなり得る仕事です。指示されたことを指示された範囲で淡々と。積極的に成長や前進を志さなくても、今のままでも問題なく仕事は回ります。もちろん、そのような仕事の形もありますし、それが良い・悪いということではないのですが、クリエイターとして独立して活躍していきたいと考えているなら、常に成長や発展を目指し、立ち止まらず常に前に進んでいってほしいですね。

取材日:2022年12月9日 ライター:小山 佐知子

株式会社DMR

  • 代表者名:樋口 大介
  • 設立年月:2022年10月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:映像制作、求人動画制作など
  • 所在地:〒063-0811 北海道札幌市西区琴似一条4-1-22-402
  • URL:https://dmrhokkaido.jp/
  • お問い合わせ先:080-1290-6465

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