グラフィック2023.01.25

クライアントへの愛で紡いだ30年。グラフィック広告のプロとして、地域企業の発展に貢献

沖縄
有限会社ピックアッププラン 代表取締役
Isamu Oshiro
大城 勇

「クライアントとは恋人つながり」と語り、グラフィック広告のプロデュースとディレクション、デザインを通して地域の企業を支え続けてきた沖縄の「有限会社ピックアッププラン」。代表取締役の大城 勇(おおしろ いさむ)さんは、バブル景気時代の活気あふれる広告業界で広告制作の“いろは”を習得し、今なお新しいアイデアと技術を取り入れながら、精力的にクリエイティブ力を発揮しています。その原動力はずばり「広告の仕事が好きだから」。そう断言する大城さんに、会社設立の経緯から今後の展望まで語っていただきました。

バブル期の広告業界で叩き込まれた制作の“いろは”が今に活きる

広告の世界に入られた経緯を教えてください。

子ども時代は絵画が得意で、高校のデザイン科に入学しました。卒業後はデザイン系の専門学校に進学しようと考えていたところ、広告デザイン事務所に勤務していた親戚から、「この業界は早く実務を積んだ方がいい」とアドバイスされたので、株式会社沖縄クリエイティブセンターという、沖縄の広告代理店に入社することにしました。
1982年当時は、今のようにMacなどのPCはない時代でしたので、製図、デザイン用筆記具のロットリングペンなどを使って版下を作るプリミティブな作業でデザインしていました。また、デザインの企画・制作はもちろん、撮影やモノクロ写真の現像までマルチにできなければ、一人前とみなされない時代でしたので、広告制作にまつわる全ての基礎を叩き込まれました。

主にどのような広告を作られていたのですか?

スーパーやホームセンターなどの流通業の会社の仕事が主でした。その一環として、沖縄の百貨店リウボウと、国内大手スーパーの株式会社西友が共同で立ち上げたリウボウストアというスーパーの販促室に出向することになりました。その会社は、課長以上の役職者はすべて西友からの出向で、当時沖縄では珍しかった東京仕込みの広告の企画立案方法から販促の仕方まで学ばせてもらえました。

どのような企画立案の方法だったのか教えてください。

例えば、当時の室長からは、一つのキャッチコピーを作るために100個の企画書を作れ、と言われていました。また広告を作るなら現場を知らなければいけないと教わり、誰よりも早く出社して売り場へ行き、1日を通して働く人の動き方や客の様子を観察してから制作に当たっていたので、誰よりも遅く帰社する毎日でした。

とてもお忙しかったのですね。

忙しくはありましたが、当時コピーライターとして一世を風靡していた、糸井重里さんの手掛けた西武のキャッチコピーの企画書を見せてもらえることもあり、貴重な経験もできました。また企画立案だけでなく、例えば、広告用の魚を撮影するなら、店に並んでいるものを単純に撮るのではなく、「市場で“セリ”を見学しろ、新鮮なものを自分で食べろ。その方がいい写真が撮れる」と、広告制作の心意気のようなものも教えてもらえたと感謝していま

「クライアントと直につながりたい」 より良い広告づくりのため独立し、仕事の幅を広げる

それからどのように独立に至ったのでしょうか?

別の広告代理店から引き抜きがあり、転職して年俸制の契約社員として働くことになりました。そこは沖縄の大手不動産会社の広告や販促をほとんど請け負っており、私はディレクターとして、企画立案から制作、予算管理まで一手に担っていました。不動産広告にはさまざまな規制があり、知識がないと企画ができません。新人の気持ちで一から勉強を始めました。
この会社に5年ほど勤めていたのですが、次第にクライアントとのつながりが強くなり人脈を築けたことに加え、営業スタッフを介さず直接やり取りした方がいい広告を作れると感じ、1993年に個人事業主として独立することにしました。その時に付けた屋号が「ピックアッププラン」です。

独立後は順調でしたか?

引き続き不動産広告の仕事を頂いており、滑り出しとしては安定していたと思います。またコーポレートマークやロゴタイプを作ることが好きだったので、自ら企画書を作ってお付き合いのあるクライアントへ提案していました。こうして仕事の幅を広げていくことで、他企業を紹介していただくことが増えました。その後会社の信用を上げるために、2001年に法人化しました。

オリジナルのアイキャッチで興味を喚起

現在の業務内容ですが、やはり不動産関連の広告制作が主ですか?

そうですね、全体の6~7割は不動産会社のグラフィック広告をメインに、テレビCMラジオCMなどの販促キャンペーンのディレクションです。

広告制作会社としての御社の強みを教えてください。

広告を見る人の興味を引きつけるためのアイキャッチを重要視しており、必ずオリジナルでデザインしている点です。特に不動産ではまず、その建物がどんな場所にあるのかを知ってもらい、その場所に良いイメージを持ってもらうことが大切だと考えています。

今まで作ったアイキャッチの具体例を挙げていただけますか?

沖縄の南風原(はえばる)という町にできた新築マンションのキャンペーンでは、主要幹線道路と高速道路が三角形に交差する場所に建つことから、「トライアングルアクセス」というアイキャッチを作り、その場所のメリットをわかりやすく伝えられるようにしました。このアイキャッチは今まさに、さまざまな広告ツールで展開している最中です。

「トライアングルアクセス」
 事業主・売主:株式会社プレサンスコーポレーション
 共同事業主・販売代理:株式会社ワンクラップ
 物件名:プレサンスロジェ南風原新川ヴォール

「クライアントとは恋人つながり」好きだから、とことんサポート

ほかにも強みや、仕事を進めるうえで大切にされていることはありますか?

広告の仕事を始めた頃に叩き込まれた企画書の制作と提案は、今でも必ず行っています。そこには年次及び月次の販売計画も必ず入れており、それに即した販促計画と予算を組んでいます。企画書に基づいた共通認識をクライアントと持っておいた方が、作るものにブレが生じませんし、スムーズな修正も可能です。

年次や月次販売計画まで立てるとは、至れり尽くせりですね。クライアントも喜ばれるのではないでしょうか?

ほとんどのクライアントが納得して重宝してくださいますが、時に自社で作るから必要ないと言われることもあります。仕事のスタート時にクライアントには、「弊社と御社は恋人つながり。好きだからとことんサポートしますが、時にその愛が重い、と感じるかもしれません。その場合は遠慮なくご意見くださいね」とお伝えしています(笑)。

そのような強いお気持ちがあるからこそだと思いますが、設立してから30年近くもの長い間、御社を存続してこられた秘訣は何だと思われますか?

デザインの仕事が、単純に好きだからだと思います。私は来年60歳なので、さすがに徹夜仕事はできませんが、4、5年前まではよく徹夜していました。デザインというものはゴールがなく、妥協しない限りは永遠に続きます。私は「これでよし」と感じることがなく、「ああでもない、こうでもない」と、できる限り改善したいと思うタイプなんです。その姿勢はクライアントにはウザがられることもありますが(笑)。とことん突き詰めて作ることが喜びなんです。

経費削減の時代こそ、プロフェッショナルの価値を提案する

長年沖縄の広告デザイン業界に身を置いてきた大城さんから見て、昔と今の変化は感じますか?

近年県内企業では経費削減の一つとして、広告のデザインを内製化するケースが目立ってきています。内製化によって「広告を作る」ことは可能ですが、必ずしも「効果のある広告」を作れるわけではありません。弊社も含め制作会社は、デザインの良し悪しで効果は全く変わってくるということを、クライアントへしっかり伝えるべきです。また広告には守るべき規則や規定があります。それを踏まえて効果的な物を作れるのはやはりプロである我々だという自負を持ち、プロフェッショナルな提案をしていく必要があると感じます。

紙からWebへ。他社との連携で新たなシナジーを

最後に、今後の展望を教えてください。

弊社の主戦場である紙媒体の効果が薄らいでいる昨今、Web広告にも注力していきたいと思っています。しかし弊社は社員が2名と限られているため、自社ですべて賄うというより、Web専門の会社と組み、新たな企画を作り、提案を試みているところです。弊社のグラフィックの経験や技術をもってWebのプロフェッショナルと協働することで、新たなシナジーが生まれると期待しています。
その一方、Webのデザインに長けたスタッフにも入社してもらいたいとも思っています。得意とする媒体は問わず、デザインが好きで好奇心旺盛な方であれば、ぜひ一緒に仕事をしていきたいですね。

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

取材日:2022年11月25日 ライター:仲濱 淳

有限会社ピックアッププラン

  • 代表者名:大城 勇
  • 創業:1993年4月/法人化:2001年12月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:広告全般に関する総合プロデュース&ディレクション、コーポレートマーク&ロゴタイプ(CI・VI計画)の企画・制作、販促企画及びSPツールの制作、グラフィックツールのデザイン・フィニッシュ、新聞広告・TV-CM・RD-CM等の企画・制作及び媒体計画
  • 所在地:〒900-0033 沖縄県那覇市久米1-10-2
  • URL:https://www.puplan.com/
  • お問い合わせ先:098-863-8343

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