WEB・モバイル2022.07.27

大手に負けない、トレンドをキャッチし「一歩先」を行くデザインを 原点は毎晩騒ぎ明かした“パリピ”時代

沖縄
hahaha design ,inc 代表取締役
Shiori Teruya
てるや しおり

“まだ浸透していない、サービスや商品の魅力を世に伝わりやすい手段で広げる!”を、ミッションにした【SNSデザイン事務所・hahaha design(ハハハデザイン)】。代表取締役のてるや しおりさんは、沖縄や東京、海外などで生活しながらトレンドをいち早くキャッチし、プロモーションに落とし込むというビジネススタイルを続けています。10年以上前からノマドワークを実践するてるやさんに、特定の拠点を持たない理由、独立したきっかけ、これからの展望を伺いました。

「なんとなく好き」でグラフィックの道へ 手広い仕事が未来の土台に

会社設立までの経緯を教えてください。

学生の頃は、デザインや絵画に特別興味を持っていたわけではなかったのですが、雑誌の持つテイストがそれぞれ違うということに面白さを感じていました。今ならその違いが、雑誌ごとのブランディングだとわかりますが、当時はブランディングという言葉を知らなかったので、「なんとなくこの雑誌の世界観が好き」という程度。その世界観を作る側になりたいけど、どんな勉強が最適かわからず、ひとまず沖縄のデザイン専門学校に入学して、グラフィックを学びました。
卒業後はライブハウスや飲食店のほか、イベントを運営している沖縄の企業に就職しました。企画立案だけでなく、グッズ、POP制作まで、幅広い仕事に携わりました。

“パリピ”からパーティー関連のデザイン制作へ。さらにPC一つで憧れの東京へ

充実した会社員生活から一転、独立したいと考えたのはなぜですか?

当時は音楽好きの“パリピ”で(笑)、昼間はライブ関連の仕事をして、夜は会社のライブハウスに毎日のように友人を呼んでは、遊んでいました。次第に友人たちをもっと喜ばせたいと、パーティーグッズを自分でデザインしたり、装飾をしたりと会場の雰囲気づくりに凝り始めました。
すると、名刺やHPの制作など、パーティーとは関係ないものも依頼されるようになったんです。図らずも会社を通さず、個人でデザインの仕事を請けるようになりました。
また、一カ所で一定時間仕事をしなければならない会社の仕組みに、違和感を感じていました。当時インターネットの普及により、デザインの仕事はPC一つあればどこでもできる時代になりつつあったので、居場所にとらわれず、好きなところで仕事をすればいい!!と思い立ち、フリーランスとなって、まずはかねてより憧れを抱いていた東京へ行くことにしました。

「みんなが望む一歩先の情報を提供したい」 人を介して広がる仕事の輪

 

 

東京でどのように仕事を獲得していったのですか?

最初は在籍していた沖縄の企業の案件がメイン。業務委託先としてお付き合いを続けていましたが、音楽やファッションの世界に顔を出すうちに東京でも知人が増え、人を介して仕事の輪が広がっていきました。
今でこそHPは個人で簡単に作れますが、十数年前の当時は、しかるべき人や会社に外注するのが一般的でしたので、HP制作の相談をよくいただきましたね。あとはライブ関連の制作物や店舗、イベント会場の空間デザインなどを請け負うことも多く、前職で培ったことが役に立ちました。
とはいえ、HPや音楽関連のデザインにこだわっていたつもりはなく、時代の変化に応じて、必要と思われるものをまんべんなく作るスタンス。だから、プロモーション企画の立案や、YouTubeなどの動画制作、InstagramなどのSNSプロモーションにも着手しました。
次第に「今」流行っているものだけでなく、流行りそうなもの、皆が望む一歩先の情報を提供したいと思い始めるようになりました。そのためには世界のトレンドを知る必要があると、ロンドンやタイ、台湾、ハワイ、カンボジアなどに長期滞在しながら、日本にまだ知られていない情報を吸収して、デザインに落とし込んでいったんです。

「遊びと仕事の境界線がない」。世界を旅するノマドワーカーへ

ノマドワークやリモートワークが一般的ではない頃から、実践されていたんですね。

そうですね。元来の「ひとところにとどまるのが苦手」な気質もあり、旅するように暮らせることが理想。そのライフスタイルを叶えられるのが、ノマドワークだったんです。世界各地で色々なものを見たり聞いたりすることが仕事につながるので、遊びと仕事の境界線がありません。常に仕事しているとも言えるし、遊んでいるとも言えます。

会社設立は、時間と仕事に縛られないために必要だった

理想とするライフスタイルのように感じますが、なぜ会社を設立されたのかお聞かせください。

フリーランスとして24時間稼働している状態だったので、常に仕事に追われるようになってしまいました。海外にいると時差があり、さらに時間の調整が難しくなります。居場所にとらわれない生活をしていたら、皮肉にも時間にとらわれる生活をするようになってしまったんです。このままでは心身ともに辛いと、業務時間を区切ってメリハリを付けられるよう、2019年に沖縄で法人化しました。
請け負っている仕事の3分の2以上は東京の案件なので、今は沖縄と東京を行き来する生活が続いており、定住している場所はありません。一応、自宅兼事務所は沖縄と東京に設けていますが、スタッフの半分は沖縄、半分は東京以外に住んでおり、ごく稀に集まるものの、基本的に全員リモートワークです。

仕事は人生を構成する一つの要素 プライベートも大切

てるやさん含め、スタッフさんの業務分担を教えてください。

私が営業から企画提案を担い、手を動かすデザインの仕事はスタッフが担当しています。スタッフでカバーしきれない場合は都度、業務委託をします。期限内に、やるべきことをやってくれればいいというスタンスなので、自分なりの目標を持っている人でも働きやすい環境だと思います。

スタッフの自主性に任せているのですね。

私自身、時間と働く場所に縛られたくなくて会社を立ち上げたので、スタッフにだけ規律を求めるつもりは毛頭ありません。会社のために必死に働いてプライベートを犠牲にしてほしくはないんです。仕事はあくまで人生を構成する一つの要素。だからこそ、弊社の仕事以外でも大切なものを持っていてほしいし、大切にする時間を作ってほしいんです。

若い女性のニーズを先読みし、Instagramのビジネス活用をサポート

グラフィックやWebページなど、幅広い分野のデザインに携わってきたとのことですが、現在注力していることは何ですか?

今はSNSプロモーションに注力しており、Instagramをビジネスへ活用している企業アカウントのPR新手法として、AR(拡張現実)エフェクトの企画・制作に特に力を入れています。単純に楽しいからという理由もありますが、弊社のような小さなデザイン制作会社が大手に勝てる強みになり得ると考えたからです。
大手には高いスキルを持った優秀なデザイナーやエンジニアが集まりますが、弊社はそのような人材を集める資本がありません。しかし、Instagramの主なユーザー層である、20~30代の若い女性の気持ちや、彼女たちが魅力的に感じること、欲していることを、先回りして理解し、提供できると自負しています。言うなれば「インフルエンサーのインフルエンサー」。その力が培われたのは、友人を喜ばすために奔走していたパリピ時代から始まり、各国の若者のトレンドを見て、企画提案や制作をしてきた経験からです。
Instagramは、いかに彼女たちが好む「ニュアンス」や「世界観」を作れるかが勝負なんです。そのような言語化が難しい抽象的なものを作るためには、彼女たちのライフスタイルや思考回路に精通している必要があり、経験値がものを言うと実感しています。

InstagramのARエフェクトは、女性にとって魅力的なものなのでしょうか?

女性好みの世界観や楽しみを作りやすいツールだといえます。なぜなら、広告であることを感じさせないため、彼女たちに受け入れられやすいのです。いかにも「広告」らしい広告には誰でも警戒心を抱きますよね。Instagramのヘビーユーザーである女性たちも例外ではありません。
しかし、例えば自分をかわいらしく見せられるエフェクトが付いていたとしたら、広告だとしてもウキウキと楽しみながら利用できますし、拡散してくれるはずです。彼女たちにとってメリットがあるエフェクトを作ることができれば、効果的なプロモーションツールになり得るんです。

トレンドをデザインに取り込み 低コストでも「インスタ女子」好みを実現

これまで作ったARエフェクトで、印象に残っているものを教えてください。

つい最近、有名ブランドの化粧品・アパレルブランドのInstagramキャンペーンを手掛けました。新しいリップのプロモーションで、そのリップカラーを自分の唇に実装できるようなエフェクトを作りました。カメラアプリ「SNOW」に似たイメージですが、Instagramの中だけで加工から公開までを完結できるので手軽です。「インスタ女子」好みに仕上げられたと自信を持っています。

企画やデザインをする上で、大切にしていることはありますか?

あまりコストをかけずにセンスアップできる企画作りを心がけています。誰もがハイブランドのように莫大な費用をかけて、お洒落なプロモーションを展開できるわけではありません。限られたコストの中でも、例えばフォント一つ、色味一つ変えるだけで、格段にセンスアップできるものです。
また、若い女性が好むSNSのトレンドを常にキャッチアップし、デザインに生かすことも大切にしています。クライアントが知らないような情報こそ価値があり、その価値を提供することも含め、弊社の業務の一環だと考えています。

内製化の加速で“やりたいこと”に注力できる環境が理想

今後の展望や目標を教えてください。

現在は4名のスタッフが在籍していますが、あと1、2人デザイナーを採用して、効率的に業務を進められる組織にしたいです。今は必要に応じて業務委託スタッフにお願いしていますが、短期的な関わりだと、どうしても弊社の得意とする「若い女性向け」のトレンドを共有しにくく、クライアントの求めるものをスムーズに制作できない場合があります。
スタッフ全員がトレンドを理解し、スキルを向上させていければ効率よく業務を進められるようになりますし、週に5日間働く必要さえなくなると考えています。その分プライベートの時間を増やして、各々がやりたいことをやり、自己実現を目指せるような体制が理想です。
今後の事業展開として、メタバースの世界でNFTを活用したアート販売に興味があります。また、物々交換やスキルシェアのサービスもやってみたいですね。

物質にとらわれない豊かさやつながりを提供できるサービスを作りたい

今までの事業とはかなり異なるように感じますが。

全くかけ離れているわけではないんですよ。仕事柄接する機会が多い10代、20代から得たアイデアです。彼らの多くが物質的な豊かさに興味がないというか、利潤追求、つまり資本主義の世の中に疑問を抱いているんです。「お金を稼いでいい暮らしをしたい」という価値観は古くなりつつあり、早晩、通貨の価値は下がるのではないか、と感じました。
とはいえ、物々交換やスキルシェアがいきなり流行ったり、通貨が使われなくなったりはしないと思いますし、都市部では現実的とは言えません。しかし、沖縄ならこのサービスは受け入れられるかもしれない、と感じます。沖縄には助け合いの精神が根付いており、物々交換というものを感覚的に理解し、順応できる土地かもしれない、と。まだ妄想ベースの事業アイデアですが、今まで「次に何が流行る?必要とされる?」ということを常に考えて、さまざまなものを形にしてきましたので、いつか実現できると信じています。

最後に、一緒に働くスタッフにはどのようなことを求めますか?

幸せの定義は人それぞれなので、無理に会社のスタイルに合わせる必要はありません。しかし、興味の範囲が会社の方向性と少しでも重なるなら、そこを目指して一緒に進んでいけるはずです。一方、会社にどっぷり浸かって他に興味がなくなることは、自分がなくなるようでよくない。だからこそ、しっかり自分の目標や未来を見据えつつ、弊社を面白がって、ともに変化を楽しめるスタッフと働けたらうれしいですね。

取材日:2022年6月21日 ライター:仲濱 淳

hahaha design Inc.

  • 代表者名:てるや しおり
  • 設立年月:2019年8月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:ブランディングデザイン、YouTube動画制作、運用、デジタルサイネージ企画制作、グラフィックデザイン、SNSデザイン、運用、ARフィルター開発、インテリアデザイン
  • 所在地:〒900-0012 沖縄県那覇市泊1-6-2 ライオンズマンション101
  • URL:https://hahaha-design.jp/
  • お問い合わせ先:

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