職種その他2021.09.22

とことん追及する元銀行員が導き出した「経営ドック」。和多利は地元企業を応援し続ける

広島
株式会社和多利 代表取締役
Mitsuaki Oketani
桶谷 光昭

西日本を中心に、ローカル共通ポイントカードシステム「Wポイントカード」を展開する株式会社和多利(わたり)。 代表取締役の桶谷光昭(おけたに みつあき)さんが、銀行に勤めていたときにひらめいたセンター事業や、新たに思い付いた経営コンサルティングについても伺いました。 また変化する時代に合わせ、これまで築き上げてきたものすら“壊そうとする”驚きの一手にも注目してください。

異端児と呼ばれて…銀行の仕事を徹底的に行った経験

起業されるまでのキャリアを教えてください。

和多利を設立したのが1990年なので、随分と前の話になりますね。私は東京の大学を卒業後、銀行で働きました。数々の業務をしておりましたが、メインで担当していたのは貸付です。契約先の会社から決算書を見せていただき、お金を貸してもいいかを考える仕事ですね。 判断材料には、決算書の数値をAIで分析したデータがあれば十分と思われがちなんです。けれど自分の足で担当の会社に行ってみると「あれ?」と思うことがある。例えば、在庫と言っても、これから売れる資産になる在庫もあれば、売れない不良在庫もある。 AIが計算した数値だけを見ていても、担当会社の本質を知ることはできないと思うんです。自分の手を使って検証したり、会社に足を運んでみたりして、契約先が抱える問題やリスクが初めて見えてくる。分析力もつきますよね。 それに、銀行では話をしてもらえなかった相談や本音も、契約先の会社に伺うと教えてもらえることもあるんですよ。数値で色々と考えるのも大切ですが、それだけで判断するのではなく、とことん追及する。その考え方は、独立してからも変わらずモットーにしていることですね。

元銀行員だったんですね! いつから起業されたいと思われたのですか?

仕事を徹底的にしたいタイプでしたので、ちょっとでも疑問に思ったら、契約先に出向いていました。僕は異端児だったんでしょうね。そのうちに、自分の考え方と銀行の方針は違うのかなと気がついてしまって。同期にも止められたんですが、銀行に入行してから約10年後に辞める決意をしました。元々独立したいという気持ちを持っていたので、辞めるまでに何のビジネスを始めようかと考えてもいたんですよ。 独立を考えるにあたって、銀行員らしく、はじめに企業が倒産する理由を調べてみました。まずは、売り上げが落ちたからという分かりやすい理由。 もうひとつは、在庫です。在庫で倒産? と驚くかもしれませんが、先ほど申し上げたように不良在庫が多くなり、売れもせず、社員の給与にもできない資産が増え、会社全体の資金が枯渇してしまうことが倒産の原因になっているようでした。 最後は、固定費が大きくなりすぎたこと。そこでこの3つのポイントを回避できる仕事を始めようと。そもそも銀行って簡単に言えば、お客さまから預かったお金を企業に貸し、返金される際に上乗せされた利息などを目的にビジネスをしているんです。 でも会社から返金されなかったら銀行の経営は厳しくなってしまう。だから銀行の貸付のような運用リスクが少なく、売り上げが保証されるビジネスにしようと考えました。 固定費の中で大きな割合を占める人件費を最小限に抑え、在庫を抱えないためにモノではなくシステムやサービスを売ろうと考え、仕事を1つの場所に集められるセンター業務ができる会社にしたらいいのではないかと思い付きました。

 

人間関係性が希薄な時代、手厚く対応するのがうちの強み

センター業務でやる事業とは何だったのでしょうか?

1997年から事業化した、ローカル共通ポイントカードシステム「Wポイントカード」に関する端末管理やデータを集計する仕事です。 分かりやすく言うと、お客さまが一枚のカードを使ってさまざまな店でポイントを貯められるよう、お店のシステムを構築したり、管理も行います。 今でこそTポイントや楽天ポイントといった全国的な共通ポイントはありますが、事業化した当時は珍しいサービスでしたね。最初は、山口県の果子乃季和洋菓子チェーン店とフジマグループで展開していきました。 それぞれのお店から売り上げた金額に比例した手数料をいただく事業なので、自分たちの会社が資金を肩代わりする必要がない。物販はしないので、在庫も少ない。リスクは少ないですが、事業として売り上げを伸ばしていくには加盟店を増やさないといけないので、かなりそこに注力していましたね。 Wポイントカードはおかげさまで25周年を迎え、加盟店は西日本を中心に500店舗を超えました。飲食店が多いですが、タクシー、花屋、ガソリンスタンド、さらにはサッカークラブも加盟してくださいました。 事業を拡大できましたが、会社を何十年と経営していくのは簡単ではなくて。そうそうたる大手企業が、全国展開する共通ポイントカードシステムを次々に始めたんです。 そこで銀行員時代の経験から、クライアントの相談にきめ細かく対応し、困っているならすぐ現場に行くことを徹底しました。端末など機械を扱うかぎり、故障してしまう可能性はあります。そんなときは代替機を持ってどこへでも行っていましたね。タクシーに積んである端末が壊れたときは、後ろから車で着いていき交換したこともありました。 すると、メンテナンスやアフターフォローが評価され、「dポイント」の導入支援業務(https://watari.biz/service/dpoint.html)のお誘いをいただき、公式センター業務を始めることになりました。 また、Wポイント会員が50万人を突破したことを機に、加盟店に対してコンサルティングをする仕事も始めていたんですよ。

どのようなコンサルティングですか?

ポイントカードを持っている人の動きをみれば、その店の経営状況も分かるんですよ。たとえ持っている人が少なくても、カードを持ってくるのを忘れた人がいても、ある程度統計で分析できます。ポイントカードの動きをとことん追求していけば、経営の状況が血液検査をしたように具体的な数字で分かる。 けれど、体のどこかが痛くなったり、自覚症状が出たりする病気と違って「経営のここが悪いですよ」と言われても店のオーナーには実感されない。 ちょっとした経営の問題には気が付かないことがほとんどです。しかし、それがじわじわと会社を悪化させ、10年後には倒産ということもある。だからクライアントである会社にとって、私たちは医者みたいなものだと思ったんです。 「人間ドックならぬ、経営ドックをしましょうよ」という気持ちもあり「Dr.繁盛」と名付けたサービスでコンサルティング業務を行っています。

疑問がわいたのですが、いま飲食店はコロナ禍で経営が厳しいのでは?

そうなんですよ。だからこそです。まず問い合わせていただいた方に、経営のノウハウを書いた資料を無料でお渡ししています。数値で書いてある部分はモデルケースではなく、実際のデータですので非常にリアルです。 人間関係が希薄な時代ですが、手厚く対応するのがうちの強み。直接伺って説明させていただいています。この危機的な状況で飲食店を支えたいと思い、無料でお渡しすることに決めました。地元企業の役に立ちたいのは、設立当初から変わりません。

 

長年行なってきた事業でも、スパッと割り切って別のサービスに

この先、事業をどうしていきたいですか?

Wポイントカードシステムの管理に、「dポイント」事業は変わらず丁寧に行なっていきます。 また2021年からアプリケーションのLINEを使った事業も始めました。何度もLINEに問い合わせをし、半年間開発をしてきたシステムです。 それぞれの店のオーナーが、顧客に対して直接メッセージが送れます。紙のDMを使ったり、ポイントカードを作らずに済み、安価ですぐに始めてもらえます。

ポイントカードがないサービスは、これまでと真逆の事業ではないですか?

長年行なってきたWポイントカードシステムの事業とは全く異なるものです。しかし、コロナ禍という厳しい状況のときにクライアントである飲食店は、弊社にポイント手数料が払えないはず。そう考え、スパッと割り切って別のサービスを始めました。 中小企業に貢献したいという思いは、銀行員時代から今でも変わりません。思い切った新たな一手で、これからも“応援する事業”を行っていきたいですね。

取材日:2021年8月2日 ライター:宮川 佳子

株式会社和多利

  • 代表者名:桶谷 光昭
  • 設立年月:1990年3月
  • 事業内容:ポイント事業、CRMマーケティング事業、ICTソリューション事業、アプリ開発事業、Webコミュニケーション事業
  • 所在地:〒731-0122 広島県広島市安佐南区中筋3-28-13 中筋駅前ビル4F
  • URL:https://www.watari.biz
  • お問い合わせ先:上記サイト「お問い合わせ」フォームより

「dポイント」©NTTDOCOMO,INC.AllRightsReserved.
「LINE」©LINECorporation
※記載の社名、サービス名、作品名などは、各社の商標または登録商標です

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP