職種その他2021.05.26

キャスティングは大型CM~個人の披露宴まで! エイスリーのエンタメへの深い愛と恩返しとは?

東京
株式会社エイスリー 代表取締役
Naoki Yamamoto
山本 直樹

企業や個人の依頼を受けて、才能ある人たちをマッチングする。株式会社エイスリーのキャスティング事業は、従来の枠にとらわれず、キャスティングカテゴリのオールジャンルに対応しているのが画期的です。

エンタメ業界のサポートこそ「自分にできる役割」と語るのは、株式会社エイスリー代表取締役の山本直樹(やまもと なおき)さん。レコード会社や芸能事務所での後悔を経て、現在の会社を築いてきた経験、そして、求める人材像などを伺いました。

 

創業初期はアイデアが溢れて仕方なかった

会社設立までは、どのようなお仕事をされていましたか?

レコード会社や芸能事務所、Web広告会社を渡り歩いてきました。過去には、何組かメジャーデビューさせた経験もありました。ただ最終的には、広告業界でデジタルマーケティングを学び、それを音楽業界で生かしたいと考えたんです。

そこで起業前に、当時勤めていた会社の社長に音楽業界の案件をやりたいと願ったら「やらなくていいよ。儲からないから」と突っぱねられてしまい。育ててもらった業界への恩返しのためと一念発起し、下北沢にあるマンションを自宅兼オフィスとして、1人で会社を始めました。

どのように、事業を拡大したのですか?

初めは、アーティスト向けにYouTube上のプロモーションを手伝っていました。日本でまだYouTube内の広告機能が実装されていない時代でしたが、手探りでサイト上の説明文を訳しながら、広告のシステムを研究。

YouTube内の検索型広告を生かして、好きなアーティストの動画を検索した時に、類似のアーティストの動画が出る仕掛けにし、多いときでは100組以上のアーティストを支援していましたね。ただ、音楽業界各社がWebマーケティングのスタッフを採用していったことで、急速に出番がなくなってしまい。次の一手として、芸能界向けPR情報誌『mogmog』を立ち上げました。

芸能人や制作ディレクター向けのメディアですので、今風にいえば、いわゆるインフルエンサーマーケティングですが、方法はアナログでした。

芸能人の困りごとや気に入りそうな情報、番組制作会社など業界関係者が気になる情報を、ロケ弁当に情報誌を張り付けたんですよ。

編集部も僕1人で、初めは手当たり次第に弁当屋さんへ電話して、運良く1軒だけOKをもらえたところから拡大し、そのうち情報誌を見たテレビ局のスタッフなどから取材の相談も来るようになりました。

アイデアを次々、実現していったのですね。

会社を立ち上げてから、7年目ごろまでは企画が溢れてきて仕方なかったです。声優を使ったテレマーケティングや、美少女はクラスの人気者=インフルエンサーと勝手に定義し、原宿で美少女のみにサンプリングしたり、とにかく面白そうな企画は何でも試しました。

途中、高尾山に移住し、「高尾山に一番近い会社」とウリにしていた時期も(笑)。そろそろ、きちんとした形にしようと思ったのも、ちょうどその頃です。初めて正社員を採用してから、エンタメと何かをかけ算する軸は持ちつつ「本当に需要があるものは何か」「拡大の可能性があるものは何か」と考えるようになりました。

その頃から、今ある会社の形へ近づいていったのですね。

そうですね。転換期と言えるのは、ブロガーマーケティングが流行っていた時代に、読者モデルブロガーと出会ったことです。女性ファッション誌すら読まない自分にとってはかけ離れた人たちでした。彼女たちと仕事をすることになり話を聞いたら、年収が数千万円と知って衝撃を覚えたんですよ。

誰もが知っている人たちばかりが有名人と思い込んでいた価値観が崩れ、SNSの発展で、個人が力を持っていき、これからの時代は、企業からみた人の価値も変わるだろうと思わされましたね。

そこからプロモーションなどの場面で活躍する人たちも変化していくだろうと思い、現在の事業を軸にしていこうと決めました。時代の流れに合わせて、価値ある人たちとその力を生かしたい企業の間に入るノウハウも必要。個人対企業では交渉の仕方も変わってくるだろうし、その先の需要に応えていきたいと考えるようになりました。

 

大きな依頼も小さな依頼も熱量は変えない

現状、核になっている事業は何ですか?

キャスティング事業が95%です。企業プロモーションなど様々な依頼に合わせて、価値ある人たちをマッチングしています。

公式サイトには「オールジャンル」とあります。人はどのように集めていますか?

お客様からのご依頼は多岐にわたるので、常に探しています。それを支えるキャスティングチームは現状で、10分野に分かれています。

インフルエンサー、YouTuberをキャスティングするチームが一番大きいのですが、例えば、映像チームのもとには「CM出演してもらえる寿司職人を探してください」という依頼が来たことも。俳優さんではなく本物の職人さんとなると難しいですが、メンバーが一軒ずつ寿司店へ飛び込み、人材を探しました。

もちろん、映像作品のエキストラのようにイメージしやすい依頼もありますが、テーマに沿った人材を探し出すノウハウも含め、全チームが毎日のように試行錯誤しています。結果として、理想の人材と出会うノウハウは、自社の財産になっています。

あっと驚くような依頼もありますか?

人に限らず、動物をお願いされる場合もあります。また、映像チーム宛に「リアルな家族を出演させたい」と依頼されたときもあり、現実の一家を集め、社内オーディションで選び、最終的にクライアントへ提案しました。

イベントチームはより幅広く、企業だけではなく、個人の案件を扱ったケースもあります。印象的だったのは、結婚する新郎の父親から、有名レスラーの出演をお願いされたときです。自分がファンなので「新郎新婦にビンタしてもらいたい」と要望を受けて、実際に引き受けました。

対象は幅広いですね。断る案件もありますか?

某有名アーティストを「1万円で呼んでください」と依頼されたときは、さすがに予算が見合わず、申し訳なさを感じながらもお断りしました。ただ、大きな企業から個人まで、どんな依頼でも同じ熱量を注ぐと当初から決めていたので、差は付けないようにしています。条件が合えば断りません。

社内で働くスタッフの方々は、どのような印象ですか?

キャスティング事業が核のため、顧客と人を管理する事務所に挟まれまくるのですが、元気にこなせるメンバーが多いです。コミュニケーション能力や、交渉力、調整能力が欠かせないので、他人との適度な距離を保てる人も多い印象です。

スタッフの採用で心がけていることはありますか?

最近は経験者採用も始めましたが、当初は経験者は採らないと決めていました。従来の同業者をコピーする会社にしたくなかったんです。

また、人材の仲介会社としても、一般の方が問い合わせづらい空気を作りたくない思いもありました。ギョーカイ寄りでなく、顧客寄りを重視したかったんです。現在のサイトにも反映していますが、その考え方は今でも変わっていません。

今後一緒に働くスタッフには、何を求めますか?

キャスティング事業のスタッフは、依頼に沿った人材を目利きする基本を忘れなければ、自由にやってもらってかまいません。送り出す人の才能を開花させながら、依頼者との間に入って上手くマッチングできることが理想です。企業などへ提案する立場になるので、絶えずアンテナを張りながら、行動してもらえる人であればなお歓迎します。

 

エンタメを支える人たちを支えていきたい

この先、エンタメ業界にどう貢献していきたいですか?

キャスティング事業の他に、エンタメ業界のグローバルビジネス支援にも取り組んでいこうと思っていて。中国を中心に、海外のインフルエンサー事務所や芸能事務所、広告代理店等と業務提携を進めています。

ただコロナ禍で渡航が出来なくなったので、近い将来、再び力を入れていく予定です。そして、エンタメ業界に生きる人たちへの支援事業も、展開していきます。コロナにより、エンタメ全体が打撃を受けているのはすでに報じられていますよね。経営が厳しい関連企業も救っていきたい。

また、支援の一貫として、エンタメに特化したM&A仲介、人材サービス、元芸能人のセカンドキャリア支援、メンタルトレーニングのサービスを進めています。

元芸能人のセカンドキャリア支援は、過去、マネージャーをやっていた時、十代から頑張ってきた子に契約終了を告げる経験を何度も味わってきました。彼らを泣かせてしまった後悔から「当時、何をしてあげられたのか」と考えることもあり、芸能界から先の人生も描いてあげたいと思います。

本日のインタビューを通して、山本さんからはエンタメへの愛を感じられました。その源は何ですか?

自分にできる役割だから、ですね。本当は、エンタメ界でスターを作りたいと、高校時代から思っていたんです。でも、過去に勤めていたレコード会社や芸能事務所では夢を果たせず、才能がないとあきらめたので。

ではお世話になった業界へ何を返せるかと考えたのが今の会社を立ち上げた理由でしたし、“エンタメを支える人たちを支える”ため、今後もサポートをしていきたいと思います。

 

取材日:2021年4月1日 ライター:カネコ シュウヘイ

株式会社エイスリー

  • 代表者名:山本 直樹
  • 設立年月:2008年10月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:総合キャスティング事業、グローバルエージェンシー事業、エンタメ支援事業
  • 所在地:〒150-0001東京都渋谷区神宮前3-35-2クローチェ神宮前ビル6F・7F
  • URL:https://www.a3corp.jp/
  • お問い合わせ先:上記サイト「お問い合わせ」フォームより

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