WEB・モバイル2021.05.12

アイシーコーポレーションは目に見えない部分を大切に、お客さんのために情報誌を編集する。

名古屋
株式会社アイシーコーポレーション
Hiromi Miyazaki/Kenshiro Miyazaki
代表取締役 宮崎 弘美 氏/統括マネージャー 宮崎 顕士朗

愛知県北西部の3地域に密着した情報紙「DOMS」の編集・発行をはじめ、地域の活性化につながる広告事業を展開する「株式会社アイシーコーポレーション」。

フリーペーパーの継続が難しいと言われる時代に12年も続く媒体を発行する秘訣や、起業までの道のりを代表の宮崎弘美(みやざきひろみ)さんに伺いました。そして今後のビジョンは、統括マネージャーを務めるご子息の顕士朗(けんしろう)さんが語ってくださいました。

Macに出会い、無限の可能性を感じて独立

代表の子供時代の夢を教えてください。

弘美さん:

明確な夢はもっていませんでしたが、模造紙に情報をまとめるのが得意で学級新聞などに率先して取り組んでいました。習字も好きで、母からよく褒められたのを憶えています。ふり返ってみると“字”にご縁があったのかなと思います。

社会人になってから独立までのいきさつは?

弘美さん:

最初の就職先がジャスコ(現在のイオン)の販売促進課でした。その頃はちょうど手書きPOPがデジタル化されていくタイミングで、ワープロ(ワードプロセッサ)を使っていました。ここでPOPを作成する仕事に興味を持ちました。1年ほどスキルを磨き、思い切ってフリーランスに。当時はスーパーの出店もどんどん増えていく時期でした。いろんなところでPOPのお仕事があったんです。そのあと30代で印刷会社に再就職しました。その頃はDTPの黎明期でした。そこでMac(マッキントッシュ)と出会いました。ただ画像処理だけをMacでやるんですね。そこで社長にこのMacにIllustratorというソフトを入れればいいんですよ、と進言しました。ただ社長は昔気質で今のやり方でと。私はMacに魅せられました。美しく、ワクワクし、印刷のための文字組みやレイアウトが自在にできることに無限の可能性を感じ、200万円ほどかけて自分で購入したんです。Macありき、これが私たちの原点になりました。

Mac購入が起業のきっかけになったのですね。

弘美さん:

ちょうど「在宅勤務」というキーワードがビジネスの現場で使われるようになりはじめた頃、私も印刷会社から依頼された仕事を自宅で行うことにしました。当時はインターネット回線がISDNの時代。ADSLでも光ファイバーでもありません。ちょっとしたデータを1つ送るのに30分以上かかりましたが、会社より自宅のほうがはかどりましたし、気分良く仕事ができましたね。そのまま印刷会社の仕事も受けながら2度目の独立をしました。個人事業主だったんですけど、法人化の直接的なきっかけになったのが、現在も継続している尾張地域の情報誌「DOMS(ドムス)」の編集・発行事業です。新聞社からコンペのチャンスをいただき、5社競合を勝ち抜いて受注しました。

長続きの秘訣は、お客さんと情熱的に接すること

手掛けている事業について教えてください。

弘美さん:

稲沢市・清須市・あま市のニュースや新店情報、グルメ、美容、スクール情報などを掲載する「DOMS」は発行を引き継いでから12年が経過。引き継いだ当時のお客さんが今でも広告を出稿してくださるなど、地域に愛される情報誌になりました。島歩きをメインにした「Salace(サラス)」も不定期で発行し、その他にも出版、編集、企画、デザイン、WEB事業を行っています。

「DOMS」が長続きしている秘訣は?

弘美さん:

媒体を持っている強みもありますが、一番はお客さんと情熱をもって接している点だと思います。広告物はただ作るのではなく、お客さんがより良くなってほしい、もっと繁栄してほしいということを、常に考えています。他社が同じような地域情報誌を立ち上げたことがありましたが、お客さんは安い媒体になびかずにDOMSへの広告出稿を続けてくれました。

顕士朗さん:

私たちの世代はインターネットを使った情報収集があたりまえですが、興味のある情報にしか触れられない側面があると思います。ただ地域情報誌のような紙媒体だと興味がなかった情報も入ってくるので、自分では検索しない新たな出会いや発見があるかもしれませんよね。またDOMSは新聞折込以外にポスティングも行っているので、新聞をとっていない若い世代にもアピールできるメリットがあります。

社名「アイシーコーポレーション」の由来も教えてください。

弘美さん:

女性が設立した会社ですけど、性別を感じさせない社名にしたいと思っていました。英語で「はい、わかりました!」を意味する「I See」と、「愛しています」というコトバの語感から「アイシーコーポレーション」に決めました。

自分がわからないことは、きっと誰かが知っている

宮崎社長が日々大切にされていることは?

弘美さん:

「セレンディピティ」を大切にしています。セレンディピティは“素敵な偶然との出会い”を意味するコトバで、自分がわからないことは誰かが知っていて、引き上げてくれるのだと信じて仕事をしています。DOMSもコンペに偶然呼んでいただいたのがきっかけで、12年も続く媒体になりました。

今後の展望やビジョンについてお聞かせください。

弘美さん:

軽い気持ちでスタートした会社ではありますし、無理に引き継いでもらおうとは思っていませんでした。でもふと「会社って継続するものだな」と考えるようになりました。私が就職した頃に手書きからデジタルにガラッと変わったように、今はまた世の中が大きく変わる時代に来ていると感じています。だから、未来のことは昨年から会社に入った息子に託しています。入ったからにはちゃんとやってね、私以上にはなってねと(笑)。

顕士朗さん:

地域の情報誌は無くしたくはないし、現状維持で進めていきますが、長期で見ると落ち込んでいくサービスだと考えています。そこで別の事業やサービスで新たな売り上げを作っていこうと。たとえば、特に動画制作やVR撮影の領域で新規事業を検討しています。WEBサイト制作にも今後はさらに力を入れていく予定です。個人の喫茶店や整体屋さんなどのサイト作りも請け負いました。また、中小企業の経営サポートとして補助金に関するセミナーや申請代行にも取り組みはじめ、2021年度中に新オフィスへの移転も計画しています。

最後に、世のクリエイターにアドバイスをお願いします。

弘美さん:

私が小学生の頃、先生から「本を読むときは、その1ページの背景にどれだけの深さがあるのかを考えなさい」と教わりました。私が編集しているDOMSも、厚さは1ミリに満たないかもしれませんが見えない部分までこだわってものづくりをしています。適当に書いた文章は、読者に見破られてしまうでしょう。クリエイターとして生きていくのなら、目に見えない部分やクリエイティブの背景を大事にする気持ちをもつことが重要です。

顕士朗さん:

私はこれまで営業としてクリエイターをプロデュースする立ち位置で働いてきましたが、自分もクリエイティブな領域で勝負してみたい気持ちがあります。今は、安定企業と呼ばれていた会社も潰れてしまうような世の中。こんな不安定な時代こそ、自分だけのスキルが力になると思います!

取材日:2021年3月4日

株式会社アイシーコーポレーション

  • 代表者名:宮崎 弘美
  • 設立年月:2015年10月
  • 事業内容:出版、編集、企画、デザイン、WEB事業
  • 所在地:〒492-8267 愛知県稲沢市船橋町809番地
  • 電話番号:0587-22-1745
  • HP:https://www.iseecorporation.jp/
  • お問い合わせ先:上記問い合わせページ

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