職種その他2021.01.20

キーワードは「伝えること」。モノやサービスを売るためのさまざまな企画を、女性目線で立案・運営

福岡
アン・オー 代表
Hanaki Tanaka
田中 はなき

女性の幸せを応援する企業「アン・オー」。代表取締役の田中はなきさんは、放送局のアナウンサー、CS放送局の立ち上げ、通販番組のナビゲーターを経て起業。キャリアを生かしてテレビやラジオショッピングの企画演出、出演者へのアドバイスをはじめ、商品開発コンサルティング、マーケティング、印刷物・映像の企画制作、司会、ナレーション、MC育成など幅広い事業を手掛けています。

「アン・オーは女性の応援団でいたい」と話す田中さんに、これまでのキャリアで得てきたこと、女性目線のマーケティングを行う理由、今後の展望などを伺いました。

起業は、経験を生かせる場所を作るため

社会人としてのスタートは局アナだったんですね

アナウンサーを目指したのはテレビっ子だったのもありますが、中学生のときに国語の授業で教科書を読んだら、先生や友人に読むのがうまいと褒められたのがきっかけだったかもしれません。昔の女子アナブームの頃で、北は青森から南は鹿児島まで何十社も受けました。結果的には、故郷から近い長崎の放送局に採用されてアナウンサー、ディレクターとしてラジオ番組、テレビ番組の制作、イベント制作を経験。約8年経った頃に退職して、福岡に戻り番組制作会社で約1年働きました。

その後、九州初のCS放送局の開局準備室に入ります。それまで制作現場しか知りませんでしたが、立ち上げに参加したことで、編成、営業、広告、放送実施、人材育成に至るまでテレビ局に関わる業務全般を学び、仕事をするなかで、テレビ通販に関心を持つようになりました。

10年弱経った頃、24時間テレビショッピングを放送している専門チャンネルが、番組内で商品を紹介するナビゲーターを募集しているのを知って、応募。奇跡的に受かりました。ただその仕事は、アナウンサーのしゃべりとは全く違っていて。アナウンサーって伝えたいことを正確に伝えたらゴール。でも通販のMCは伝えた結果、お財布を開いて買ってもらうのがゴールなんです。

そこが今までにないところで、苦しくもあり面白くもありました。台本は無くて、オンエアになったら自分が頼り。生放送の30分間もしくは1時間のショーのなかで、どういう風にしゃべって、どう見せるかっていうのが勝負です。とにかく鍛えられましたね。短い間でしたが、やってよかったと思っています。

アナウンサーとナビゲーター、同じ進行役でも役割が大きく違っていたんですね。 

退職して福岡に帰ってきたのが41歳。そこで、自分の経歴を生かせる勤めたい会社が思いつかなくて。自由にやりたくてあまり何も考えずに「自分でやるか」って。野望があったわけではなく消極的起業です(笑)。 無駄なチャレンジ精神というか、やってみたがり精神があったからですね。会社の名前「アン・オー」は、当時習っていたバレエから。基本ポーズの中に「アン・オー」というのがあって「上へ」という意味なので、この言葉を選びました。

起業して始めに取り組んだことは?

自分のスキルの棚卸しをしました。自分は何ができるか書き出した結果、MCやアナウンスといったしゃべること、番組制作、イベントのディレクション、演出。あとは、通販番組のナビゲーターを経験して、放送を通じてモノを売ることを覚えてきたからセールスプロモーションの企画ができると。 そして私は女性の気持ちを大事にしたいので、女性が面白い、楽しいと思う企画を仕掛けてみたくて、それに少しでも引っかかったものは何でも受けてきました。

違和感を覚えてきた制作現場に、女性ならではの目線を届ける

マーケティングに女性目線を取り入れている理由を教えてください。

やっぱりまだまだ男社会で、世間ではあまりにも男性目線のマーケティングがありすぎる。テレビも広告の世界も、決定権があるのは男性が多いです。私自身違和感を抱くことが多くて。通販で物を買うのは女性が多いのに、制作現場は男性ばかりです。そこには女性の視点が必要でしょう。

たとえば化粧品の宣伝とか、最初に特殊カメラでたくさんのシミがある顔の映像を流したりする手法なんかがありますよね。あれ、気持ちいいですか? 男の人はまずBADを見せ、次にGOODを見せて買わせる。確かに、統計的にそうやったら買ってもらえるけれど、女性から見て気持ちが悪いものを出す理由が、私には分からなくて。そういう意見を言う女性が現場には必要ということで、重宝されています。

他にも現場で違和感を覚えたことは多くあったのでしょうか?

たとえば、番組の中で「夫」のことを表現するときに「主人」という言い方は、今の時代には適さないのではと思います。また先日ラジオ番組に出演したとき、ジェンダーレスのコスメの話になりました。「最近は化粧品も男性向けのものが出てきましたよね」って10年前だったら違和感なく話していたと思うんですけど、途中で、これだけジェンダーフリーな世の中になっているのに、これは女性向き、男性向きですという言い方をラジオでして問題ないのか気になるわけです。

若い頃だと「そういう細かいことを言ったらどう思われるのかな、怒られるかな、面倒くさいやつと思われて次から使ってもらえなくなるかな」と言葉を飲み込んでしまったけれど、年を重ねたことで「その言い方は適切ではないのでは?」とか、何でも言えるようになったのは良かったです。

この感覚は大事にしたいと思っていて、違和感があるものには声を上げたい。自分の中のちょっとしたひっかかりをそのままにしていたら、世の中は変わらない。表現の仕方によって嫌な思いをする人が、少なくなるといいなと思うんです。

これまでの事業内容を教えてください。

福岡は、通販会社が結構多いので、通販番組の台本を書いたり演出したり、出演したり。あとは、女性をターゲットにしたイベントの企画制作や、商品開発コンサルティングといった、モノを売るためのもろもろを手掛けてきました。

伝えた相手がモノを買ってくれる、つまり個人に対して商品やサービスを提供するBtoC(Business to Consumer)の世界を頑張ってきたわけです。そして約2年半前から、BtoB(Business to Business)、いわゆる企業間取引に関わるようになりました。大規模な展示会(商談見本市)です。これは出展者である文具、玩具、アパレル、服飾雑貨などあらゆる商材のメーカーや商社の方々が、来場者であるバイヤーに自社商品を買ってもらうためにプレゼンをする場で、制作現場にはない感覚を経験して、すごく面白かったです。

マスメディアとして外側から物事を見るのではなく、ビジネスの動いているまっただなかにいる感覚が面白くって。今後も盛り上げて、九州にたくさんある中小企業をサポートしていきたいと思っていたんですが…。福岡では毎年6月に開催していたこの展示会、今年は新型コロナウイルスの影響で中止になりました。そして、コロナの終息に関わらず今後は福岡では開催しないことが決まってしまいました。

商品も人間も同じ。いいところに光をあてて…

「アン・オー」の今後のビジョンについて聞かせてください。

皆さんもそうだと思いますが、コロナウイルスの影響で、考えてきたことががらっと変わってしまわざるを得ない状況になりました。今、改めて世の中を見ると、オンラインとかリアルじゃない世界にどんどん変わっていってますよね。私はリアルじゃない世界は得意じゃなくて。でも、IT化やデジタル化はコロナが落ち着いたとしてもゼロにはならない、その動きはどんどん加速しているから覚悟を決めました。

最近は、IT会社の社長に業界の動向や「今これが流行っていると聞くけど誰に流行ってる? それはビジネスに使えるようなことなの?」などいろいろ教えてもらっています。商売をやっていくためには勉強しておかなきゃいけないと思っているところです。

今後については、やはりこれまでのキャリアを生かして「伝えること」をキーワードに、何かやっていこうと思っています。具体的にどうしていきたいとかは特にないんですけど…。私は女性の応援隊だと思っているので、男性社会の中でちょっとした生きづらさがあったら、ハッピーになれるように、そのつらいことを薄めていきたいなと思っています。

仕事のやりがいはどんな瞬間に感じますか?

関わった人の笑顔ですね。あとは50歳を過ぎた年齢と、コロナ禍を経験したことで、そこそこの幸せを目指すようになったから、日々の「てへ!」みたいな、「やったあ!」みたいな、そういうのを感じることがやりがいかな。

最後に、クリエイターや起業を目指す人へアドバイスをお願いします。

人間ってこうでなければならないというのはないと思うんですよ。それぞれ自分を信じて、頑張ろうね、としか言えない。皆それぞれいいところがあると思うから、そこに光を当てて生きていきましょう!

結局「伝えること」も、ここに100個の情報があるとしたら、100個を全部出して見せるのか、1個を大声で言って見せるのか、それとも影だけ見せるのか、いろんなテクニックがあります。商品は光の当て方で、売れる売れないが決まりますから、人間も同じ。みんな自分のいいところを見つけて、そこに光を当てて生きていきましょうよ。私は自由に楽しく生きてるから、「自分の人生OKです」って思ってます!

取材日:2020年11月25日 ライター:中島 敬子

アン・オー

  • 代表者名:田中 はなき
  • 設立年月:2011年1月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:テレビ・ラジオショッピング企画演出、イベント企画制作、商品開発コンサルティング、司会、ナレーション、MC育成など
  • 所在地:〒812-0017 福岡県福岡市博多区美野島2-2-21
  • お問い合わせ先:

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