2026年のスーパーボウルCMは「AIのスーパーボウル」だった!

Vol. 82
FIND IT. LOVE IT.
Sayuri Fujii
藤井さゆり

以前は本コラムで毎年書いていた「スーパーボウルのCM」。ここ数年、取り上げてこなかったのですが、今年は「AI Bowl(AIのスーパーボウル)」と呼ばれるほど、AI関連のCMが多かったので取り上げてみようと思います。

 

スーパーボウルはNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の優勝決定戦で、アメリカ最大のスポーツイベントです。毎年2月の第2日曜日に全米でテレビ中継され、国民の3人に1人が視聴すると言われています。そのため、中継時に放映されるCMや人気アーティストによるハーフタイムショーも大きな注目を集めます。

 

企業は映画のようなストーリーや有名セレブを起用した特別なCMを制作します。今年の広告枠は30秒で約800万ドル。それでも多くの企業が出稿するのは、スーパーボウルが世界最大級の広告舞台だからです。

 

 

スパイク・ジョーンズ監督の、オンライン食料品デリバリーサービスInstacart(インスタカート)のスーパーボウルCM。ベン・スティラーのコメディが好きな私としては、今年のスーパーボウルCMの中でこれがベストです。

 

こうした傾向は今年も変わりません。しかし、2026年のスーパーボウルは「AIのスーパーボウル」とも呼ばれました。理由は全66本の広告のうち約15本、つまり約4分の1がAI関連のCMだったからです。

 

それでは実際にスーパーボウル中継時に放映された、AI関連のCMをご紹介します。

 

  1. OpenAI「Codex」ー AIコードのプログラミングツール

 

 

今や国民的AIとも言えるほど人々に浸透したChatGPT、それを生み出したOpenAIによるAIコードのプログラミングツール「Codex」のCM。子どもの好奇心から始まり、ノートや初期のコンピューター、そしてAIへとつながるものづくりの進化を描きながら、「AIで何かを作れる時代が来た」というメッセージを伝えています。

 

  1. Anthropic「Claude」 ー AIチャットボット・AIアシスタント

 

 

次は、ChatGPTの最大のライバルとも呼ばれるAnthropicによる「Claude」のCM。CMでは、筋肉を付けたい男性がトレーナーと話しているというシーンですが、これはAIとチャットをしているユーザーという設定です。男性の「早く腹筋を付けるには?」という質問からいつの間にか「靴のインソール」を買わされるようにAIから誘導される、というオチなのですが、これは「ClaudeはAIとの会話に広告は入れません」というメッセージを伝えています。

 

  1. Google「Gemini」 ー AIチャットボット・AIアシスタント

 

 

こちらも同様にChatGPT、Claudeの競合であるGoogleのGeminiのCM。Claudeは皮肉が効いたCMとなっていますが、こちらは母と子供が、新しい家をどう変えたいかをGeminiを使いながら会話をするというハッピーなCMとなっています。

 

  1. Amazon「Alexa+」 ー AIを組み込んだ次世代版Alexa

 

 

Amazonからは、AlexaにAIを組み込んだ次世代版Alexa+(アレクサプラス)のCM。従来のAlexaは決まったコマンド「天気」「タイマー」「音楽」などに反応するだけでしたが、Alexa+は家電の操作、スケジュール管理、買い物、レストラン予約、メール要約、スマートホーム管理などを、自然な会話で頼めるようになっています。Alexa+が生活に密着したロボットのような働きをしてくれるだけに、CM内で俳優のクリス・ヘムズワースが「Alexaに殺される!」と恐怖を覚えるのもわかりますよね。

 

  1. Oakley Meta ー AI搭載スマートグラス

 

 

アスリート向けの高機能アイウェアブランドOakleyとMetaによるAI搭載スマートグラス 「Oakley Meta」のCM。Oakley Metaを付けたアスリートたちが縦横無尽に動き、臨場感のある映像となっています。アスリートがOakley Metaに「台風はいつ来る?」、「インスタに投稿して!」など話しかけるシーンでは、AIアシスタントがリアルタイムでアスリートをサポートする様子が描かれ、まさに「Athletic Intelligence」として表現されています。

 

  1. ai.com ー AIエージェントプラットフォーム

 

 

ai.comは、人の代わりに仕事やタスクを実行する「AIエージェント」を作って動かせるプラットフォームで、株取引や業務の自動化、日常タスクの管理などをAIに任せられるサービスを提供します。Crypto.com(クリプトドットコム)の共同創業者でCEOのクリス・マルザレクによって設立され、同社のミッションは、AGI(Artificial General Intelligence)の実現を加速させること。AGIとは、人間のように幅広い知的作業をこなせる汎用人工知能のことで、現在のAIよりも一段階進んだ次世代AIと考えられています。ai.com/あなたの名前、でハンドル名を取得すると、将来的にはそのURLがあなた専用のAIエージェントの入口になると説明されています。イメージとしては「AI版の個人アシスタントのURL」となります。

 

  1. Genspark ー AIワークアシスタント

 

 

Gensparkは、検索・調査・資料作成などを自動化する、AIワークアシスタント。OpenAI、Anthropic、独自AIを組み合わせて動いていて、リサーチ、レポート作成、スライド作成、市場調査、情報整理をしてくれます。CMのストーリーはこうです。スーパーボウルが日曜日の夜に放映されるので、翌日の月曜日は仕事をしたくない日。俳優のマシュー・ブロデリックがGensparkを使って、みんなの仕事を瞬時に終わらせる様子が描かれています。これは、1986年公開の映画、マシュー・ブロデリック主演の「フェリスはある朝突然に」のオマージュで、映画は「高校生が学校を休んで人生を楽しむ」というストーリーでしたが、このCMでは「(Gensparkを使って)仕事を休んで人生を楽しもう」というものになっています。ちなみにこのCMの脚本はAIが作成し、制作期間はわずか5週間だったそうです。

 

  1. Wix 「Wix Harmony」 ー  AIウェブ制作プラットフォーム

 

 

Wixは「コードを知らなくても誰でも簡単にウェブサイトが作れる」プラットフォームを提供していて、スーパーボウルのCMでは常連です。このCMでは、ビジネスを始めたい人や小さな会社のオーナーが登場し、AIにウェブサイト制作を頼む様子が描かれています。ユーザーがWixのAIに「お店のサイトを作って」と要望を入れると、AIが自動でウェブサイトを生成。デザイン、ページ構成、文章をAIが作り、簡単にウェブサイトが完成します。AIを使った「新しいウェブサイトの作り方」というメッセージを伝えています。

 

ここまで8つ、AI関連のスーパーボウルCMをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。今年は「AI Bowl」でしたが、2022年のスーパーボウルでは、暗号資産を扱う企業のCMが多く見られたので「Crypto Bowl(クリプトボウル)」と呼ばれ、そのもっと前、2000年には、多くのITスタートアップがスーパーボウルにCMを出し、「The Dot-Com Super Bowl(ドットコムボウル)」と呼ばれたことがあったそうです。

 

来年はどうなるのでしょうか。広告枠の値段が100万ドル上がることは確実でしょう。

 

(参考)

How much does a Super Bowl commercial cost in 2026? 30-second ad prices through history – USA today

ai.com Launches Autonomous AI Agents to Accelerate the Arrival of AGI – PR Newswire

Genspark Leverages AI For Fast-Turnaround Super Bowl Spot – Adweek

This year’s Super Bowl commercials feature AI, weight-loss drugs and celebrities galore – abc7 Eye Witness News

プロフィール
FIND IT. LOVE IT.
藤井さゆり
東京生まれ、2008年ニューヨークに移住。 公益法人に勤務の傍ら、仲間内で企画したクラブイベントのフライヤーデザインをしたことから、デザインの面白さに目覚め転職。 転職後は、都内商業施設のウェブサイトの販促用ページ企画と取材、ライティングを経験。 ニューヨーク移住後は、ウェブマーケティングを企業にて経験、ウェブデザインをフリーランスで行う。 現在は、日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」のオーナー兼デザイナーを務める。
foxylilly.com
Instagram: @foxylilly

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