「アニメ演出の面白さ!」

Vol.9
株式会社フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
映像業界40年 おやじプロデューサーのひとり言
関田 有應

一般社団法人アニメジャパンより下記の発表がありました。
「Anime Japan 2020/ファミリーアニメフェスタ2020」開催中止について
「新型コロナウイルス感染症」の拡がりに伴い、2/26(水)に発表された政府からのイベント自粛方針および、何よりアニメファンである来場者、アニメジャパンに関わるすべての関係者の安全を鑑み、開催の中止を決定いたしました。 開催を楽しみにしていたアニメファンの皆様、開催へ向けご準備をされていた皆様には多大なご迷惑をおかけしますが、 感染の拡大を収束するべく、このような判断とさせていただきました。 何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

2020年2月27日 一般社団法人アニメジャパン ■Anime Japan 2020サイトより転用 https://www.anime-japan.jp/

Anime Japan 2020開催中止決定は大英断です。 次年度が盛会になるよう弊社も取り組みさせて頂きます。

こんにちは。
フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー 関田有應(せきたゆうおう)です。
9回目のコラムは「アニメ演出の面白さ!」です。

今回は、アニメ業界における演出の役割を紹介しながら、アニメの面白さのお話をさせて頂きます。

ところで、アニメの「演出」ってどんな仕事かご存知ですか。
一言で会えば、アニメ作品の設計図である絵コンテを元に、キャラクターの演技、感情、行動をアニメーターに伝え、絵コンテで描かれた、シーンやカットをより面白く表現する事を考えて、作品のクオリティを上げていく仕事です。

では、アニメ監督と、演出の違いは何なのでしょうか。
実は、どちらも同じ。演出家です。

アニメ制作は分業で行います。
シリーズ制作で演出家の事を、監督・演出という2つの言葉で使い分けをします。

監督は、シリーズアニメ作品全体のクリエイティブ部分の責任者であり、テレビシリーズにおいて作品全体の方向性や統一感、作品表現のバランスをとり面白い作品に仕上げるシリーズ全体の演出家です。

シリーズアニメ制作の場合、各話数毎に演出家を立てます。
アニメ演出は1話数だけの演出家の事を言います。
話数演出と呼ばれています。

監督はシリーズ全体の演出家で、演出は1話数だけの演出家です。
まずはこのように覚えて頂くのが一番分かりやすいと思います。

実写作品(テレビドラマ・映画)と同じようにアニメも、企画・脚本などの作品の骨格を作るプリプロダクションが最初の工程です。
この段階では、まだ脚本・文字だけの世界です。脚本と並行して、キャラクター設定(実写の場合のキャスティング)美術設定(実写の場合の撮影場所)など絵で描き起こす設定資料の作成に入ります。
出来上がった設定と、脚本を元に、アニメの設計図である絵コンテ制作を行います。

では、アニメの設計図である絵コンテはだれが描く(切る)と思いますか。
答えは演出家です。

テレビシリーズの場合、第1話の絵コンテを監督が描き演出をします。
理由は作品全体の方向性や統一感、バランスをとるのが監督の仕事であるため、1話目の絵コンテを描く事により、作品の方向性・トーン&マナーを示す事が出来るからです。

各話演出は、各話の絵コンテを元に、監督の意図を組み、世界観、場所の説明、キャラクターの動きや感情表現などをアニメーターに伝えて演出をします。最近は、絵コンテだけを描く演出もいますし、演出だけを行う演出家もいます。自分が描いた絵コンテであれば、ストレートに自分の演出意図を伝えられますが、他の演出家が描いた絵コンテを元に演出を行うのは、それなりの苦労があります。絵コンテ・演出は同じ演出家が行った方が、作品の完成度は高くなると思いますが、若手の演出家には、他の演出家が描いた絵コンテで演出を行う事で、自分では思いつかない演出手法を垣間見るというリスペクトがあります。
ですので、絵コンテと演出を分けて行う事で得られるメリットもあります。

私が劇場版アニメ作品のプロデューサーをさせて頂いていた時の監督は、日本のアニメ業界の重鎮と言われた巨匠監督でした。
ハムスターが主人公の劇場版アニメ作品で、劇場作品4作とも絵コンテは全てご自身で描かれました。
劇場版ですから分数も長く、ある程度の絵コンテが上がるたびに、アニメーターを集めて作画打ち合わせを行いました。業界トップクラスのアニメーターの方が10名近く集まり、監督がご自身で描かれた絵コンテを元に、カット毎にシーンの説明、キャラクターの動きや感情の流れを、アニメーターに伝え演出指示を出して行きます。

監督の絵コンテはとてもシンプルです。
キャラクターの動きや、感情表現など最低限の線で表現された絵コンテです。
正直、始めて絵コンテを拝見させて頂いた時に、この絵コンテで作画打ち合わせを行って、アニメーターの皆様に意図や想いが通じるのかと思いました。
しかし、流石!業界トップクラスのアニメーターの皆様です。
監督の意志・意図を汲み、理解し、キャラクターを生き生きと描き動かし命を吹き込んで下さいました。
4作品とも、想いのこもった最高の劇場作品に仕上がりました。

演出家に求められる事。
・本当にアニメが好き!
・相手に想いを伝える表現力!
・アニメを見ている皆様に喜んで楽しんで頂ける作品を作りたいという熱い想い!

「アニメ演出の面白さ!」

受け持ち話数で、作品の意図を組み、絵コンテの意図を読み取り起承転結を考え、ギャグアニメであれば強烈な落ちを描き、友情をテーマにしたアニメであれば、優しさや思いやりが伝わるような演出を行う。

これがアニメ演出家の醍醐味です。

演出家は絵が描けなくても出来る職業です。
絵コンテも、絵が上手くなくても相手に伝わるように描ければ演出家になれます。

クリエイターとして歩み始めたPM君。
クリエイティブに正解も完璧もありません。
志を高く持ち、自分の選んだ道を迷うことなく真っ直ぐに進んで下さい。
そして素敵なプロデューサーになって下さい。
「がんぱれ」
先輩シニアプロデューサーとして心より願う事です。

おやじ一押し!劇場版とっとこハム太郎4作品

①「ハムハムランド大冒険」2001年12月15日公開 ハム太郎はロコちゃんの誕生日を祝いたかったが、ロコちゃんに目も向けられず、塞ぎ込んでしまう。ハム太郎はロコちゃんに思いを伝えるため、人間と会話ができるようになるという「魔法のタネ」を探しにハムちゃんずと共に「ハムハムランド」を冒険するが…。

②「ハムハムハムージャ! 幻のプリンセス」2002年12月14日公開 ハム太郎は夢に出てきた泣いている女の子ハムのことが気になっていた。ハムちゃんずはハムスターの故郷といわれる砂漠の王国「ハムージャ王国」へと旅立つが、そこでは邪悪な砂漠猫「サバクーニャ」が封印から解き放たれ暴虐の限りをつくし、王女「シェーラ姫」は捕えられていた。ハムちゃんずはシェーラ姫を救出に向かう。

③「ハムハムグランプリン オーロラ谷の奇跡 リボンちゃん危機一髪!」2003年12月13日公開) 雪に包まれたハムスターの異境「オーロラ谷」。長らく雪の降らないこの国を救うべく、リボンちゃんは伝説の「スノープリンセス」として突然連れ去られ、さらにはそれを妨害しようとする海賊ハムスターにさらわれてしまう。ハム太郎はリボちゃんの奪回をかけ、海賊の船長「ハムクック」とグランプリレース「ハムハムグランプリン」で激突する。

④「はむはむぱらだいちゅ! ハム太郎とふしぎのオニの絵本塔」2004年12月23日公開 ハムちゃんずは「ひまわり太郎」のお芝居をやりたいと言い出したことから、絵本作家「あややム」の手により「絵本塔」へと連れられ、執筆活動に行き詰った彼女のお手伝いをすることに。かくしてハムちゃんず出演「新ひまわり太郎物語」の執筆が始まるが…。

Wikipediaより転用 
「とっとこハム太郎」Wikipediaサイト

『使える小ワザ』

 

演出家を目指すなら師匠を見つける!
アニメ業界に関わらずこの人凄い!と思う人から学ぶ。
人間力・表現力が養われます。
これです!

ここまで読んで頂き有難うございました。
それではまた次回。

 

*株式会社フェローズは日本動画協会の会員です。

プロフィール
株式会社フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
関田 有應
(せきた ゆうおう)大学を卒業後、テレビ局直系制作会社に入社。 企画、番組制作、イベント映像、PV、VP制作を行い、その後CM制作を中心に実写業界でのキャリアを積み、大手出版社グループでデジタルコンテンツ系の映像・音楽制作。 子供向けアニメ作品を中心とした、テレビシリーズ・OVA・劇場版・音楽制作・マーチャンダイジングと、キャラクタービジネスの世界で製作プロデューサーを行う。代表作は、平成の名物キャラと言われる主人公がハムスターのアニメ作品 株式会社フェローズにて アニメセクションの立ち上げを行い、現在はマーケティングセクションにて全国の映像系学校でのセミナー講師やキャリアアドバイザーを行っている。 息子も大手広告代理店直系の制作プロダククションのPM「親子鷹」である。※無類の音楽好きで、40年ぶりに大学時代のバンドを復活。活動中。

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

映像業界40年 おやじプロデューサーのひとり言をもっと見る

TOP