作品制作への熱い想い!

Vol.6
株式会社フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
映像業界40年 おやじプロデューサーのひとり言
関田 有應

こんにちは。
フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー 関田有應(せきたゆうおう)です。
6回目のコラムは、「作品制作への熱い想い!」です。

今までコマーシャルの世界で進行管理を行うPM(プロダクションマネージャー)の役割のお話と、作品制作への想いを伝えてきました。
今回は、同じ映像制作でも、アニメ業界で進行管理を行う、制作進行のお話をさせて頂きたく思います。
映像業界での制作進行でもCM、テレビ、アニメ制作では手法や実務の違いがあります。

しかし「作品制作への熱い想い!」は皆同じです。

今回はアニメ業界における制作進行の業務をご紹介しながら「作品制作への熱い想い」のお話をさせて頂きます。

日本が映像表現で唯一、全世界と戦えるキラーコンテンツ!
映像表現で全世界に通用するエンターテインメントがアニメです!

同じ映像表現である実写(CM・番組・映画)とアニメ表現の違い。
それは被写体が有るか無いかです。
アニメは被写体が無く、全て人の手によって1枚づつ描き、それを並べて動かす手法の映像表現です。
皆さんは子どもの頃にノートの端に絵をかいて、パラパラと動かしながら遊んだ事はありませんか?
それがアニメの原点です。

通常テレビシリーズのアニメは平均で300カット・3500枚の作画で構成されています。

漫画を思いだして頂けますか。
漫画はページの中で、コマ割りされています。
その1コマが1カット。
その1カットの中のネームに合わせて、絵を動かしているのがアニメだと考えて頂ければわかりやすいと思います。

制作進行は300カット・3500枚の作画を、納品期日までに完成させる事が仕事です。
平均1カ月弱で作画作業を行います。
1話数で原画を描くアニメーターの人数は平均10名位ですが作品により違いがあります。

制作進行は、納期に間に合うように、アニメーターの作業スケジュール管理を行います。
テレビ番組は、放送日が決まっていますからどんな事があっても放送日に間に合うように制作を行います。
それが納品責任です。
テレビ番組のすべてがそうであるようにテレビシリーズのアニメも全く同じです。

納品責任を伴う制作進行に求められる能力は、
進行状況を俯瞰で見る能力
スケジュール管理を行う能力
アニメーターの皆さんとの信頼関係を築く力

特にアニメーターの皆さんとの信頼関係を築く事はとても重要な事です。
自分の預かった話数の作画作業をお願い出来るアニメーターさんが何人いるかが、制作進行としての力量になるからです。
自分の担当話数の中でも、物語の起承転結があり、どのアニメーターにどのカットをお願いするのか、制作進行の裁量にかかっています。
300カットの内訳は、日常的な線の数が少ない、動きの少ないカットから、格闘シーンなどの激しい動きのある手間のかかるカットがあります。

前回、難しい手間のかかるカットをお願いしたアニメーターには、今回は動きの少ないあまり手間のかからないカットをお願いする。
1カットの制作費は決まっていますので、アニメーターにしてみれば、毎回作業が大変な華カットばかりお願いしていると、またか!
という気持ちになります。
私の後輩(現在はアニメ制作プロダクションの代表取締役)の制作進行は、アニメーターに好きなカットを選んでもらう方法を取ったり、大変なカットをお願いした時には、次にお願いする時には、作業内容が日常的な動きの少ないカットをお願いしたりと、バランスを考えながら発注していたと話してくれました。
アニメのカット制作単価は相場が有り、そこから大きく外れる事はありません。
ですからここが気遣いどころです!

通常、アニメーターは何本もの作品を受けている方がほとんどです。
ですので、仕事が空いているアニメーターはいません。
絵コンテが遅れて作業に入れない。
筆が乗らず作業が遅れている。
風邪を引いて作業が出来ない。
など、想定外の事態が起きる事も多々あります。
たとえば10カットお願いしていたアニメーターが風邪を引いて作業が出来ない場合は、別のアニメーターに急遽お願いしなくてはなりません。
その場合、無理をきいて下さるアニメーターが何人いるか!
制作進行とアニメーターの信頼関係が出来ているかどうかに大きくかかわります。
「関ちゃんに頼まれたら受けるしかないじゃん!」
5回目のコラムにも書かせて頂いた事にも通じる事ですが、関係値が出来ていれば無理も効いてくれます。

「作品制作への熱い想い!」

これがアニメ制作を行う上で一番重要な事です。
その想いをくんでアニメーターは無理をきいてくれる。
それは共に作品を作る仲間だからです。

多くのアニメーターと真摯に向き合い、想いを共有しアニメーターの立場になって考え行動する。
制作進行に求められる能力です。
アニメ制作にはバラエティ番組のような「撮れだかOKです!」は存在しません。
それは限られた時間の中で、手作業で描くため余分に絵を描く事をしないからです。
カメラを回せば、尺(分数)を稼げますがアニメは全く違います。
アニメ表現はギリギリのところまで省く引き算の映像表現です。
それがアニメ技法であり、その上でクオリティを追い求める映像コンテンツです。

アニメーターは自分と向き合って作画を描き、その進行管理を行うのが制作進行です。

「作品制作への熱い想い!」

アニメ制作は地味な作業の繰り返しです。
決して派手ではありません。
閉鎖的な村社会、徒弟制度が未だに息づいている世界でもあります。
しかし、日本が映像表現で唯一、全世界と戦えるコンテンツである事は間違いありません。
映像表現の中で全世界に通用するのが日本のキラーコンテンツ!
それがアニメです!

CM制作の目的は、冒頭でも申し上げたように商品を売るための宣伝手法のひとつです。
アニメ制作はエンターテインメント(大衆娯楽映像)の領域であり、宣伝手法とはまた目的が違います。

若手PM君。
アニメ制作にも興味を持って下さい。
違う景色が見えてきます
たくさんの映像の世界を観てさらに精進して素敵なプロデューサーになって下さい。
「がんぱれ」
先輩シニアプロデューサーとして心より願う事です。

「おやじ一押し!アニメ作品」

『とっとこハム太郎』
言うまでもありませんね!どこかに私の名前が!
第1話「とっとこ登場 ハム太郎」

『使える小ワザ』

徹夜明けのアニメーターのところにお伺いする時には、コンビニによってチョコレートやクッキーなど(100円で買える位の品物)などのちょっとした差入れを持って行き、気持ちを伝えましょう。
それが感謝です!
これです!

ここまで読んで頂き有難うございました。
それではまた次回。

 

プロフィール
株式会社フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
関田 有應
(せきた ゆうおう)大学を卒業後、テレビ局直系制作会社に入社。 企画、番組制作、イベント映像、PV、VP制作を行い、その後CM制作を中心に実写業界でのキャリアを積み、大手出版社グループでデジタルコンテンツ系の映像・音楽制作。 子供向けアニメ作品を中心とした、テレビシリーズ・OVA・劇場版・音楽制作・マーチャンダイジングと、キャラクタービジネスの世界で製作プロデューサーを行う。代表作は、平成の名物キャラと言われる主人公がハムスターのアニメ作品 株式会社フェローズにて アニメセクションの立ち上げを行い、現在はマーケティングセクションにて全国の映像系学校でのセミナー講師やキャリアアドバイザーを行っている。 息子も大手広告代理店直系の制作プロダククションのPM「親子鷹」である。※無類の音楽好きで、40年ぶりに大学時代のバンドを復活。活動中。

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