職種その他2014.12.10

アートの後は豪華なカフェで一休み!South London Gallery

London Art Trail Vol.30
London Art Trail 笠原みゆき
South London Gallery

South London Gallery

美しいヴィクトリア朝の建築。 さてギャラリーの入り口は右、それとも左? 実は右がSouth London Gallery (SLG)、左がCamberwell College of Arts (ロンドン芸術大学の一つ) 。 1891年にSouth London Art Gallery (現SLG) がオープンするとCamberwell College of Artsの前身であるポリテクニック(日本の高専のようなもの)が1898年に開校し、二つは当初から一心同体で地元カンバウェルの美術運動の歴史を歩んできました。今回はそのSLGから。Peckham Rye駅より徒歩5分。

メインギャラリー

メインギャラリー

“Feeling it, 2014” cHannah Perry

“Feeling it, 2014” cHannah Perry

大音響で走り去る車のカーステレオのベース音? メインギャラリーに入るやいなやその音と共に会場を支配していたのがこの作品、Hannah Perryの “Feeling it, 2014”。 スピーカーからの低音によるバイブレーションが、磨かれた鏡のようなスチール箔に壁画のように映り込む鏡像を歪めます。

“Solar Powered LED Circuit Composition 14, 2014” cHaroon Mirza

“Solar Powered LED Circuit Composition 14, 2014” cHaroon Mirza

掛け軸?を思わせる天井から吊るされた作品。 実は、紙みたいに薄いソーラー発電シート。気がめいるような薄暗いどんよりしたロンドンの冬の日、天窓を通してその弱々しい光が果たしてそこに届くのか。裏を見るとLEDライトが蛍のように微かに点灯している様子? この作品はHaroon Mirzaの “Solar Powered LED Circuit Composition 14, 2014”。ふとアメリカ、ミシガンの大学で今年の8月に完全に透明なソーラー発電パネルが開発されたという記事を思い出しました。(記事はこちら)。 窓硝子やタブレット、携帯電話の表面そのものが発電パネルになる日が近い将来、来るのでしょうか。

“Slag, 2014” cSamara Scott

“Slag, 2014” cSamara Scott

ジョアン・ミロの絵画のように自由で色彩が弾けるこの作品はSamara Scottの“Slag, 2014”。 畳一畳程の発泡スチロール板にネイルマネキュアやストッキング、ペイントスプレーや水彩絵の具などの日常的な素材を用いて仕上げられた遊び心のある作品。

“Hikari Yokoyama, London, 2014” cEmanuel Rohss

“Hikari Yokoyama, London, 2014” cEmanuel Rohss

建築材のパイプか何かの上をうごめく白いモンスター?! この作品はEmanuel Rohssの “Hikari Yokoyama, London, 2014”。 展示企画をしたHikari Yokoyamaは日本生まれのアメリカ人キュレーター。何故そのキュレーターの名前が作品名になっているのかは謎ですが、YokoyamaはPaddle8というアート・オークションサイトを立ち上げたメンバーの一人。今回のメインギャラリーの展示は若手作家を支援するTomorrow Londonという企画で、 ギャラリー出展者の作品がPaddle8のサイトで入札できるようになっています。 出展者の多くは最近ロンドンの美術大学を卒業した作家ばかり。

"Archive Room, 2014" cArt Assassins & REcreattive Editorial Board

"Archive Room, 2014" cArt Assassins & REcreattive Editorial Board

二階のギャラリーに上ってみます。 壁一杯に様々なプロジェクトの写真が壁に貼られ、ビデオ紹介と共に幾つのもカセットテープや小冊子が並んでいます。 英国において公営のギャラリーの殆どは教育部門を持っていて地元の学校などの教育機関やコミュニティーと密着してプロジェクトを行なっていますが、SLGも例外ではありません。こちらは毎週木曜日にSLGに集って活動する地元の14-21歳のアートグループ、Art Assassinsと18-25歳のアーティスト、学生やイベント企画者のクリエティブグループREcreattive Editorial Boardのコラボレーション作品で、彼らの過去のプロジェクトのアーカイブ室。彼らの企画した展示、Invisible hoursの一部です。思わず手に取った冊子は 2011年のロンドン暴動をテーマにした作品 “Voice of the Voiceless: A Response to the Riots in London. Autumn 2011, Issue 0.”で、彼らと同世代の子供や若者がどうして暴動に走ったのかという問いかけが続いていました。

ギャラリーのカフェ

ギャラリーのカフェ

下を見下ろすとメインギャラリーの隣にあるカフェが見え、そしてその廻りはなんとまばゆいばかりの金色の壁! SLGは2010年に改装工事を行なっており、この作品はその際に設置された英国の作家Paul Morrisonのコミッション作品で、純金箔が張り巡らされています。カフェの裏には狐の庭と呼ばれる庭があり、その先にはアーティスト・イン・レジデンスのためのスタジオ、カフェの表には更にレストランも。改装前はメインギャラリーと小さなショップ兼カフェだけだったのに比べずいぶん様変わりしましたが、SLGは今もなお変わらず地元のコミュニティーと密着した活動を続けています。

Profile of 笠原みゆき(アーチスト)

笠原みゆき

©Jenny Matthews

2007年からフリーランスのアーチストとしてショーディッチ・トラスト、ハックニー・カウンシル、ワンズワース・カウンシルなどロンドンの自治体からの委託を受け地元住民参加型のアートを制作しつつ、個人のプロジェクトをヨーロッパ各地で展開中。
Royal College of Art 卒。東ロンドン・ハックニー区在住。

ウェブサイト:www.miyukikasahara.com

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