道路交通法って一方的よね

Vol.004
CMプロデューサー
Hikaru Sakuragi
櫻木 光

毎朝、4歳の娘をママチャリの後ろに乗っけて保育園に連れて行く日々です。
朝の通勤時間に自転車で毎日どこかに通うという経験が高校生以来で
なかなか今まで気が付かなかった新鮮で危険な目に遭います。

極力、人の少ない裏道を探して通行しても、狭い路上でいろんな人が行き交っているんですが、
ほとんどの歩行者は交通にはルールがあるということを意識していないように見えるのです。
やっていることは、信号を守る。車が来たら避ける。ただそれだけ。
とっても無神経。怖くないのかな?とすら思う。

歩いている人にとってはどっちかというとルールよりマナーが大事なんでしょうが
そういうことを気にかけている人も少ないように感じます。
自分が事故に遭うなんてことは全く想像にないみたい。耳からうどんを垂らしながら平気で道の真ん中を
歩いているし、無意識に斜めに歩いていたり、右も左も確認しないまま道を横断したりしてくる。
自転車のお前が避けろと言わんばかり。ぶつかりそうになると「あぶねえなあ〜」とか文句を言い
僕が怖い顔で睨んでいるのを確認したら、やべやべって感じでプイッと向こう向いてさっと逃げていく。

ある朝、娘を乗っけてミリタリー仕様のママチャリで保育園に急いでいたら、
左側の路地から止まらずに飛び出してきた自転車にぐわっしゃーんと真横の左足の部分に
突っ込まれて転倒しそうになった。
ちっちゃい娘を乗せているので咄嗟に右足で踏ん張って事なきを得たけど、僕の左足は血が出て
右足は捻挫。娘はびっくりして泣き出した。

突っ込んできたのは若めの女性で、あーあーあーと狼狽えて謝りもしない。
「お前さあ、まず謝ったら?」というと「は?あ、いやそれは・・・」という感じ。
仕方ないので警察に電話。『はい警察です。事件ですか?事故ですか?』「事故です」
警察が来るまで待っている間に聞くことを聞いた。
「君、免許持ってる?」「持ってません」
「身分証とかある?」「ありません」「社員証とかないの?」「仕事してないんで」
「名前は?」「〇〇〇子です」「住所は?」「千葉県松戸市ふにゃふにゃ」「いくつ?」「29です」
「電話番号教えて」「はい」「今そこにかけるから、ほら俺の番号それな」「はい」
「証拠の写真撮るから帽子とマスク外せ」「えーっ化粧してないんで・・」「知るかそんなこと」
「当然保険なんか入ってないよな?」「何の保険ですか?」
だめだこいつ。馬鹿だ。

自転車と自転車の衝突なのに警官が六人くらいきて、その女性は、その警官の多さでプチパニック
になって「何で警察なんか呼ぶんですか?」と怒り出して言いました。
「お前が突っ込んできて俺が怪我してるからだよ。お前どうみても加害者な。
知らない人をいきなり道で怪我させたら警察呼ばれるんだよ」

警察が双方の言い分を聞いて、「櫻木さん、もう行っていいですよ」と言った。
「何だよ、その行っていいですよってのは?これからどうするんだよ?怪我してんだぞ」
「私、渋谷署の□□と申します。警察に異議があったりこのかたを訴えたい場合はご連絡ください」
と警官の名刺を渡された。
「泣き寝いれ。と言ってんのか?」
「この人、免許も保険も仕事も身分証もないみたいだし、自転車同士だから実際何にもできないですよ。
一応病院に行って診断書はもらっておいてください。この後お子さんになんかあったら連絡ください」
と警官は小声でいった。
「つまり泣き寝いれってことだな」「こじらせたら余計に面倒かなと・・」「何だそりゃ」

ついに、その女性は一言も謝らないまま釈放になった。釈然としなかった。
「かかった金は全額請求するから楽しみに待っててね」と笑って捨て台詞を言うのが精一杯。

病院に行ったら、
「このケースは相手も自転車だから、いつもの健康保険で処理してください。あ、診断書は五千円です」
何だか、ただ道を普通に走行していただけなのに怪我をさせられ、泣き寝入りさせられ、金を余分に取られただけになった。ますます釈然としない。でも最終的には何も請求しなかった。
決して大きい心からくる気持ちではない。大した怪我でもなかったし娘もピンピンして暮らしている。
無神経な貧乏神女ともう関わりたくなかったからだ。運気が悪くなりそうだから泣き寝入ってやるよ。と。

この一連の話は、何だか昨今の世の中の嫌な感じを包括的に具現化しているような気がするのだ。

交通にはルールがある。交通ルールと言っているが道路交通法という歴とした法律である。
最近、電動キックボードのレンタルをよく見かけるし、気持ちよさそうに乗ってる人も
たくさんいるけど、たまに歩道を平気で走っている奴がいる。小さい交差点では信号を守らない奴も
たくさんいる。自転車で歩道を走ってる奴もたくさんいる。たまに警官が透明の筒が両脇についた白い自転車2台で歩道を走っていることもある。

かといえば、信号機のない横断歩道で、歩行者が横断を待っているときは、自動車は停止線で
止まらなければいけないと言うルールがあるが、横断歩道で待っていて止まってくれる車は少ない。
とか何とか、交通ルールなんて、事故以外は、罰金の対象じゃないようなことは気にしてないし徹底されていないのが現状。
気まぐれな白バイに止められたら運が悪かったね程度。原付以上の免許を取得している人以外は
ほぼ、道路交通法なんか触れたこともないからだ。

金払って試験を受けて免許を取った人間が、免許もなくルールも知らないやつの不注意を車で跳ねても車が悪いと言うことになる。変な状況。それは不公平だと思う。
最近は車にドライブレコーダーもついていることが多いから、ビデオ判定にチャレンジさせてほしいもんだ。実際は保険会社が介入するとそうなっているのかもしれない。

今回のケースも、僕は車は乗らないけど車の免許を持っている。何なら自転車の保険にも入っている。
自転車の保険は加害者になってお金を払わなきゃいけない時にだけ機能する契約だった。今回はだめ。

ある朝、免許を持っていない、土地勘すらない松戸の人に恵比寿の街で、ノーブレーキで走行中の自転車の真横に突っ込まれた。
信号機もないような住宅街の小さな交差点。道の幅で通行の優先順位が決まることも知らないだろう。
一旦停止のラインもちゃんとあるが止まらなきゃいけないということを知らなかったそうだ。
怪我したし、娘も泣いたけど、相手が免許も保険もないと言うことで責任の追求すらできなかった。
自分が悪くて事故起こしても先に謝ったらダメ。裁判になったら負けるから的な風潮ばかり知っていて
全く謝ろうともしない。謝れと言われても謝らない。なんかおかしいのだ。

この頃は運転免許を取る人も少なくなってきているらしい。金がかかるしめんどくさいらしい。
自動車も免許を取ろうとしない若い世代に売れない。バイクは最盛期の25%くらいしか売れないと、
経済雑誌の記事で読んだ。
免許を持って運転している人に対しての、交通ルールの厳罰化も割に合わない厳しさなんだろう。
車に乗るリスクは確かに高すぎる。罰金も高い。

そう言うことの打開策として、高校の教育プログラムの中に普通免許を義務で取得する。と言うのを加えたらどうか?と思うことがある。
こう言うことを書くと、車は自動運転の時代が来るからその必要はないのでは?
と、簡単に浅はかなことを言う奴が必ずいるけど、そう言うことじゃない。
車に乗らない人でも、どういうルールで車が走っているのかわかってないと事故は減らないからだ。
車に乗る気がなくても道路交通法を当然の知識として理解しないと、道を歩かれてるだけで無意識に迷惑行為を繰り返す危険人物だし、自転車やキックボードが軽車両で車道を走るものだということすらわからない。
車が自動運転する時代が来ても、車についている安全装置がいくら進化しても、ルールを知らない奴の不思議で不規則な動きはロボットには対応できるものじゃない。必ず事故は起きる。
馬鹿な人間のせいで、自動運転車が事故を起こしたりすると、やっぱりダメじゃんと自動運転の研究が攻撃され、進化や開発が遅れたりする。そういうのも馬鹿らしい。

16歳の時に、原付バイクの免許を取った。その時の試験勉強は本当に興味深かった。
それまでは交通標識や速度表示、道路上の表示。全く気にしていなかったからだ。
そして学校の勉強と違って内容が生活に直結していたのだ。へーそう言うことか、
俺、あぶねえことしてたなあ、違法の山じゃん。と思った覚えがある。

普通免許取得の義務教育化。無償化。そうなると交通ルールを全く気にしないで、ボケーっと道の真ん中を斜めに歩いている奴も減るだろう。歩行者は常に守られていると言う甘い考えを無くすべきだ。ビデオ判定ありで。乗れる人が増えると自動車も少しは売上も上がるだろう。
マナーで終わらせないで、全ての人に法律を知ってもらわないと事故は減らないと思う。
実際車の運転をしてみれば、ただ歩いているだけの俺、自転車の俺の通行がいかに危険なものかが車の眼線からもわかるだろう。
そして、車の運転という技術、できることが増えれば若い人の可能性も広がることにもなるだろう。
どうでしょうかこのアイデア?

プロフィール
CMプロデューサー
櫻木 光
自分の関わった仕事の案件で、矢面に立つのは当たり前と、体と気持ちを突っ張って仕事をしていたら、ついたあだ名は「番長」。 52歳で初めて子どもを授かったのでいまや「子連れ番長」。子連れは、今までとは質の違う、考えた事も無かった様な出来事が連発するような日々になったけれど、守りに入らず、世の中の不条理に対する怒りを忘れず、諦めず、悪者だけど卑怯者にはならない様に生きていたいと思っております。

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