ジャック・タチ映画祭より 「みんな大好き!ユロ叔父さん」

ミニ・シネマ・パラダイスVol.22
ミニ・シネマ・パラダイス 市川桂

シアターイメージフォーラム(通称「イメフォ」)は渋谷駅から、普通に歩いて15分、急ぎ足でも10分くらいはかかります。 事前にケータイで調べていた上映時間ぎりぎりで、前のめりになって早足で向かいます。 すべりこむように着いたイメフォの入り口は、人でごった返していました。 残念ながら私のお目当ての映画ではなく、アカデミー賞にノミネートされた「アクト・オブ・キリング」に並んでいるようでした。 イメフォは地下と地上1階にひとつずつシアターがあるのですが、今回はじめて1階のシアターに。地下の方が大きいようですが、小ぢんまりとしていてこれもこれで良い感じ。

慌ててチケットを買い、シアターで席に座った瞬間に予告がはじまりました。シアター内はほぼ埋まっていまして、ドアを開けた瞬間若干注目を集めて焦りました。年齢、性別かなり幅広い印象ですが、映画通~みたいな雰囲気のひともちらほら。

実は今回、映画を見終わってからこの映画祭がどんな人の映画祭なのかを知りました。 (不勉強で申し訳ないです) てっきり監督だと思っていたら、"監督兼役者"。 そうか!あの印象的なキャラクターを演じていた彼か!・・・と納得いたしました。

彼とはフランスの監督・喜劇役者のジャック・タチです。

ジャック・タチ映画祭の構成は4週間にわたり下記の6つのプログラムを上映しています。

※「」は短編『』は長編 1)『プレイタイム』 2)「家族の味見」&『僕の伯父さん』 3)「陽気な日曜日」&『トラフィック』 4)『乱暴者を求む』&『パラード』 5)「フォルツァ・バスティア'78/祝祭の島」&「郵便配達の学校」&『のんき大将 脱線の巻』 6)「左側に気をるけろ」&「ぼくの伯父さんの授業」&『ぼくの伯父さんの休暇』 <詳細はぜひWEBサイトにて> 公式ページ:http://www.jacquestati.net/ Facebook:https://www.facebook.com/jacquestati.jp

私が見たのは6つめのプログラムで「みんな大好き!ユロ叔父さん」。 3作同時上映になっていて、前半2作が短編「左側に気をつけろ」「ぼくの叔父さんの授業」。 後半が「僕の叔父さんの休暇」です。

この『ユロ叔父さん』というキャラクターが、ジャック・タチの代名詞となっています。 独特な歩き方、何か物を持たせるとそこを起点に誰かに迷惑がかかるというトラブルメーカー。 「僕の叔父さんの休暇」は、ユロ叔父さんがとある海辺のリゾート地で休暇を過ごすお話。 もれなく彼の行くところすべてで騒動が起こります。 ユロ叔父さんは長身で身体は大きいのに、とにかく無自覚におっちょこちょい。 もごもごとあまり話さず、それでいて個性的な歩き方や動作が人々の目をひきます。 ユロ叔父さんの一挙一動が面白おかしく、シアター内にもクスクスと笑いがおこりました。 ですが、喜劇で喜劇役者がいるのに、どこかオシャレで繊細なのが不思議です。 そこは流石フランスだな~とも思いました。

セットの作りは凝っていて、昼や夜の情景も美しいです。 夜のシーンも多く、海辺の闇夜に浮かぶホテルへのライティングや、ユロ叔父さんと同じホテルにとまる旅行者の服装などもこだわりを感じます。 音楽もまた情感たっぷり。

リゾート地には一人の美しい女性が登場するのですが、 その女性とユロ叔父さんのはかない恋のエピソードも盛り込まれています。 喜劇を見て笑った、笑った、だけでなく、フランス映画らしく、といったら乱暴な括りになってしまいますが、ひと夏のバカンスが終わり、皆が散り散りに帰っていった後の海辺の景色に、ほんのりとセンチメンタルな気分も味わえます。 ドタバタ喜劇、だけでないのが、他の作品も観てみたい!という欲求を生み出してくれます。

映画祭の辛いところは、全てのプログラムを観ようと思うと、気合がいるところ。 学生はまだしも、私も社会人ですから、夜と週末だけですべてを見ようとすると、なかなかにタイトです。 時間をみつけて、せめて代表作の「プレイタイム」だけでも観にいこうと、渋谷駅までの帰り道を今度はゆっくり歩きながら考えました。

『ジャック・タチ映画祭』 会場:[シアター]イメージフォーラム(渋谷) 会期:2014年4月12日~5月9日 詳細:http://www.jacquestati.net/

『ジャック・タチ映画祭』
会場:[シアター]イメージフォーラム(渋谷)
会期:2014年4月12日~5月9日
配給:日本コロムビア
詳細:http://www.jacquestati.net/

Profile of 市川 桂

市川桂

美術系大学で、自ら映像制作を中心にものづくりを行い、ものづくりの苦労や感動を体験してきました。今は株式会社フェローズにてクリエイティブ業界、特にWEB&グラフィック業界専門のエージェントをしています。 映画鑑賞は、大学時代は年間200~300本ほど、社会人になった現在は年間100本を観るのを目標にしています。

続きを読む
TOP