「僕の引越し物語・後篇」

第92話
クリエーティブ・ディレクター/コピーライター
Akira Kadota
門田 陽

というわけで、物件は決まりました。引っ越し先は台東区上野です。勢いは大切。すぐに引っ越し屋さんを選びます。こういうときにはネットはほんとに便利。大手、中堅、無名の3社に見積もりに来てもらいました。

3月後半から4月頭は繁忙期でどこも大忙しとのこと。それにしても見積金額が各社まるで違います。大手のS社は約40万円(勉強してくれませんでした)、中堅のB社は24万円、そして無名のR社は14万円。値段だけならR社(しかも見積もりに来られた担当者が超美人)なのですが、見積書を見ると他の2社はダンボールが170個なのに50個少ない120個。作業員の数も他社が5人なのに2人とあります。いやいやいや、2人だとどんなに優秀な力持ちでもムリなことは非力で素人の僕にでも明白。安い&美人(ルッキズムの時代にこの言葉は使いにくいけど他にどう言えばいいのかわからない)に断りの電話をするのは忍びなかったのですが、中堅のB社に決定。

そして4月10日。無事滞りなく引っ越しました、と言いたかったのですが滞りました。当日、来られた屈強な男女5人の作業員の働きぶりは素晴らしく手際もよくそこに問題はありません。午前8時から開始、わずか2時間で全荷物が3台のトラックに積み込まれ、いざ上野に出発。僕はトラックの後をタクシーで追います。20分で新居(新事務所)前に到着。ここまでは順調。まずは大きな家具から搬入です。一番大きいものはベッド。睡眠は大事なのと寝相が悪いので一人暮らしですがクイーンサイズ。本体は木製で組立式なので問題なし。問題はここで発生。マットレスが部屋まで運べません。

先月前篇(※とりとめないわ91)でもチラリと書きましたが新居は築60年のビルの4階でエレベーターがなく階段のみ。その階段。2階まではわりと広めですが2階から3階に上がるコーナー部分が狭く(※写真①)そこをマットレスの横幅が通りません。

※写真①

作業の責任者から「お客さま、ちょっといいですか」と呼ばれ「マットレスを上げるのはムリです。クレーンの準備はしていませんし不可能です」と言われました。その通りだとは思いますが、ではどうすればいいのか尋ねると「会社の規則で持ち帰れないのでここで廃棄してください」とのこと。作業員さんによれば、そこまで珍しいことではないそうで淡々とした対応。一旦マットレスは建物の前の歩道に放置(※写真②)、僕が途方に暮れるなか他の荷物は次々と運び込まれ13時には終了。5人は去っていきました。

※写真②

その間、僕は台東区役所と粗大ごみ受付センターに電話を繰り返しなんとか5日後の回収をお願いできました。が、歩道に置かれたマットレスをそのままにはできないのでビルの2階の踊り場まで何度も挫けながら一人で持ち上げ、へたばりました。

それから部屋に戻りダンボールの中で呆然としていると(※写真③)洗濯機の取り付け業者さんが来られました。

※写真③

洗濯機の取り付けはドラム式の普及以降は専門業者の仕事になったのだそうです。そこでまたもや「お客様ちょっといいですか」というさっきも聞いたイヤな予感の呼び声がします。何でも水道の位置がドラム式に対応していないので取り付けられないとのこと。築60年の悲劇再び。

どうすればいいのか尋ねると洗濯機を縦型のものに買い替えるかそれとも水道の位置を変える工事をするかの二択。工事の部品の準備はあるので即金(クレジット不可)で4万4千円もらえればすぐに工事を始めますとのこと。マジかよ、と思いつつ銀行にお金をおろしにいきました。すると「ビル全部の水道を止めないといけない」と言われます。ビルは僕の住む4階が最上階で3階が不動産会社、2階がフィギュアの販売、1階が中華料理店。

そうです、問題は1階です。事情を話に行ったところ、店主がとてもいい人で「15時半から30分ならお客さん来ないからいいよ」と言ってくださり何とか工事ができました。

ふ~、きょう一日くたびれました。ちょっとひと休みしようとネットは繋がらない(工事がとても混んでいるらしく開通が早くても6月後半とのこと)のでテレビを付けると何も映りません。あれあれ?と思いながら初期設定からアンテナレベルを確かめるとレベル0です。管理会社を通してアンテナ会社に調べてもらったところこのビルにはアンテナがないことがわかりました。今まで住居で使った人がいないので管理会社の人も知らなかったそうです。流石築60年、これだけ色々あると逆に笑えます(余談ですがこの「逆に」は本来の使い方ですね)。結局引っ越し初日からの数日、ベッドがないのでビジネスホテルで寝泊まりしました。

あれから2週間。捨てる神あれば拾う神あり(この言葉の使い方は自信ない)、今は家で寝られるようになりました。M印良品のTさんという方が僕の話を親身に聞いてくれ「それならシングルのマットレスを2つ購入して繋げるという手はどうでしょうか」と目の覚める提案があり即採用。5日後にはベッドが完成。テレビの方は管理人さんがビル自体にアンテナを立てる工事を決定。4月20日からテレビの映る部屋になりました。ネットの工事はまだ先なので現在はポケットWi-Fiでこの原稿も送ることになります。いや~、もう当分、引っ越しは勘弁です。

ところで今回引っ越して作った事務所の名前は門田コピー工場株式会社(※写真④)です。どうぞご贔屓に、という話はまたの機会に。

※写真④
プロフィール
クリエーティブ・ディレクター/コピーライター
門田 陽
クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州、(株)電通を経て2023年4月より独立。 TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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