WEB・モバイル2010.06.04

クリエイティブなスポーツ-Parkour

Dig It! NYC Vol.20
Dig It! NYC 藤井さゆり

美しく、躍動的―これ“Parkour”(パルクール)というものです。

パルクールとは、自分の身体だけでいっさい道具を使わず、屋根や塀などの障害をジャンプや飛び越え、手すりの間のすり抜けなどをしながら効率的に移動する技術であり、ストリートスポーツでもあります(スポーツではない、という解釈もあるようです)。日本ではまだまだプレイ人口は少ない状況ですが、ヨーロッパやアメリカでは結構盛り上がっています。

プロテクターも着けず、屋根から屋根を飛び越え、壁をよじのぼり、階段の手すりをするりと抜けていく流れるような一連の動作は芸術的で美しく、クールに映ります。まるで忍者のようです。美しく芸術的な動きからか、パルクールは「The Art of Movement」とも呼ばれているそう。

パルクールはパリ郊外で20年ほど前に発祥しており、デイビッド・ベルとセバスチャン・フォーカンというフランス人の二人によって考案されたもの。二人が子供の時に遊びとしてやっていた、ベンチや塀を飛び越え――といったものをよりダイナミックにし、それが現在のパルクールという形に発展していきました。

パルクールについて調べていくと、思ったより奥深いものであることがわかってきます。パルクールは効率的な移動術であり、アクロバット的な動きやパフォーマンスが重視されるものではないようです。屋根から屋根への飛び越えや、宙返りなどのトリックなどを見ると、アクロバット的な部分に魅了されてしまいがちですが、パルクールの最終目的はそこではありません(ちなみに、アクロバットな動きが重要視されるのは「フリーランニング」になるのだそうです)。

また、パルクールには“競う”という概念がありません。他者との争いではなく、自分との戦い、挑戦。自分の中の恐れを飛び越え、昨日出来なかったことひとつひとつができるようになること。ココらへんが哲学的要素も含んでいます。

パルクールをやる人はトレーサーと呼ばれ、多くの場合都市部で行われます。

高い所からのジャンプなど、練習もせず高度なトリックに挑戦し、死に至るトレーサーも。なので1年くらいは実践ではなく、基礎トレーニングだけを行うのだそうです。この基礎トレーニングをすることが最も大事であり、安全なパルクールを行うための重要なプロセスです。

APK(American Parkour)Precison Tutorial

パルクールの「自分との戦い」という哲学、基礎技術の大事さ、アートの要素もありながら、肉体も駆使しつつ、効率を求める。

クリエイティブとパルクールにある種の共通点が見えました。クリエイティブを生業とされている方、まさに仕事ってそんな感じじゃないですか?

一見華やかでクールに見えるパルクールは、かなり基礎トレーニングが重要。デザイナーといったクリエティブ職も一見華やかに見えますが、基礎技術は欠かせません。私もきちんと基礎を勉強をし直さねば、と思い立ったところです。

パルクールも、もっと運動神経がよければやりたいところですが…。

ちなみに007シリーズの「カジノロワイヤル」で、ジェームズ・ボンド扮するダニエル・クレイグが爆弾男を追いかけるシーンがあります。爆弾男はパルクール考案者であるセバスチャン・フォーカンが演じているのですが、そのシーンでセバスチャン・フォーカンが見事なパルクールを見せてくれています。

Profile of 藤井さゆり

藤井さゆり

東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
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